
居宅ケアマネの実務では、居宅系サービスの改定動向からもさまざまな影響を受けます。意識したいものの1つが、短期入所系サービスです。ヤングケアラーやビジネスケアラーが増える中、看取り期などを含めて家族介護者のレスパイト等はさらに大きな課題となります。今改定を受けての注意点を整理します。
長期利用の適正化によって何が生じる?
短期入所系サービスでは、短期入所生活介護で「連続して(30日ごとの自費利用含む)61日以上利用の場合の適正化」が図られました。また、介護予防の同サービスでは、連続して30日以上の利用で新たに減算が適用されます。いずれも、すでに対象日数に達している場合、4月1日から適用されています。
ケアマネとしては、こうした長期利用でもケアプランの策定や状況次第での見直しなどを行なう必要があります。居宅でのモニタリングはできません(「特段の事情」にあたる)が、利用者との定期的な面談による状況把握やその際の支援計画記録などが求められます。
保険者によるローカルルールが発生しがちな部分ではありますが、ケアマネとしては、訪問系・通所系サービスと同様、サービス提供側との密接な連携を図りながら、ケアマネジメントの基本を押さえることが重要です。
問題は、今回の改定で事業者側が長期の受入れに消極的になっていく懸念です。表立って長期利用を拒否することなくても、医療ニーズの高い利用者について「施設内での対処が難しい」といった理由で受入れを断るケースなどが増えていくかもしれません。
事業所ごとの「対応力」リサーチが重要に
そうなると、一定の医療ニーズがある利用者については、老健入所や(要支援者については)短期入所療養介護の利用へと調整をシフトする傾向も高まりそうです。ただし、老健の場合は利用料が高く、短期入所療養介護は地域によって資源が不足気味です。
ケアマネとしても、老健入所中は当然ながら報酬は発生しません。また、老健からの在宅復帰にかかるインセンティブが強まる中で、退所時から再度かかわったとして、家族のレスパイトニーズが高まっている場合などのサービス調整に苦慮することも増えそうです。
地域によって短期入所系サービスが不足しがちな中、これまでも特定施設や認知症GH、小多機系の「短期利用」の資源動向への注視を強めていたケアマネも多いと思います。
しかしながら、いずれも一定の医療ニーズが生じてくると「受入れ困難」という状況が常に発生しがちです。それぞれの資源において、どこまで対応力が維持されるのかというリサーチや情報共有力がますます問われます。
短期入所生活介護の看取り連携体制加算
こうした状況下で、家族のレスパイトという観点から、もう1つ頭に入れておきたいのが「利用者の看取り期」です。
今改定では、短期入所生活介護に「看取り連携体制加算」が設けられました。これは看護体制加算中の一定要件を満たしたうえで、A.看取り期における対応方針を定めること、B.利用開始の際に利用者・家族にA.の内容を説明し同意を得ることで算定できます。
算定できるのは、死亡日および死亡以前30日以下で7日が限度。なお、入院先で死亡した場合でも、それ以前30日以下でケアを提供している場合には算定が可能です。
上記のA.の定めに際しては、事業所の介護・看護職員に担当ケアマネも加わって協議することが求められます。たとえば、ケアマネがターミナルケアマネジメント加算を算定するとして、今改定では「終末期における医療・ケアの方針にかかる利用者・家族の意向把握」が要件に加わりました。ここで把握された意向(その後に変化することも含めて)の共有が、短期入所生活介護の看取り連携体制加算でも活かされることになります。
看取り期の家族レスパイトをどう進める?
注意したいのは、先に述べた「家族のレスパイト」という視点です。看取り期において、家族の中には「看取りに際しての家族の役割を果たす」という思いが極めて強くなることがあります。それゆえに「看取りに際しての心理的・身体的負担」が表に出にくく、レスパイトのための短期入所利用なども、ケアマネから提案しても頑なに「必要ない」という意向がぎりぎりまで続くこともあります。
結果として、家族の介護倒れなどのリスクも一気に高まりがちです。この点を考えた時、今改定で短期入所生活介護に看取り連携体制加算が新設されたことを踏まえ、地域の短期入所系資源のリサーチに際して、「看取り期」を想定した場合の対応体制なども考慮することが必要になります。そうした対応体制にかかる情報を、早期から利用者家族にも提供しながら、「看取り期のレスパイトの重要性」なども意識的に啓発することが重要でしょう。
家族介護者の状況が変わりゆくある中、ヤングケアラーがもちろん、労働力人口の高齢化とともにビジネスケアラーへの支援ますます大きな課題となるのは必至です。
そうした場合の支援軸の1つとして、短期入所系サービスをいかに探し、どのように活用するかが今まで以上に問われます。たとえば、地域の包括や他の居宅介護支援事業所と連携しながら、短期入所系資源の情報を分かりやすく整理し、利用者家族向けの周知リーフレットなども作成したいものです。
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◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。