居宅介護支援事業所、昨年度4万件割れ 背景は? これからどうなる?

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2020(令和2)年度の介護サービス施設・事業所調査の結果が公表されました。地域密着型通所介護が200近く減るなど、やはり新型コロナ禍の影響が伺えます。同時に気になるのは、居宅介護支援事業所の大幅減。2014年度以来となる4万件割れとなりました。

介護ニーズが依然増え続ける中での事業所減

今統計は、2020年10月1日時点で活動中の事業所が対象です。居宅介護支援事業所は、3万9284件。対前年度(2019年度)比で、マイナス834件、割合にして2.1%の減少となります。減少数は全サービスを通じてもっとも多く、しかも飛び抜けています。

ちなみに、2020年度の居宅介護支援の年間累計受給者数は、対前年度比で約49万人の増加となっています。人口の高齢化とともに利用者数は右肩上がりの状況が続いたにもかかわらず、ここへきて対応する事業所数が大きく減ったことになります。

新型コロナ禍での一時的な休止という状況も含まれてはいるでしょう。また、吸収・合併で大規模化が図られ、それによって事業所数が減っている可能性もあります。とはいえ、一部で寡占化等が進んでいるとすれば、利用者の居住地域等によっては、ケアマネジメントを受けにくい状況も生じかねません。

2019年ケアマネ不足が一気に進んだ影響⁉

仮に居宅介護支援事業所の絶対数が減っているとして、その背景を掘り下げてみましょう。ご存じのとおり、2018年度の介護支援専門員実務研修受講試験(ケアマネ試験)においては、受験資格の見直し等によって受験者数・合格者数ともに大幅に減少しました。

その影響が現れたのが、1事業所あたりのケアマネ人数の推移です。上記2018年度のケアマネ試験直後となる2019年度には、常勤換算で対前年度比0.7人の減少となりました。過去データとの比較で、10年前(2009年度)時点の数字に逆戻りしたことになります。

ケアマネ不足の中、それでも何とか2019年度は対応してきたものの、2018年度改定による実務増がじわじわと就業環境を締め付けてきたことは容易に想像できます。2019年10月の特定処遇改善加算の対象からもケアマネは外され、そこにコロナ禍が追い打ちをかけたと考えれば、今回の事業所数の減少も十分に考えられる結果といえます。

2021年度ケアマネ試験合格者は大幅増だが

問題は、今回の統計後(2021年度)およびこれから先の状況がどうなっていくかという点でしょう。今統計後となる2021年度の報酬改定では、居宅介護支援の基本報酬や特定事業所加算が引き上げとなりました。また、利用者の通院時の情報連携や看取り時の報酬算定にかかる要件緩和なども図られています。

そして2021年度のケアマネ試験では、受験者数・合格者数ともに対前年度比で伸び、特に合格者数は5割増となりました。これらの数字の押し上げについて、上記の2021年度改定が影響しているという見方もあります。

しかし、ケアマネ不足の状況下で、今後合格者が円滑に居宅介護支援事業所へと入職してくるかといえば、疑問も残ります。

要介護者の増加ペースに対して、居宅介護支援事業所がすでに減少しているという地域で入職した場合、ケアマネ1人あたりの担当数はおのずと高まりがちです。そうなると、入職する地域(注.登録した都道府県外で勤務する場合は登録移転の手続きが必要)や、法人規模などを慎重に選別するケアマネも増える可能性があります。つまり、ケアマネの偏在化は依然として残るわけです。

今回の処遇改善策から外れた件がどう影響?

もう1つの懸念は、やはり今回の処遇改善支援補助金の対象外となった点です。このしくみが10月以降の処遇改善策(期中改定による処遇改善加算の見直しなど)でも継続された場合、多事業展開を行なう大規模法人への入職意向がさらに強まる可能性もあります。

また、大企業などが社員の仕事と介護の両立に力を入れる中、いわゆる「産業ケアマネ」の採用も進めています。そうした居宅介護支援事業所以外での就業というケースも、今後はますます増えるかもしれません。

そうなると、ケアマネ試験の受験者数が大きくV字回復しない限り、居宅介護支援事業所のケアマネ不足、ひいては事業所不足は今後も加速することになるでしょう。居宅サービス利用の入口となる居宅介護支援が足りなくなれば、介護保険制度そのものの崩壊を招くことになりかねません。

改革の議論が一気に進む今年。必要なのは?

国としては、今回の統計を受けて、以下のような取組みを進めるべきでしょう。たとえば、「地域ごとの居宅介護支援事業所の分布状況がどうなっているか」、また「利用者が主体的に居宅介護支援事業所を選択し、アクセスできるだけの事業所数が確保されているか」といった状況を調査することです。

今年は、期中改定や次の法改正に向けた社会保障審議会も次々と開かれることが想定されます。介護保険のあり方についてどのような方向性で議論が進むにせよ、居宅介護支援事業の足腰を固め直すという視点は不可欠でしょう。関連する職能・事業者団体としても、各種審議会での強いアピールが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。