改正法案で注目したい予防・施設プラン。 この2つが市町村の検証対象に加わった理由

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介護保険法の改正を含む健康保険法等の改正案が、今通常国会で審議されています(本稿執筆の5月6日時点で、参議院厚労委員会で審議中)。ケアマネにとっての注目点は、介護予防支援の指定対象に居宅介護支援を加えるという内容でしょう。ここでは、その点に関係した、もう1つのテーマを取り上げます。

予防プランについて市町村による「聴取」も?

取り上げたいのは、介護保険法第115条の45の地域支援事業についてです。この中の市町村が行なう地域支援事業の一環として、包括的・継続的支援の中身として「ケアプランの検証」がかかげられています。今改正では、この検証の対象に「介護予防プラン」と「施設ケアプラン」が加えられました。

この「介護予防プランの検証」ですが、これに関連した新条文も見られます。その内容(要約)は、「介護予防プランの検証にあたって、市町村は『必要がある』と認める場合、介護予防支援事業者に介護予防プランの実施状況状況等の情報提供を求めることができる」というものです。この「実施状況等」の「等」には、「厚労省令で定める事項」が含まれます。

つまり、居宅介護支援事業者が介護予防支援の指定を受けた場合、単にプランを提示して検証を受けるだけでなく、その内容にかかるさまざまな情報提供(いわば状況の聴取)を受ける可能性が出てくるということです。そして、その状況聴取の内容について、厚労省令でも規定されると考えられます。

市町村は予防プランのどこに注目するのか?

この改正点は、介護予防支援の指定対象が包括から居宅介護支援へと拡大する中で、プランの質を担保するという目的がうかがえます。ただし、それだけならば、先に述べた第115条の45の検証対象の追加だけで済むはずです。あえて「情報提供(状況聴取)」の規定を加えたということは、それなりの意図がある点を読み解くことが必要です。

たとえば、厚労省令での定めが絡むとなれば、具体的に「予防プランのどんな点」に重点的なチェックを入れようとしているのか──これが問われることになるでしょう。改正法が成立し、2024年度から施行されるとして、「介護予防支援の指定を受ける」という予定を立てている事業者としては、見すえておきたいポイントとなります。

ここで、介護予防プランの構造を見ておきましょう。介護予防プランでは、「生活機能の領域ごとの課題分析」から「具体的な支援」へとつながる流れが描かれます。注意したいのは、その過程で「ケアマネ側の提案」に対する「利用者・家族の意向」の確認が必要になること。いわば、プラン上で「利用者・家族との合意」のプロセスが描かれるわけです。

利用者・家族との「合意のプロセス」に注意

あくまで推測ですが、厚労省が重視している要素の1つが、この「合意のプロセス」ではないかと考えます。というのは、例の「適切なケアマネジメント手法」において、「基本ケア」の入口で「尊厳を重視した意思決定の支援」が重要視されているからです。この「意思決定の支援」がきちんと行われているかどうかをチェックするうえで、先に述べた「合意のプロセス」が焦点となってきます。

国は、「最期までその人らしく」という地域包括ケアシステムの理念に向けて、ACP(アドバンス・ケア・プラニング)などの推進を図っています。また、改革の論点の1つに「ケアマネジメントへの利用者負担導入」がありますが、それが実現に至るとなった場合、「利用者・家族の納得をいかに得るか(意思決定支援)」が重要なカギとなるでしょう。

いずれにしても、「合意のプロセス」をめぐって、これからのケアマネジメントでも優先順位の高いスキルとして位置づけられる可能性は高いといえます。予防プランだけでなく、要介護者のケアプラン、そして今改正で新たに検証対象に加わった施設ケアプランでも、「合意のプロセス」へ強くスポットが当てられる可能性を頭に入れたいものです。

施設プランでは地域参加・交流もポイント

もう1つ注意しておきたいのが、上記でも述べた「施設ケアプラン(GHや小規模多機能型なども含む)」についてです。施設ケアプランについては、施設ケアマネの職責とともに、いまだ制度上の位置づけにあいまいな部分が多々残ってします。そして、これまでもたびたび議論の対象となってきました。

2024年度改定では、施設等における「医療提供」が主たるテーマとなりがちですが、施設の「生活の場」としての機能もきちんと議論されなければ、「その人らしい暮らし」というビジョンを叶えることはできません。

では、先に述べた「合意のプロセス」に加え、施設ケアプランで重視されるべきは何でしょうか。過去に現場の施設ケアマネと意見交換をした際、ポイントの1つとして上がったのが「利用者の地域参加・交流の機会の確保」という観点です。この理念をいかに施設ケアプランで位置づけるかが、施設ケアマネの重要な役割であるというわけです。

もちろん、これは「施設ケアプラン」をめぐる考え方の1つに過ぎません。しかし、法律上で「施設ケアプラン」を検証対象に位置づけたということは、国として、それなりのビジョンがあるのは間違いないでしょう。

介護予防プランにしても、施設ケアプランにしても、今後の介護給付費分科会で、どのような論点が浮上してくるのか。2024年度改定に向けた大きな注目点といえます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。