新給付・排泄予測支援機器とケアマネジメント

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在宅でどのような使い方が想定されるのか、使用に際しての課題はどこにあるのか──。12月8日の介護給付費分科会で、福祉用具購入費の対象として新たに「排泄予測支援機器」が加わりました。居宅のケアマネとして考えておきたいテーマについて取り上げます。

尿の状態をモニタリングすることが目的

排泄予測支援機器とは、自立排泄が困難な要介護者を対象に、膀胱内の尿のたまり具合を超音波で測定して可視化し、排尿タイミングを知らせるというものです。すでに施設現場等で進む活用ケースを見ても、排尿タイミングを適切に把握することで、職員のトイレ誘導等の負担減に効果を発揮しています。

すでに個人用も販売されていますが、これが介護給付の対象となれば、家族の介護負担の軽減も期待されるでしょう。ただし、ケアマネジメント上でどのように位置づけるかについては、慎重な検討も必要です。

たとえば、検討会での意見の中には、以下のような指摘が見られます。「この用具は排泄そのものを支援するのではなく、尿の状態をモニタリングするものであり、利用環境により効果が大きく左右される」という具合です。

つまり、この機器自体で支援が簡潔するのではなく、「機器による情報発信」に対して、「誰がどのように対処するか」というマネジメントの精度が問われるわけです。

家族介護者の負担軽減への期待は高いが…

たとえば、仮に家族が元気で、日中は定期のトイレ誘導を行なっているとします(夜間は、おむつの着用や夜間対応型及び定期巡回型の訪問介護を利用)。しかし、本人の尿意の感知に衰えなどがある場合、本人の訴えやおおむねの排泄パターンに沿ってトイレ誘導を行なっても、徒労に終わることもあります。

そうしたケースで、この排泄予測支援機器を紹介するとしましょう。常々徒労感のある家族としては、「ありがたい。ぜひ使ってみたい」と考えるかもしれません。そして機器の活用により、家族の心身の負担が軽減されれば、これは大きな成果となります。

一方で、高齢や持病等で家族の体力が衰えている場合はどうでしょうか。上記のように、家族が定期のトイレ誘導を行なっているとして、実はそれ自体が家族にとって大きな負担ということもあります。家族としては、「介護への強い義務感」から、その負担感がなかなか訴えとして出てこないこともあるでしょう。

家族アセスメントが不十分だとどうなる?

ここで家族の心身の負担にかかるアセスメントが不十分なまま、この機器を提案するとどうなるでしょう。この機器の導入で「徒労感は解消される」となれば、もともと「介護への強い義務感」がある家族の場合、「あとは自分が頑張るだけ」という空気に支配されがちとなります。つまり、今まで以上に負担感を表に出さなくなる懸念も生じるわけです。

また、利用者の自立支援に熱心な一方、居宅の経験が浅いケアマネの中には、施設で行なわれているような「おむつ外し」を在宅でもできないかと考えるケースが見られます。もちろん、定期巡回・随時対応型などのサービスをしっかり整えたうえでの実践であるなら、実現の可能性も低くはないでしょう。

しかし、そこに「チームには家族も含まれる」という考え方が安易に入り込んでしまうと、やはり家族に一定の「頑張り」を強いる空気が生じてしまいがちです。そのままこの機器を図ろうとすると、その提案そのものが「家族の逃げ道(介護負担を訴えるなど)」を閉ざしてしまうことになりかねません。

以上のような状況を想定すると、家族の心身の状況にかかるアセスメントを今まで以上に慎重に行ないつつ、家族が「弱音やつらさの感情」を気軽に発することのできる関係性をしっかり築くことが欠かせません。このケアマネジメント過程の充実が、今回の新機器の導入の大前提となるわけです。

情報機器活用での懸念は家族の「巻き込まれ」

今回の排泄予測支援機器は、いわば情報機器の一つです。ここに訪問系サービスが絡むことにより、排泄パターンのデータ解析やそのデータを活かしたオンデマンド対応なども、いずれは可能になるかもしれません。

この点を考えたとき、厚労省としては今回のような「情報機器」への給付を拡大することで、訪問系サービスを中心とした効率化をさらに進める契機にしようとしている可能性もあります。仮に排泄パターンのデータ解析などが進めば、それをLIFEに提供するという流れも見えてきます。訪問介護等への科学的介護導入の道も開けることになります。

上記の見立ては深読みし過ぎとしても、少なくとも居宅介護において、「支援のタイミングを予測する情報機器」が給付対象になったことは大きな転機です。今後も同様の機器が給付対象として広がっていく可能性は高いでしょう(サービス提供の効率化が視野に入れば、財務省等の理解も得やすいからです)。

そうなると、やはり注意すべきは、そこに「家族」が巻き込まれることです。家族介護の効率化は負担軽減に資する一方、先に述べた「逃げ場の喪失」につながる懸念もあります。それを防ぐには、やはりしっかりとしたケアマネジメントが必要です。今後発出される留意事項でも、ケアマネの下支えが不可欠という視点を明らかにしつつ、次の報酬改定でもケアマネ評価の対象にするべきでしょう。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。