介護保険外の制度見直しが続々。ケアマネ実務への影響は?

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2021年度補正予算案が衆議院を通過しましたが、2月からの月額平均9000円アップの施策について、居宅介護支援は含まれないままです。その分、10月からの処遇改善策に注目が集まります。ポイントは、これから先の「多様な制度変更」も含めて、ケアマネ実務をどのように評価するかという点にあります。

今でも増え続けるケアマネの「制度外対応」

1つの専門職の実務を評価する際には、これまでの制度にもとづいた実績をもとにするのが基本でしょう。ただし、その専門職の制度上の役割が「変わらない」ことが前提です。

これから先、国がどのような施策を整えようとしているのか、あるいは現状の施策の強化をどこまで図ろうとしているかによって、評価の上積みが求められることもあります。

その代表的な職種となるのが、ケアマネでしょう。ケアマネは介護保険とともに誕生した専門職であり、その役割・責務は介護保険法上で位置づけられています。しかし、時代の変化にともない、「制度内の実務」を進める中で「制度外の対応」を手がけざるを得ないというシーンも急速に増えつつあります。

たとえば、介護保険の利用者が所属する世帯内において、生活課題が複合化しやすくなっていることです。新型コロナ禍では、その傾向がますます強くなりつつあります。

重層的支援体制下でのケアマネの位置づけ

もちろん、利用者の所属する世帯内の課題(家族の引きこもりや社会的孤立など)が複雑に重なりあえば、当然ながら本人をめぐる生活環境に大きく影響します。そうした生活環境の変動が利用者の自立支援や尊厳保持を左右する点を考慮すれば、ケアマネとして「専門外」としておくわけにはいきません。

ちなみに、世帯内の多様化・複合化する課題に対して、国は包括的かつ継続的な支援体制の強化を図っています。2021年度から施行された重層型支援体制整備事業も、その一つ。新たな交付金が支給されることから、取組みに向けて動き出す自治体も増えています。

問題は、こうした新事業の中でのケアマネの位置づけです。そもそもこの新事業は、たとえば地域包括支援センター(包括)などが多様な課題への相談支援を行なった場合に、事業費における「按分」が難しいといった課題を解決するなどの背景がありました。

その点で、新たな交付金がともなう新事業により、包括については相談対応等が行ないやすくなったわけです。では、ケアマネはどうでしょうか。現場で複合化した課題に気づき、専門機関につなげていく役割を担うのはケアマネですが、新たな事業においては多機関連携の対象という位置づけにすぎません。

コロナ下の生活困窮者支援の議論も進む中で

そうした中、重層的支援体制のあり方も深くかかわる「生活困窮者の自立支援」について、「横断的課題」(新型コロナ禍等により相談がつながりにくくなっている点など)を検討するワーキンググループ(WG)が、厚労省内で開催されています。現状では、どちらかというと若年世代の課題が中心ですが、ヤングケアラーの問題なども焦点となる中で、高齢者介護をめぐる相談支援のあり方なども課題として上がってくる可能性もあります。

ヤングケアラーといえば、2022年度の診療報酬改定における「入退院支援」の評価で、「早期発見・対処」が新たな要件として加えられる予定です。医療側の入退院支援ではケアマネのかかわりも大きい点を考えれば、すでに制度の枠を超えて「ケアマネの課題発見」の機能が拡大されることになります。

同様に、生活困窮者支援という枠組みでも、「課題の早期発見」をいかに進めるかという点で、ケアマネの役割なども論点となるかもしれません。ここでの議論の行方よっては、2023年あたりをめどに再び社会福祉法等の改正が行われる可能性もありそうです。

ケアマネが実際に手がける実務とその評価

また、社会保障審議会・障害者部会では、障害者総合支援法の改正に向けた中間整理が行われました。こちらは2022年にも法改正へと進む可能性がありますが、中間整理で高齢の障害者をめぐる課題も数多く取り上げられています。高齢の障害者については、親など家族介護者の高齢化も論点となっています。

たとえば、「親が亡くなった後(親が施設等に入所するなどのケースも考えられる)」のことを想定して、本人の一人暮らしやGH入居などに向けた「体験機会の確保」なども示されています。仮に親が介護保険を利用していたとして、ケアマネが障害者である家族の将来についての相談を受けることもあるでしょう。そうした場合に、上記のようなしくみへの「つなぎ」も求められることになります。

いずれにしても、多様な施策のどこを取ってもケアマネが絡まざるをえない状況が色濃くなっています。といって、ケアマネの関与規定だけが強化されれば、収入は伸びずに実務負担だけがなし崩し的に増えかねません。

だからこそ、各制度の議論で「ケアマネの位置づけ」を明らかにしたうえで、実際に手がけた支援に対しての報酬上(介護報酬以外も含む)の評価を同時に検討することが必要です。少なくとも、包括のアウトリーチ機能を強化するなど「ケアマネとの役割分担」が円滑に行なえる体制を築くべきでしょう。

来るべき2022年は、介護保険部会の議論も始まり、さまざまな社会支援制度が一気に動き出します。ケアマネができること・難しいことは何か。新たな責務が生まれるのであれば、そこにきちんと報酬が設定されるのか。このあたりを大きな議論としたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。