
「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」が取りまとめを行ない、具体的な制度化に向けた議論が介護保険部会に移っています。大幅な法改正も予測される一方、入居者の権利擁護が確実に図れるしくみとなるのかどうかが問われます。
入居年齢に比べ重度化傾向が高い「住宅型」
まず、有料老人ホーム(住宅型)の利用の現状を改めて確認しておきましょう。
入居者の年齢層ですが、2014年と2024年の比較で、90歳以上の割合は「23.5%⇒31.2%」と7.7ポイント増加しています。ただし、伸びてはいるものの、特定施設(介護付き有料ホーム等)の17ポイント増(29.3%⇒46.3%)と比べれば伸びは穏やかです。
一方で、要介護3~5という中重度者の割合は、介護付き有料老人ホームの42%に対し、住宅型は54%。平均要介護度も、前者が2.3に対して後者が2.7と、住宅型の入居者の方が重度化傾向は高くなっています。
介護付きの方が包括的なサービス体制が整っているゆえ、年齢層は高くても重度化傾向が抑えられているのでは──いう見方もあるでしょう。確かに、一定の医療処置(介護職ができるもの含む)を要する入居者人数は介護付きの方が高く、それに対応するサービスが包括的に提供される介護付きの方が、重度化防止効果を上げているとも言えそうです。
しかし、見方を変えると違う面も浮かんできます。それは、各類型において、どのようなルートで入居に至るかという傾向です。
入院を経ての「住宅型」入居も目立っている
厚労省が示す別のデータでは、「病院・診療所」からの入居が、介護付きで32.3%に対し住宅型で43.4%と、10ポイント近く住宅型の方が上回っています。「不明」という回答も多いので一概には言えませんが、医療機関への入院を経て「在宅復帰」ではなく「住宅型」に入居するケースも多いと言えるでしょう。
実際、「入居にいたるルート」として、「医療機関からの紹介」の割合が、介護付きの12.9%に対して住宅型は20.5%と高くなっています。「ケアマネからの紹介」も、住宅型の方が2.5倍以上高いので、在宅で介護・療養を受けていた人が住宅型に入居するケースが多いのは間違いありません。一方で、介護保険未利用の人が、疾病悪化等による入院を経て住宅型に入り、そこで初めて介護保険を使うケースも一定程度あることが想定されます。
これらを頭に入れたうえで、冒頭のあり方検討会の取りまとめを見てみましょう。いわゆる「囲い込み」対策の一環で提案されているのが、入居契約に際しての禁止規定です。
たとえば、
- ホームと併設・隣接あるいは提携する介護サービス事業者や居宅介護支援事業所の利用を契約条件とすること。
- かかりつけ医や担当ケアマネの変更を強要すること
──などが禁止案の対象となっています。
「なじみのケアマネ」等がいない場合の意向
これらの禁止規定案は、介護保険部会での論点としても受け継がれ、老人福祉法あるいは介護保険法(関連省令等含む)の改正へとつながる可能性はかなりと言えます。
すでに在宅で介護保険を使っていて担当ケアマネがいる、もしくは持病の通院診療等でかかりつけ医があるといったケースでは、入居者にとっても「自身の権利(選択権)が保障される」といった実感は得やすいでしょう。
問題は、先に述べたように在宅で介護保険を使っていない、あるいは持病のステージが変わり療養密度が増すといったケースです。後者の場合、通院先のかかりつけ医ではなく、新たに身近での訪問診療等のニーズが高まるケースもあるかもしれません。
そうなると、入居者における「選択権の保障」よりも「そのホームにお任せする(ホームとの関係が深い資源に依存する)」という意向も高まりがちとなります。先のような禁止規定があっても、実質的に「囲い込み」に自ら入ってしまうケースも考えられるわけです。
「それも本人の意向である」と言うのは簡単です。問題は、いったん「お任せ」状況に入りこめば、「意に沿わないから抜け出すこと(新たにケアマネを選んだり、かつてのかかりつけ医に訪問等の診療手段をお願いするなど)のハードルはかなり高くなることです。
入居後の「切り替え」権のサポート強化も
その点では、なじみのケアマネがそのまま担当につく等の「継続性」はもちろん、ホームでの介護・医療のあり方からの「切り替え」という点においても、十分な選択権の保障を担保することが欠かせません。
もちろん、実際の法改正では「切り替えできないことの強要」を禁止する規定もプラスされることにはなるでしょう。しかし、以前からの担当ケアマネが付いているなど、相談できる「第三者」との付き合いがない場合も想定されます。その中で自己の選択権を発揮するには、何らかの早期サポートが必要です。
たとえば、入院中から(もちろんホームとの縁故がない)MSWの協力を得て、本人の意に沿う担当ケアマネを見つけるなどを保障するしくみなどが考えられます。その際には、入院先の医療機関の(ホームとの関係における)中立性を担保する規定も必要でしょう。
現在、2026年度の診療報酬改定の議論も続いていますが、退院後の状況を想定した患者の権利擁護について、厚労省内の多部署間の連携下での検討を深めることも求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。