
3月17日の介護保険部会では、「高齢者向け住まい」のあり方がテーマとなりました。注目は、住宅型有料ホーム等における「囲い込み」や「サービス提供の過不足」に関する課題です。こうした課題対処に向け、厚労省は別に新たな検討会の立ち上げも予定しています。次期制度改正の行方などを探ります。
住宅型・サ高住の介護事業所併設は6~7割
厚労省の2024年度の老健事業調査によれば、高齢者向け住まいに関して「併設の介護事業所あり」のケースが、住宅型有料ホーム(以下、住宅型)で63.3%、サ高住で74.8%にのぼります。「隣接の介護事業所あり」を含めると、両者ともに8割前後となっています。
併設・隣接事業所の類型では、住宅型・サ高住ともに「訪問介護」がもっとも多く(ともに5割前後)、次いで「通所介護」(4割)、「居宅介護支援」(2~3割)が続きます。
こうした状況に対して財務省は、「特定施設」における包括報酬よりも、「住宅型・サ高住」における併設・隣接事業所の出来高払いの方がより多くの報酬を得ることが可能という点を指摘。仮に後者で区分支給限度基準額いっぱいまでサービスを提供した場合、要介護5の利用者で特定施設の包括報酬よりも月あたり12万円ほど収益が高くなります。
住宅型等の併設事業所に「利用上限設定」⁉
ちなみに、上記の「特定施設」と「住宅型・サ高住」における併設・隣接事業所による収益の差額は、要介護度が高くなるほど大きくなります。先に述べた通り、要介護5だと約12万円差ですが、要介護3だと約6.6万円と半分に。要介護1だと約5,000円差です。
2023年度のやはり老健事業のデータによれば、要介護3以上の入居者の割合は、特定施設で42.2%なのに対し、住宅型では53.7%にのぼります。サ高住は3割にとどまりますが、少なくとも住宅型では、以下のビジネスモデルが成り立っている可能性があります。
つまり、重度の高齢者を「比較的安い入居費」で積極的に受け入れつつ、併設・隣接事業所の介護サービス費用で収益を上げる──というものです。政府はこうしたビジネスモデルが、「囲い込み」を生む土壌であるとして、昨年閣議決定された「骨太の方針2024」でも報酬体系の見直しなどを求めています。
すでに財務省は、囲い込みの問題に対して、同一建物減算といった個別対応にとどまらない改革を提言しました。具体的には、区分支給限度基準額ではなく特定施設(一般)の包括報酬を利用上限とするというものです。
住宅型等併設の居宅介護支援の扱いにも注意
こうした改革は、2027年度の制度見直しに向けて、最優先事項の1つとなるのは確実でしょう。骨太の方針等への対応だけでなく、こうした併設・隣接事業所によるサービス提供については、訪問介護等の基本報酬引下げに関する反発(報酬引下げの根拠データに関し、併設・非併設ケースの混在により実態を把握していないなど)との関連で、今後もクローズアップされるのは間違いないからです。
厚労省としても、仮に訪問介護等の基本報酬を引き上げるとした場合、代わりに「住宅型等の併設・隣接事業所に対して(財務省の提言する)上限設定などを打ち出す」ことにより、財政均衡を保ちやすくなります。
もっとも、その場合に、訪問介護や通所介護とともに「居宅介護支援」も見直しの対象にのぼる可能性もあるでしょう。つまり、住宅型等に併設・隣接した居宅介護支援事業所に対して、基本報酬の引下げや上限設定といった改革がありえることです。
ただし、地域におけるケアマネ不足の解消という課題は常に付きまといます。住宅型等の併設・隣接であっても簡単に総報酬の引下げを図ることは、地域のケアマネ人材の不足を加速させかねません。となると、基本報酬には手をつけず、「ケアマネジメントへの利用者負担」を、住宅型等併設・隣接の事業所に限って導入することも考えられます。
主体的な選択権や意思決定の尊重こそが重要
政府は「ケアマネジメントへの利用負担導入」を推し進める姿勢を見せています。ただし、現場レベルでは異論も根強く、介護保険部会等でも紛糾することは確実です。となれば、ここでも厚労省は「導入しやすい部分から」の流れを取る可能性があるわけです。
このようにさまざまな改革案の浮上が想定される一方、忘れてならない原則があります。それは、何より大切なのは利用者の主体的な選択権を含めた意思決定の尊重であることです。利用者への意思決定支援を図りつつ、その意向尊重のもと、「サービスありき」ではない支援のあり方を構築しなければなりません。
そのサービスが本当に利用者の意向に沿ったものなか。利用者の選択権は守られているのか。このあたりは、基準等による規制だけでは、十分な保障を確立することは困難でしょう。やはり、事業者との利害関係がない純粋な「第三者」の関与がカギとなりそうです。
たとえば、利用者が住宅型等への住み替え意向が生じた時点で、居住支援団体等が意思決定支援者(ケアマネ資格や社会福祉士の取得を条件とするなど)を立てる。その支援者が、本人の入居後のサービス選択等に関与する──といったしくみも必要かもしれません。
厚労省が新たに立ちあげる検討会でも、当事者の選択権尊重と意思決定支援という部分にもきちんと踏み込めるか問われそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。