
介護給付費分科会の介護報酬改定検証・研究委員会で、2024年度改定の効果検証等の調査が進められています。2024年度と2025年度にまたがって調査対象とされたのが、「高齢者施設等と医療機関の連携体制(協定締結医療機関との連携状況含む)」について。運営基準上の義務化規定などもある中、経過措置後をにらんだ慎重な対応が望まれる部分です。
対協力医療機関連携の基準改定を改めて整理
上記の「高齢者施設等と医療機関の連携体制」について、改めて2024年度改定の主だった内容を確認しましょう。まず運営基準ですが、大きくは以下の3つがあげられます。
A.施設系サービスで、提携する協力医療機関が満たすべき条件が定められたこと。具体的には、入所者の病状急変時の相談対応体制を確保していることや、施設側から診療の求めがあった場合の診療体制を常時確保していることなどです。2027年3月末までの経過措置を経て、完全義務化が図られる予定です(居住系サービスについては努力義務)。
B.施設系・居住系サービスともに、協力医療機関との連携体制についての義務化が図られたこと。具体的には、協力医療機関との間で1年に1回以上、利用者の急変時等における対応を確認することです。なお、その取り決め内容は、対象となる協力医療機関名とともに都道府県に届け出なければなりません。
C.施設系・居住系サービスともに、協力医療機関に利用者が入院した場合の努力義務が定められました。具体的には、利用者の病状が回復し、退院が可能になった場合には速やかに再入所・入居できるようにすることです。
対協力医療機関連携に関する新加算も続々
次に加算ですが、1つは、協力医療機関とのさらなる連携構築を評価する「協力医療機関連携加算」が設けられたことです。
要件としては、協力医療機関との間で、利用者の急変時等の対応に加え、利用者の病歴等の情報共有を行なうための会議をおおむね月に1回以上開催することです(オンラインで随時情報が確認できる体制が築かれている場合には年3回以上でOK)。
なお、先に述べた運営基準をすでに満たしている場合には、2.5~20倍もの高い単位が算定できるしくみになっています。
もう1つは、やはり施設系・居住系を対象とした「高齢者施設等感染対策向上加算」。振興感染症の発生時等での協定締結医療機関との連携などが要件ですが、対協力医療機関に関して、一般的な感染症(新型コロナ含む)についての取り決めなども求めています。
さらに、診療報酬上の感染対策向上加算等を算定している医療機関が実施する研修に参加したり(加算I)、その医療機関から3年に1回以上、感染制御にかかる実地指導を受けていること(加算II)も要件となっています。
施設等の実務負担をめぐるさまざまな問題
こうして見ると、新設された運営基準や加算要件を満たすうえで、従来の協力医療機関との提携でいいのかどうかを見直さなければならないケースもあるでしょう。ちなみに厚労省は告示で、想定される協力医療機関として、在宅療養支援病院などを上げています。
仮に「提携先の見直し」となった場合の渉外実務は、管理者や相談員などが手がけるとなれば、かなりの負担を要します。やはり対医療連携にかかる専門の渉外担当者などを育成・配置する必要性も高まりそうです。
新たに提携先の医療機関などを探すとなれば、たとえば厚労省が運営する医療情報ネット(ナビイ)などの活用が考えられます。ただし、最寄りの地域で条件を満たせる医療機関が「ない」というケースもあるでしょう。
仮に「あった」としても、該当する医療機関がどこまで提携に前向きになってくれるのかという問題は残ることになります。
医療側のインセンティブはどうなっている?
厚労省は、今改定にあたり、医療機関側の提携のインセンティブを高めるべく、2024年度の診療報酬改定でさまざまな方策をとっています。たとえば、報酬増のしくみに関しては、「協力対象施設入所者入院加算」や「介護保険施設等連携往診加算」が設けられました。
また、在宅療養支援病院の施設要件に、「介護保険施設から協力医療機関となることを求められた場合」に、その求めに応じることが望ましいという旨もプラスされています。
ただし、利用者の容態急変時だけでなく、情報共有のための定期的な会議参加などが必要となれば、医療機関側も平時からの渉外担当(地域医療連携室にかかわる医師など)の配置などが求められます。先のようなインセンティブだけで、平時からの協力医療機関としてのやり取りが円滑に行われるのかどうかといえば、ハードルは決して低くありません。
その点では、冒頭で述べた2024年度の改定検証を早急に進めるのはもちろん、やはり介護報酬改定より1年早く訪れる2026年度の診療報酬改定の動向もカギとなります。
この診療報酬改定に向けた中医協(中央社会保険医療協議会)等の議論で、どれだけ介護保険側の事情に対応する流れができるのか。これは協力医療機関の話だけでなく、その他の介護保険における対医療連携の項目にもかかわってきます。介護現場としては、近々の診療報酬改定の議論からも目が離せません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。