ケアマネジメントにかかる諸課題検討会の中間整理案で、人材確保策の一環としてクローズアップされているのが「業務負担の軽減」です。具体的方策では、国が力を入れるケアプランデータ連携システムのほか、ケアプラン作成支援AIの活用もあがっています。
データ連携システム普及は依然芳しさを欠く
ケアプランデータ連携システムについては、オンラインセミナーなども随時開催されています。最新となる12月4日の自治体等向けのセミナーに関しては、ヘルプデスクサポートサイトでも登壇者資料が公開されました。
注目したいのが厚労省の資料です。それによれば、2024年11月22日時点での利用申請状況は、6.3%にとどまっています。都道府県別で見ると、申請率がもっとも高いのは鳥取県の24.7%ですが、低い所は2.8%(島根県、佐賀県)と10倍もの開きがあります。
ケアプランデータ連携システムの活用が居宅介護支援費IIの算定要件となってから半年ですが、思うように普及が進まない中で、ケアマネの業務負担軽減の切り札となるのかどうか。厚労省としても、現在国会提出中の補正予算案でデータ連携の地域でのさらなる促進策をかかげています。それでも進ちょくが芳しくない場合、いよいよ活用義務化やケアマネの処遇改善策における要件化などの議論が出てくる可能性はあるのでしょうか。
もう1つの負担軽減策となるAI活用の今
ここで注目したいのが、もう1つの業務負担軽減策として、再びクローズアップされている「AIによるケアプラン作成支援」です。
ケアプラン作成支援AIについては、現場での実装につなげるための実証的な検証が進んでいます。すでに複数の企業が実用可能なシステムを開発し、自治体単位での活用を図る動きも見られます。しかしながら、国として普及を進めていくうえで、実証すべき課題が依然として多いのが実情です。
焦点となるのは、ホワイトボックス型AIについてのケアプラン作成支援のあるべき姿です。ホワイトボックス型AIというのは、利用者の予後予測や課題分析にいたった「根拠」を明らかにできるAIのことです。
ケアマネは、利用者に対して、あるいはサ担会議に際して「なぜこうしたプランを作成したか」という根拠を示すことが必要です。そうした根拠が示されてこそ、利用者や多職種の納得を得ることができ、そこで初めてAIによる作成支援を受けたケアプランが機能することになるわけです。その点で、「ホワイトボックス型」は重要な軸の1つとなります。
AIの学習データをどうやって収集するか?
しかしながら、納得できる根拠を提示するには、利用者一人ひとり異なる複雑な状況に対応できるだけの学習をAIにほどこすことが必要になります。そのための実証研究は、2026年度にかけて進められる予定ですが、老人保健健康増進等事業の報告書でも乗り越えるべき課題が示されています。
その課題の1つが、AIに学ばせるべき膨大な学習データをどのように収集するかという点です。たとえば、先の老健事業の報告書では、「全国的なケアマネジメントデータをAI開発のために利用できるような基盤整備が必要」と指摘されています。
そこで登場するのが、ケアプランデータ連携システムです。現状では、連携基盤上では、事業所間でのデータのやり取りを手がけるだけで、データの蓄積は行われていません。
これについて、先の報告書では、個人情報保護に配慮したうえで、ケアプランデータを定期的に収集してAIに組み込み、学習させることができる基盤を整備すべきと提案しています。つまり、ケアプランデータ連携システムの活用によって、実装可能なAIの開発を進めていくことを示唆しているわけです。
ちなみに、冒頭でふれたケアプランデータ連携システム関連のセミナー資料では、2026年度以降の介護情報基盤の活用イメージが示されています。その介護情報基盤には、要介護認定情報等に加えてケアプラン情報も含まれ、ケアプランデータ連携システムを通じての情報蓄積のイメージも描かれています。
ケアプランデータ連携に新たな名分が誕生?
以上の流れを見ると、厚労省としては、ケアプランデータ連携システムの普及とケアプラン作成支援AIの開発は「セットで進める」というビジョンを描いていると思われます。もちろん、個人情報保護についてのさらなる法改正等も必要になるでしょうが、この点をクリアしたうえでの報酬・基準改定上の今後の制度設計に注意することが必要でしょう。
2027年度改定の時点で、運営基準上の「ケアプランデータ連携システムの活用義務化」を明記するのは難しいかもしれません。その代わり、ケアマネの処遇改善策を導入しつつ、その要件に「ケアプランデータ連携システムの活用(猶予期間をとって今度は連携実績を問う)」を明記することが考えられます。
これによってホワイトボックス型AIの学習に必要なケアプラン情報が蓄積されれば、2028年度あたりから順次、国による「ケアプラン作成支援AI」のプラットフォーム運用が開始されるという未来像も描かれそうです。
いずれにしても、「何のためのケアプランデータ連携システムなのか」という点をめぐり、「ケアプラン作成支援AIの開発」という名分が一気に浮上する可能性がありそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。