
居宅介護支援でも報酬・基準の改定が施行される中、事業所の運営方針について現場からさまざまな声が届いています。その中で注目したいのが、改定前の「居宅介護支援費II(逓減制緩和枠)」の算定から、「居宅介護支援費I」の適用に戻したというケースです。
居宅介護支援費IIは算定しないという選択肢
今改定における「居宅介護支援費II」の算定要件の変更点を、改めて確認します。
改定前は「ICT機器の活用または事務職員の配置」でしたが、これが「ケアプランデータ連携システムの活用および事務職員の配置」へと見直されました。整理すると、(1)「ICT機器の活用」が「ケアプランデータ連携システムの活用」となり、(2)二者択一要件から二者ともに満たすことが必要となりました。
言い換えるなら、居宅介護支援費IIを算定するには、ケアプランデータ連携システムの活用が必須となったわけです。
ご存じの通り、同システムの活用にはライセンス料(年間2万1,000円)が必要です。一方で、すでに地域で別システムによるデータ連携を進めているケースも見られます。仮に新システムを導入しても、既存システムが稼働している中で、連携事業者が新システムに対応してくれるのかという問題もあります。
そうなると、新たにライセンス料を支払って、新たなシステムに移行するべきかどうか。は悩み所です。さまざまな状況を考慮したうえで、「新たなシステム契約はしない(つまり、居宅介護支援費IIは算定しない、あるいはIに戻す)」という選択をした事業所もあります。
システム連携の実績は問われないという解釈
ちなみに、厚労省が示した解釈基準によれば、IIの算定要件を満たすうえでは、「ケアプランデータ連携システムの利用申請をし、クライアントソフトをインストール」していればOKとしています。つまり、このシステムによる「他の居宅サービス事業者とのデータ連携の実績」を問うことはしていません。
厚労省としても、先に述べた「他の既存システムによる連携」という実態があることを踏まえたうえで、「まずはシステムを装備してもらいながら、将来的に活用できる準備を整えていくこと」を重視しているといえます。
とはいえ、ライセンス料は発生するわけですから、他のシステムを稼働させている事業所としては、「何のための新システムなのか」という疑問は生じがちです。2024年度予算による「介護テクノロジー導入支援事業(旧・ICT導入支援事業)」の補助金の一部をライセンス料にあてるとしても、「本末転倒ではないか」という割り切れなさは付きまといます。
連携システムに対する事業所の多様な考え方
もっとも、居宅介護支援費IIを算定すれば、逓減制にかからない取扱い件数をさらに5件(介護予防支援では1/3の取扱い計算なので、単純計算で15件)増やすことができます。事業所としては増収を期待できるわけです。「増収のために、ケアプランデータ連携システムの利用申込みだけはしておく」という方針の事業所もあるでしょう。
しかしながら、現場のケアマネの実務負担を考慮すれば、取扱い件数をさらに伸ばすことへの懸念は小さくありません。ケアマネ不足が進む中で、現場に過剰な負担を強いるような体制は取りにくいという現状もあります。
一方で、居宅介護支援費IIを算定するか否かは別として、先を見すえたうえで、あえて「ケアプランデータ連携システムに対応しておく」と考える事業所もあります。「同システム活用がいずれは運営基準上で義務づけられるのでは」といった予測があるからです。
その背景には、やはり国が進める医療・介護データの利活用があります。介護の場合、認定情報、レセプト情報だけでなく、LIFE情報やケアプランデータなども視野に入れた中間報告が出されています。利活用対象にケアプランデータが入るとすれば、データ管理を一元化するうえで、ケアプランデータ連携システムが活かされる可能性もあるでしょう。
2027年度に向けて、今改定の布石にも注意
確かに、今回の「居宅介護支援費IIの算定要件」という位置づけだけでは、同システムの普及を促すインセンティブとしては弱いものです。厚労省は今年3月にクライアントアプリの機能を更新し、使いやすくなったことをアピールしています。しかし、あくまで給付管理業務内のメリットですから、既存システムが活用できていれば、現場としては「それで充分」と考える傾向は強いでしょう。
この状況で一足飛びに「活用の義務化」を打ち出したりすれば、大きな混乱につながるのは必至です。となれば、次に厚労省が打ち出す可能性として、ケアプランデータ連携システムを、各種情報連携にも活用できるようにするという流れが想定されます。
今回、入院時情報連携加算の情報提供様式が変わり、他のサービス事業者との連携によるモニタリングにかかる情報連携シートなども示されました。居宅介護支援もLIFEにかかわるとなれば、サービス事業者とのLIFE情報のやり取りも制度化されるかもしれません。
今回のさまざまな様式例や共有項目例(生活・認知機能情報など)の創設・見直しが、2027年度改定に向けて、どのような布石となっているのかには注意が必要です。事業所としても、あらゆる可能性を想定したうえで、運営方針を慎重に立てることが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。