
6月24日の「ケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会」では、更新研修等のあり方についての議論の方向性が示されました。現任のケアマネにとって、気になるテーマの1つが更新研修についてでしょう。検討会ではさまざまな意見・提案が上がる中、どのあたりが落としどころになるでしょうか。
更新研修「高い」「長い」「多い」の3課題
現場から時間的・経済的な負担の声が大きい更新研修について、検討会では「オンデマンドでの受講機会」や「受講料を事業者負担としつつ助成金を設けること」、さらには「資格の更新制の廃止」を訴える声もあります。多様な意見のすり合わせは可能でしょうか。
たとえば、資格の更新制の廃止に言及しているUAゼンセン日本介護クラフトユニオンでは、今年4・5月にケアマネ・主任ケアマネを対象とした緊急調査を行なっています。
それによれば、「更新研修について思うこと」として、「費用が高い」「時間が長い」「回数が多い」という3つの課題について、それぞれ5~7割が「思う」としています。それに対し、「自己研さんのためには必要」という声は2割前後にとどまっています。
一方、厚労省の2022年度老健事業で公表された調査を見ると、「受講料が高いと思う」が7割強、時間についての認識も「多い」が6割強と、クラフトユニオンの調査結果と似た結果が見られます。両調査の対象層は異なりますが、ほぼ同じ結果が出ていることから、ケアマネの総意は固まっているといえます。
更新制そのもの廃止論は少数ではあるが…
その点で、「高い」「長い」「多い」という3大課題の解消という方向性は動かないと考えられます。問題は、その方向性の具体化です。更新制そのものを廃止するというドラスティック(抜本的)な改革案を出しているのは、今のところクラフトユニオンだけなので、そこまでの踏み込みは難しいかもしれません。
ただし、こうした意見が出たこと自体、「現場のケアマネの負担軽減が本当に担保されるか」という視点での「クギ刺し」の役割を果たすことにはなるでしょう。そのうえで、負担軽減がしっかりと実現されるのは、どのような改革なのかがポイントとなります。
たとえば、先に述べた「更新研修をオンデマンドで実施する(一定期間内にケアマネが空いた時間に自分のペースで受講できるしくみ)」ことと、費用負担面では「受講料は事業者負担とし、その分を公的な助成金でまかなう」というやり方を組みわせることが考えられます。「全国一律の実施とするか」については、事例検討等に地域特有の課題を反映させるという点がハードルになるかもしれません。
オンデマンドでの実施案等、課題はどこに?
問題は、検討会でも出されているように、「オンデマンドで実施した場合に、各ケアマネがきちんと受講することをどう担保するか」という点です。「講義後に簡単なチェックテストを行なう」という案も出ていますが、これ自体が新たな現場負担になる懸念もあります。そもそもチェックテストによって、ケアマネに必要な資質が身についているかどうか、本当に判断できるかも問われそうです。
これらを解決するとなれば、オンデマンド受講に際してのID・パスワードを付与しつつ、他者による不正アクセスがあった場合の罰則規定などを設けることになるかもしれません。そうなると、新たなシステム構築も必要になり、相応の予算もかかることになります。
また、全国一律でケアマネが修得すべき内容はオンデマンドでできるとしても、地域特有の課題などをめぐる事例検討・演習はどこまで実現可能かも問われてきます。費用面についても、一時的に事業所が負担しつつ助成金を受け取るとして、小規模事業所の場合は実務的・経営的負担も少なくありません。このあたりも、今後議論の対象となりそうです。
法定研修改革で包括ができることは何か
ちなみに、24日の会合では、全国地域包括・在宅介護支援センター協議会から、包括や在支が対応しうる視点が提案されています。
包括についても、人員確保や負担軽減が大きな課題であることに変わりはありません。一方で、今改定での体制整備を受け、その成果が今後示されることを前提として、ケアマネ支援の強化を図ることがうたわれています。
もちろん、更新研修に代わる資質向上への対応を包括が担うのは、限界があるでしょう。もっとも1つの考え方として、地域特有の課題などへの対応力向上を目指すうえで、包括機能も一助となれる可能性はあります。
たとえば、全国一律のテーマ(制度改正等にともなって、ケアマネが新たに身に着けておくべき知識・技能など)についてはオンデマンドで実施し、地域特有の課題への対応(自治体が独自に展開している事業等にかかる周知なども含む)については、包括の機能を活用するという方法が考えられます。
あくまで具体策の1つですが、(厳格な個人情報保護等を前提として)包括ごと、あるいは圏域ごとの地域ケア会議に、すべてのケアマネが定期的(更新期間の5年ごとなど)に参加するというやり方もあるでしょう。
場合によっては、課題の複合化等で対応困難なケースを参加するケアマネ側が提示し、実例を検討しながら対ケアマネ側のサポートを同時に行なっていく方法も考えられます。
今ある地域資源を活用しつつ、ケアマネ側も自身の成長が実感できるしくみとすること。これがポイントになるのかもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。