2024年度は現場の管理業務が急拡大⁉ 管理者の「分担制」が欠かせない時代に


12月11日の介護給付費分科会で、次期改定に向けた審議報告案が示されました。年明けの公布までに変更が加わる可能性はありますが、大体の方向性として現場も準備に取りかかる必要があります。問題は、現場における管理業務がじわりと底上げされることです。

見送りもあったが、全体では管理業務拡大へ

次期改定に向けた審議では、「LIFE対応加算の適用拡大」や「新複合型サービスの誕生」といった大きなテーマが続々見送りとなり、その点では一見「小粒の改定」と考える向きもあるかもしれません。しかし、審議報告を通して見ると、新たな加算だけでなく人員・運営基準での多様な見直しが目立ちます。

全体としては、手がけるべき現場実務が拡大し、同時にそれに対応するための管理業務が増えるのは間違いありません。現時点での感覚ですが、現場の管理者やリーダー格職員の「仕事のキャパシティ」を超えてしまうのではないかという懸念も浮かびます。

たとえば、現場における新規での「委員会の開催義務」に焦点を当ててみましょう。

(1)施設・居住系などを対象とした、利用者の安全、サービスの質の確保、職員の負担軽減に資する方策を検討するための委員会(3年の経過措置あり)。(2)短期入所系、小多機系における身体拘束適正化のための委員会(1年間の経過措置あり)があります。

加算の算定要件となる会議全般まで広げると、(3)施設・居住系での協力医療機関との定期的な会議。(4)通所介護の認知症加算算定にかかる、個別事例検討などの会議など。さらに、2021年度改定で設けられたBCP策定や高齢者虐待防止についても、経過措置の終了⇒未実施減算の適用により、必要となる委員会開催などが厳しく問われることになります。

会議の運営や他機関との交渉も大幅増⁉

さらに日々の実務面で増えてくるのが、いわゆる「渉外」業務です。たとえば、施設・居住系で、協力医療機関との連携が強化されます。そこでは、協力医療機関との間で1年に1回以上、利用者の病状が急変した場合などの対応を確認することが求められます。

協力医療機関との連携では、感染症発生時の診療等の対応の取り決めを行なうことを評価する加算も設けられます。居宅系も含めて、口腔・栄養にかかる医療機関などとの連携を評価するしくみも拡充される予定です。

ケアマネにおいても、特定事業所加算の要件で、他法他制度に関する知識を修得するための事例検討会などへの参加が定められます。これまでの事例検討会などと異なり、テーマの範囲が広がるという点で、他事業所・機関との連携機会を増やしつつ、研修会企画を協働しながら練る必要性が高まりそうです。

こうしたさまざまな地域連携が増える中では、これまで管理者が手がけてきた「外部機関との交渉」とは勝手が異なってくるかもしれません。つまり、「渉外」に多くの時間がとられ、組織内部のマネジメントに対応できなくなる恐れが出てくるわけです。

管理者やリーダー格職員がつぶれかねない…

このように、「従事者を集めて会議・委員会を開き、それを運営する」、「外部機関とのさまざまな折衝を進める」といった部分が、管理業務の中で大きく膨れ上がります。これらを従来の管理業務の体制のままで担うとすれば、管理者、あるいはそれを補佐する現場リーダーがつぶれかねません。

こうした管理者・現場リーダーの燃え尽きは、現場の新人育成などに大きな影響を与えます。また、国が推し進める現場の生産性向上という観点でも、適切なシフト管理や(介護助手などを含めた)チーム・マネジメントなど、管理者が担うべき土台が機能しなくなることも起こりえるでしょう。

となれば、細分化・専門化する多種類の管理業務ごとに「分担制」をとることが欠かせません。この「分担制」を築くには、A.現場人員のすそ野を広げ、B.その中から現場のリーダー格の育成を進めつつ、C.そのうちの一部リーダーに「細分化された管理業務」を分担制で担わせるというしくみが必要です。

「分担制」をとれるだけの基本報酬が不可欠

これを進めるうえでは、処遇改善加算の上乗せに加え、基本報酬の大幅な上乗せが不可欠です。というのは、以前のニュース解説でも述べましたが、処遇改善加算は(現行の加算額がそれに見合うかどうかは別として)あくまで「現任者の業務に報いて、その生活を安定させるため」のものであるからです

上記のA.~C.を進める中では、リーダー格が新たな管理業務に専念することに代わるだけの新規の人員採用や、新たな管理業務に対応できるだけのスキルの引き上げなど、それぞれのコストが必要です。それをまかなうのは、基本報酬の引き上げ以外にありません。

加算でまかなうという考えもあるでしょうが、加算は「その算定に必要な体制を組まなければならない」という点で、先行投資を必要とします。その先行投資のためには、相応の基本報酬という土台が必要であり、それが整わないと、加算をインセンティブとするサービスの質の向上もままならなくなります。

国が全体の改定率をどこまで引き上げ、サービス別の基本報酬をどのように設定するか。その検討は、政府内の折衝等によりすでに始まっていると思われます。その際には、ここまで述べた管理業務の「分担化」を重要ポイントにできるかどうかが問われます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。