がん患者の栄養管理に注目—ケアマネジャーが知っておきたい最新調査結果2024

2024年12月6日、森永乳業クリニコ株式会社と一般社団法人キャンサーペアレンツが実施した「がんの栄養管理に関する食事と栄養についての意識調査2024」の結果が公表されました。

日本人の2人に1人が一生のうちに罹患すると言われているがん。

がんと共存する時代となってきているいま、栄養状態をしっかりと保つことは、がんの治療を無理なく続けられることに加えて、患者さんのQOL向上に寄与することも期待できます。

本記事では、この調査結果から得られた知見をもとに、ケアマネジャーががん患者支援において考慮すべきポイントを解説します。

栄養相談の機会が50%に到達—患者のニーズが浮き彫りに

調査によれば、がん治療中に栄養や食事について医療機関で相談する機会が「あった」と回答した患者の割合は、2021年の調査時点から8.0%増加し、50%に達しました。

また、栄養相談の機会が「なかった」と回答した患者の74%が「相談の機会があれば利用したい」と答えており、栄養に関する情報提供のニーズが高いことが示されています。

栄養相談を必要としている利用者や家族がいた場合、ケアマネジャーは医療機関や管理栄養士等と連携し、栄養相談が受けられるようサポートしたり食事支援についての助言を受けたりすることができるといえます。

Q.がんの治療中に、通院(入院)先の病院に、栄養や食事について相談する機会があったか?

医療従事者からの栄養補助食品の紹介頻度が増加

医療従事者から栄養補助食品の紹介を受けた患者の割合も45.8%に増加しました。令和6年度の診療報酬改定において多くの栄養関連項目が評価されたことも影響している可能性を示唆されました。

がん患者さんの不足しがちな栄養素を補うために、日々の食事に栄養補助食品を上手に組み込むことも選択肢の一つです。ケアマネジャーからも、必要に応じて栄養補助食品や活用方法について情報提供することで、患者さんの選択肢が広がるのではないでしょうか。

Q.栄養補助食品の紹介はあったか?

「エネルギー」を重視して摂取する人が増加

調査では、がん治療中に重視して摂取していた栄養素として、「たんぱく質」や「乳酸菌」が依然として高い割合を占める一方、「エネルギー」を意識して摂取する患者が9.8%増加したことが明らかになりました。

この結果は、 医療従事者による低栄養診断・栄養食事指導などを通じて特定の栄養素のみに注目して摂取するのではなく、エネルギー摂取の重要性が広まってきたことも要因の一つとして示唆しています。

Q.がんの治療中に、重視して摂取していた栄養素や食材(複数回答)

情報の不足—「緩和ケア」と「在宅医療」

今回の調査で新たに加えられた項目として、「緩和ケア」と「在宅医療」に関する情報収集の状況が挙げられます。

「 緩和ケア 」は、がんに伴う心と身体のつらさを和らげ るためのもので、がん治療の一つと位置付けられています。終末期だけでなく がんと診断された時から「緩和ケア」が行われることが重点的に取り組むべき課題とされています。 ※1

しかしながら調査によると、「緩和ケア」についての情報を得る機会があった患者は3割にとどまり、「在宅医療」に関する情報提供を受けた患者は1割程度でした。

医療従事者から「緩和ケア」という言葉を用いられずに、情報提供やサポートを受けている可能性はありますが、まだまだ情報が不足しているものと思われます。

ケアマネジャーも利用者の生活を支える視点から、利用者や家族に「緩和ケア」や「在宅医療」に関する情報を提供することがあるのではないでしょうか。

森永乳業クリニコは、がん患者・介護家族向けに、がん終末期の方が最期まで、自宅で豊かに過ごすことができるよう、在宅緩和ケアの動画セミナーを公開しています。

ケアマネジャーの皆様もぜひご覧ください。

「在宅緩和ケア」に関するセミナー
『THE LAST 100DAYS プロジェクトセミナー』
主催:碧水会在宅医療アカデミー
共催:株式会社シーユーシー、森永乳業クリニコ株式会社
https://www.clinico.co.jp/news/the_last_100days20240523.html

がん患者の栄養管理は、治療の継続や生活の質の向上に直結する重要な要素です。

今回の調査結果は、患者のQOL向上を支えるために、どのような情報が必要とされているのかを再認識するきっかけとなったのではないでしょうか。

患者一人ひとりに寄り添った支援を行い、さまざまな情報提供を行っているケアマネジャーの皆さんに、この記事がお役に立てれば幸いです

※1:出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/gan/gan_kanwa.html

<調査概要>
【標 題】 がん患者さんの食事と栄養に関する意識調査
【調査主体】 森永乳業クリニコ株式会社/一般社団法人キャンサーペアレンツ
【調査対象】 キャンサーペアレンツ会員 30~60 歳代 全国男女 118 名
【調査期間】 2024 年 7 月 2 日~7 月 26 日
【調査方法】 インターネットによるアンケート調査
<2021 年時点:調査>
【対 象 者】 キャンサーペアレンツ会員 30~60 歳代 全国男女 231 名
【調査期間】 2021 年 1 月 16 日~1 月 31 日
【リリー ス】 https://www.clinico.co.jp/pdf/news/20210416.pdf
<2017 年時点:調査>
【対 象 者】 キャンサーペアレンツ会員 20~60 歳代 全国男女 256 名
【調査期間】 2017 年 8 月 24 日~9 月 16 日
【リリー ス】 https://www.clinico.co.jp/pdf/news/20180131.pdf