データ連携強化&評価指標の議論で ケアマネへの生産性向上策は新段階へ⁉

厚労省が、ケアプランデータ連携システム(以下、連携システム)の普及策を次々と打ち出しています。ヘルプデスクサポートサイトのリニューアルや活用ウェビナーの開催、およびそのアーカイブの配信など。サポートサイトに掲載された事業所向けのガイドライン資料では、連携システムの活用による業務改善の道筋を示したポイント集も見られます。

ポイント集が示す「間接業務の集約化」

この業務改善のポイント集(正式名称:ケアプランデータ連携を円滑に行うための業務改善のポイント集)では、連携システム活用によるケアプラン共有業務の「集約」と、それにともなう事業所内の役割分担の見直しをどう進めるかが示されています。

たとえば、ケアマネによるケアプラン作成を「直接業務」と位置づけたうえで、入力データの印刷や連携先事業所ごとの振り分け、振り分けたものを事業所に送付する(業務改革前ならFAXや郵送、持参も含む)という一連の業務を「間接業務」と位置づけています。

そして、連携システムを活用すれば、上記の「間接業務」が集約化されるとしています。流れとしては、ケアマネがケアプラン作成ソフトの入力したデータを、(1)CSVファイルに変換しつつ、(2)連携システムにログインして、(3)連携事業所に送信する、となります。

これにより、(1)~(3)は特定の担当者(ケアマネ以外の事務職など)がPC上のみの通しの作業で行なうことができ、これを「間接業務の集約化」と位置づけているわけです。

連携システム普及と並行させた生産性向上策

上記の「間接業務の集約化」では、担当者がケアプランや予定・実績などの確認を行なうと、より組織的な運用が可能になるとも記されています。連携システムによるケアマネと連携担当者の役割分担を明確にすることで、作成されたプランの確認等を、どの時点で誰が担うかという組織内ルールも明確になるという考え方です。ここには、ケアマネの実務負担のさらなる軽減が視野に入っています。

上記の話は、あくまで連携システムによる「間接業務が集約化」が前提ですが、「間接業務の役割分担を適切に行なうことで、生産性の向上を図ることができる」という記述も。そのうえで、「連携システムの利用有無に限らず、(中略)間接業務を切り出し、役割分担を再度見直す」ことを推奨。介護現場の生産性向上のガイドラインに沿った取組みの延長に、連携システムがあるという位置づけです。

こうして見ると、厚労省としては、連携システムの普及と並行させつつ、居宅介護支援における生産性向上全体の取組みをさらに強化するという狙いがうかがえます。

2027年度改定での生産性向上に向けた布石

2024年度改定では、現場の生産性向上策として、施設系・居住系・短期入所系・多機能系の各サービスに、テクノロジー導入による安全確保や従事者の負担軽減に資する方策を検討する委員会開催を義務づけました。そのうえで、やはり上記のサービスを対象とした生産性向上推進体制加算を設けています。

上記の基準や加算については、居宅系サービスは対象外です。ただし、ケアマネ実務の生産性向上を、連携システムというエンジンのもとで一気に進めるという流れを見た場合、2027年度改定では少なくとも居宅介護支援に、先の運営基準や生産性向上推進体制加算に準じた加算が誕生する可能性があります。

その布石も少しずつ打たれ始めています。ヒントは、「ケアマネジメントにかかる諸課題検討会」での論点の1つ「ケアマネジメントの質の向上に向けた取組みの推進」です。この論点において、「ケアマネジメントの質を評価するための手法」として、何らかの評価指標が必要という意見が出ています。

諸課題検討会で浮上した評価指標議論の意味

もちろん、業務範囲の整理前に評価のあり方を議論することには検討会でも異論があります。そもそも「ケアマネジメントの影響要因は多岐にわたって複雑に絡みあっている」という点から、何らかの評価指標で判断するのは困難──という指摘も上がっています。

とはいえ、評価指標のあり方を検討するとう議論が出ていること自体には注意が必要です。たとえば、「ケアマネジメントの質」という点に一気に踏み込むことはなくても、利用者の満足度の指標(WHO-5など)やケアマネの心理的負担等の指標(SRS-18など)を用いて、ケアマネメントの質を向上させるための業務環境のあり方に視点を当てようという動きが出てくることは考えられます。

これらは、いずれも先の生産性向上推進体制加算でのアウトカムにかかる指標です。同加算の枠組みでなくても、たとえば特定事業所加算の新区分として、居宅介護支援の生産性向上の推進を報酬上で評価するしくみが誕生するかもしれません。そのうえで、こうした取組みがケアマネジメントの質の向上につながるかどうか。これを検証しつつ、新指標などの策定が進められる流れが予想されます。

もう一つ注意したいのは、ケアマネの処遇改善に関し、現行の処遇改善加算を居宅介護支援に適用するのかどうかという議論でしょう。新処遇改善加算でも、ポイントは職場環境等要件における生産性向上の取組みです。この部分を居宅介護支援にどうリンクさせていくかという点でも、ケアマネ実務における生産性向上の行方は注視が必要です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。