2021年度(令和3年度)介護医療院の経営状況について(9/29)《福祉医療機構》
独立行政法人福祉医療機構が介護医療院85施設を対象に行った調査によると、2021年度にはそれらの31.8%が赤字だった。介護療養病床などからの転換を促す「移行定着支援加算」の算定が21年3月末に廃止となった一方、この年に新設された「長期療養生活移行加算」などの算定率が低く、福祉医療機構では、移行定着支援加算の廃止に伴う減収分をカバーし切れていないとみている。
この調査では、融資先の介護医療院のうち開設から1年以上経っている85施設を対象に21年度の経営状況を福祉医療機構が分析し、19年度(30施設)、20年度(73施設)と比較した。どの年度もサンプル数が少なく、福祉医療機構では、全国の介護医療院の状況を必ずしも反映していない可能性があるとしている。
分析結果によると、赤字施設の割合は19年度が12.5%、20年度が23.3%、21年度が31.8%だった。
定員数に対してどれだけ受け入れているかを示す「入所利用率」は、19年度が91.0%、20年度が94.0%、21年度が92.9%と新型コロナウイルスの感染拡大が始まる前後で9割超を維持した。ただ、利用者の在所日数の平均は19年度413.3日、20年度484.6日、21年度521.9日と延びている。
21年度には、重篤な身体疾患がある高齢者を受け入れる「I型」57施設のうち14施設(24.6%)が赤字。比較的容体が安定した高齢者を受け入れる「II型」は28施設中13施設(46.4%)が赤字だった。
I型・II型の双方で赤字の施設よりも黒字施設の定員数が多く、福祉医療機構では、介護医療院に移行する際には、ある程度の定員規模の確保を検討する余地があるとしている。
また、利用者1人・1日当たりの介護報酬の収入(金額ベース)が19年度1万4,263円、20年度1万4,009円、21年度1万3,981円と下がっていることも分かった。
介護報酬の算定状況の分析結果によると、移行定着支援加算の算定率は19年度が84.4%、20年度が58.9%。一方、21年度の介護報酬改定で新設された加算の同年度の算定率は、長期療養生活移行加算が12.9%、自立支援促進加算が15.3%などだった。
福祉医療機構では、移行定着支援加算の算定期限が21年3月末に切れたものの同じ年の4月に新設された加算を算定できず、減収分をカバーし切れていない施設があるとみている。