ケアマネ人材確保に向けた論点より。 新卒入職のあり方を議論することの意味

「ケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会」が、中間整理案を示しました。この整理案をベースとしつつ、具体的な施策は2025年の介護保険部会で議論されることになります。今後10年間でケアマネ人材の急減が予想される中、今回は人材確保のあり方がどうなるのかに焦点を当ててみましょう。

「学卒者の入職」、検討会では賛否あり。

人材確保策のうち「新規入職の促進」という観点での対応案としては、以下の2つがあげられています。(1)受験資格である国家資格の範囲に新たな資格を追加すること。(2)(1)における5年の実務経験について、一定の要件を満たした場合に見直す(短縮する)こと。

たとえば(1)について、検討会では、対人援助技術の観点から公認心理士や臨床心理士などをあげる意見が出ていました。

加えて、新規入職の促進に関して注目されるのが、「学卒者(大学や専門学校を卒業した人)の入職のあり方」です。この場合、国家資格の取得や関連する実務経験を経なくてもケアマネ入職の道が開かれることになります。

これについては、検討会でも賛否が分かれています。「若者がダイレクトでケアマネになれるしくみ作りが重要」という意見もあれば、「相談援助などの経験がない人が試験に合格したとして、ケアマネとして働くことが本当にできるのか」という懸念の声もあります。

若い世代の「学びのあり方」が議論の対象に

中間整理案では、「引き続き議論する」としつつ、以下の2つの視点を示しています。1つは、高齢者のケアマネジメント業務に求められる専門性をどのように修得するかといった「実務経験の必要性」も含めた質の確保の観点に留意すること。もう1つは、学校教育と連動しつつ、保有する資格の専門性等も踏まえることという具合です。

つまり、学卒者を対象とするなら、就学中等での実務経験機会をどこでどのように確保するかの検討が必要となります。また、学校教育との連動という点では、就学中のいずれかの時点でケアマネジメントについて学ぶカリキュラム調整も求められるわけです。

いずれも、現状ではハードルの高い論点ゆえに一朝一夕で実現される可能性は低いかもしれません。ただし、大切なのは「学卒者の参入の是非」という論点が示されたことです。この点を継続的に議論する土台が示されたことで、ケアマネをめぐる就業環境のあり方はもとより、若い世代の学びのあり方にもさまざまなインパクトが生じやすくなります。

学卒者の入職議論と処遇改善の関係

たとえば、やはりケアマネ人材の確保で、欠かせない論点となるのが処遇改善です。それとの関係について考察してみましょう。

処遇改善といえば、直接的に影響をおよぼすのは現任者の就業継続意欲でしょう。現状を見ると、介護業界は他産業との賃金格差が問題となり、人材流出を防ぐうえでさらなる処遇改善の必要性が高まっています。まして居宅ケアマネに関しては、介護報酬上の処遇改善加算が適用されないことで、受験要件である国家資格(介護福祉士など)の業務に「回帰する」というケースも見られます。

そうした状況を転換するため、ケアマネの処遇改善を進めることで、現任者に今のケアマネ業務にしっかりとどまってもらう──これが直接的な狙いとなります。

一方、新規の入職者を増やすには、参入意欲を高めるための職能の平均賃金の底上げに加え、「入職先できちんとキャリアを積めるかどうか」が重要ポイントとなります。その環境を整えるには、基本報酬や特定事業所加算(あるいは各種補助金)の拡充によって「人を育てる環境」の充実も不可欠となります。

その点では、目下の課題は「ケアマネにも処遇改善加算を適用すること」であるとしても、中長期的な視野でケアマネの確保を目指すなら、より広くかつ体系的な処遇改善策まで議論することが必要です。

仮に学卒者の参入に向けた議論が盛り上がれば、「進路を選択する中で、あまたある業界・職能から選んでもらうための条件」を精査する機会も広がるでしょう。学卒者のあり方をめぐる議論が、ケアマネの処遇改善の底上げに力をもたらす可能性があるわけです。

早期からのケアマネジメント教育のメリット

学校教育との連動という視点も、その広がりによりさまざまな可能性がもたらされます。

中間報告案では、おおむね福祉系大学・専門学校などを視野に入れたものですが、より早期から(たとえば高校教育など)の教育との連動も想定した場合、「ケアマネジメントを学ぶ機会」が若い世代の就学環境に入ってくることになります。このことは、介護・福祉業界への関心を高めるだけでなく、ケアマネジメント的な思考の普遍化にも寄与します。

ケアマネジメントの思考が若い世代に広がれば、そうした人々が仮にケアマネにならなくても、地域のあり方を変える土台にもなりえます。たとえば、地方行政などに進路を求めたとして、いずれ地域づくりなどにかかわる際に「ケアマネジメント思考」が活かされれば、多様な資源創出や多職種連携のあり方改革なども進みやすくなるかもしれません。

今回の中間整理案を直近の制度改正に反映させるだけでなく、その先のビジョンを開く材料として活用できるかどうか。こうした点も頭に入れておきたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。