
厚労省より「訪問介護事業所の出張所(いわゆるサテライト)の設置について」の通知が発出されました。訪問介護のサテライトについては、介護保険スタート時の通知でも要件等が明記されていますが、中山間・人口減少地域等のサービス提供が課題となる中で、改めて周知を図ることとなりました。
訪問介護のサテライト設置の要件を再確認
今通知で示された「訪問介護のサテライト設置」の要件を、改めて確認しましょう。この場合の要件とは、本体事業所との関係を定めたもので、これらを満たせば、本体事業所とサテライト事業所が一体的なサービス提供単位として指定が受けられるというものです。
(1)サービスの利用申込みにかかる調整やサービス提供状況の把握、職員に対する技術指導などの実務が一体的に行われること。
(2)職員の勤務体制、勤務内容などが、一元的に管理される体制にあること。
(3)(2)に関連し、必要な場合に、本体事業所等との間で相互支援が行なえる体制にあること(例.サテライト事業所のヘルパーが急病等でサービス提供できなくなった際、本体事業所から代替要員が派遣できる体制にあるなど)
(4)苦情の処理や損害賠償などが生じた際に、一体的な対応ができる体制にあること。
(5)事業の目的や運営方針、営業日・時間、利用料などを定める運営規程が、本体事業所とサテライト事業所の間で同一であること。
(6)人事、給与・福利厚生などの勤務条件による職員管理も一元的に行われること
今通知が出された背景には何があるか
すでに中山間や離島地域においては、この要件のもとで長年事業のサテライト展開が行われているケースも見られます。なぜ、こうした通知が改めて出されたかといえば、背景は大きく分けて2つあります。
1つは、中山間・人口減少地域等を中心に、訪問介護事業の受給バランスが崩れている地域があるという課題です。ニーズに対して事業所が足りないケースもさることながら、過疎化で極めてニーズが限られる地域もあります。ヘルパー人員の確保が難しければ、そうした地域に事業展開することも困難となり、必要な人にサービスが行き届かなくなります。
こうした課題に対し、たとえば他市町村に本体事業所がある事業者が、ニーズの限られた地域にサテライト事業所を設置することになります。ちなみに、本体事業所との一体的な指定が可能となるため、サテライト側に管理者やサービス提供責任者などを配置しなくても、人員基準を満たすことが可能です。
サテライト推進のための補正予算による事業
もう1つの背景は、上記のような地域事情をめぐる課題に対し、2025年度補正予算で訪問介護のサテライト設置を推進するための支援事業が拡充されたことです。
そもそもサテライト事業所にかかる一体的な指定が可能だとしても、先に示した一体的・一元的運営を行なうには、事業所物件の取得や適切な現場管理に資する通信環境の整備には相応の費用がかかります。サテライト側に勤務するヘルパーの管理などについて、ノウハウも確かなものにしなければなりません。
そうなると、制度上の要件緩和だけでは、中山間・減少地域等におけるサテライト展開を促進するインセンティブとして不十分です。
そこで、先に述べたコスト負担やノウハウ支援にかかる経費などを補助するというのが、今回の事業です。これらを導入前のアドバイザー等による伴走支援、導入時の備品購入や移動手段確保にかかる費用等の支援、導入後の一定期間のランニングコストの助成という具合に、3段階で実施するしくみです。
地域の実情に応じた訪問介護の提供体制確保については、この他にも、通所介護事業所等の多機能化によって訪問介護の機能を確保するなどの事業も実施されています。
一方で気になる、基本報酬の引上げ是非
問題は、これらが単年の補正予算による事業であり、どこまで継続されるかが不透明なことです。先のサテライト事業にかかる支援についても、導入後のランニングコストが「いつまで」助成されるかが見えにくいと、本体事業所側も運営見通しを立てにくくなります。
最終的に各自治体が一般財源や他の交付金等で継続する可能性もありますが、これも確証はありません。安定的な費用確保となれば、2026年度の臨時改定で「訪問介護の基本報酬引き上げ」が望まれるわけですが、先の予算折衝による内訳では、処遇改善分と食費の基準費用額の引上げにとどまっています。
確かに、基本報酬の引上げは保険料の増大につながるので、政府も踏み出しにくい部分はあるでしょう。しかし、サテライト事業で言うならば、仮に配置ヘルパーが1~2人となった場合、(ICT等の活用があるにしても)その心身にかかる負担は本体事業所のヘルパー以上に募ることもあります。
そのあたりは、過疎地の事業所(地域で連携できる他事業所も少ない)でたった1人サービス提供を行なう際の「心細さ」を想像してみましょう。サテライト事業所が増えれば、そうしたヘルパーの心身面の課題とともに予期せぬコストが蓄積される可能性もあります。
そうした点も含め、本体事業者による下支えを確かなものにすることが不可欠です。そのためにも、基本報酬の引上げは、やはり避けられない政策課題ではないでしょうか。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。