ケアマネジャーが知っておきたい口腔管理・連携のあり方<PR>

2024年11月12日に「口腔管理・連携のあり方」をテーマにしたセミナーが開催されました。
セミナーでは、日本歯科大学教授 口腔リハビリテーション多摩クリニック院長 菊谷武先生とケアプラン相談室湧 主任介護支援専門員 三井みい比呂子先生を迎え、誤嚥性肺炎予防への取り組みや連携のあり方について講義いただいています。
本記事では、セミナーで取り上げた高齢者のお口の問題、観察ポイントと歯科専門職との連携におけるケアマネジャーの役割についてまとめています。

高齢者のお口の問題と観察ポイント

はじめに、菊谷武先生による講演をご紹介します。

菊谷先生の講演では、要介護者の残存歯の多さから生じるお口の問題と、誤嚥性肺炎発症メカニズム、口腔内の観察ポイントについて解説されています。

多死時代における多歯時代

近年、口腔栄養スクリーニング加算(Ⅰ)(Ⅱ)や口腔連携強化加算など、口腔・栄養改善への取り組みを評価する加算が在宅系サービスの現場に導入されています。その背景として、80歳で20本以上歯が残っている8020達成者が増えた一方で、残っている歯のほとんどが虫歯や歯周病になる「カリエスパンデミック」、「歯周病の洪水」という状況があると菊谷先生は説明されています。

平成28年歯科実態調査結果の概要
20本以上の歯を有する者の割合の年次推移
う歯を持つ者の割合の年次推移
出所) 菊谷 武:日本歯科医師会雑誌、2007

このような残存歯の虫歯や歯周病といった口腔内の問題だけでなく、加齢に伴い誤嚥性肺炎の比率が上昇するということも、高齢者の健康にとって大きな問題となっています。

多歯時代の高齢者の口腔問題が、誤嚥性肺炎の発症にどう関わっているかを次にみていきましょう。

誤嚥性肺炎発症の3つの条件と対策

菊谷先生は、誤嚥性肺炎発症までのメカニズムについて、3つの条件があることを説明されています。

まず、第一に口腔内でさまざまな細菌が増えること、第二にそれらを誤嚥すること、第三に利用者自身の抵抗力が低いこと、この三つの条件が悪いと誤嚥性肺炎の発症に至ります。

誤嚥性肺炎発症のメカニズム

誤嚥性肺炎発症メカニズムの図 前半 誤嚥性肺炎発症メカニズムの図 後半

反対に、口の中が汚くても誤嚥していなければ肺炎は起こりませんし、誤嚥しても口腔内が清潔で唾液がきれいであれば肺炎は起こらず、また、抵抗力がしっかりあれば肺炎にならないと言えます。

この誤嚥性肺炎発症メカニズムから見た対策を示したのが以下の図です。

発症モデルからみた
口腔ケアにより誤嚥性肺炎の対策は?

摂食機能訓練と口腔ケアの効果

菊谷先生は摂食機能訓練と口腔ケアが誤嚥性肺炎発症モデルの三つの条件を改善する重要な対策であると強調されています。

<摂食機能訓練の効果> 

・唾液分泌など自浄作用の活発化→口腔・咽頭の環境改善

・嚥下機能の改善→誤嚥防止

・食べ物をしっかり飲み込めるようになる→抵抗力の向上

<口腔ケアの効果>

・歯に付着した細菌(バイオフィルム)の除去→口腔・咽頭の環境改善

・口腔ケア自体が嚥下機能を改善→誤嚥防止

・味覚の改善と食べる意欲の向上により栄養状態が改善→抵抗力の向上

つづいて、誤嚥性肺炎を発症しやすいハイリスク者がどのような状態の人なのか、そしてその理由について見ていきます。

歯が多い要介護者は誤嚥性肺炎のリスクが高い

特別養護老人ホームに入居する要介護高齢者618名(平均年齢86.8±6.9歳)を対象にした調査では、歯の数とADLの低下が唾液中の細菌数に強く影響を与えていることが明らかになりました。

また1年間の追跡調査の結果、以下のことが明らかになってきました。

要介護高齢者の歯の存在は
発熱と関係する
  • 要介護高齢者 271名の追跡調査(1年間)
    • 平均年齢 83.4歳
    • 発熱(37.5度以上)日数 15日以上 vs 14日以下
    • 59人が発熱
  • 発熱リスク因子
    • 20歯以上の者(vs 9歯以下に対して 5.44倍)
    • 経管栄養の者(vs 普通食摂取者に対して 18.62倍)
Shimazaki.et.al GGI 2009

これらの調査結果から、残存歯が多い人が要介護状態になり、口腔ケアが不十分となることで誤嚥性肺炎の高リスク者になるといえます。

残存歯が多い状態で口腔ケアを怠ったとき、口腔内では何が起こっているのでしょうか。まず口腔内の細菌はバイオフィルムという状態で強い力でかたまり、歯などの硬いものにプラーク(歯垢)として付着し増殖します。

バイオフィルムの状態のプラークには消毒剤、抗菌剤が浸透せず、効果を発揮しなくなります。そのため、うがいだけでなく歯ブラシでこすってバラバラにする必要があると菊谷先生は強調されています。

なぜ消毒剤・抗菌剤による含嗽が
あまり効果を発揮しないか?
  • 菌体外多糖に取り囲まれ、消毒剤・抗菌剤が浸透しない。
  • 歯や義歯側から血行移行することがない。
抗菌剤が届かないイメージ

残存歯が多いほど口腔内の細菌が増殖しやすく、口腔内のトラブルや誤嚥性肺炎のリスクが高くなるので、よりいっそうブラッシングなどの口腔ケアが必要となるのです。

このような多歯時代において、それぞれの利用者に合った摂食機能訓練や口腔ケアの方法を検討するために、まずは口腔内の状態を観察・評価していくことが重要です。

口腔内の観察と評価のポイント

口腔内は上からのぞきこむような姿勢では、上あごや上の歯を見ることができないため、正しく観察するためには次のポイントに留意する必要があります。

観察時の目線:利用者と同じか、少し低い位置で観察する。クッションや枕で頭部を安定させると観察しやすい。

明るさの確保:照明器具(ペンライトなど)を使って口腔内を明るくする。

利用者と同じか、少し低い目の高さから行う
×
上からのぞきこむような姿勢では上顎や上の歯が見えない
入所者と同じか少し低い目の高さで観察を行う
上からのぞきこむような姿勢
同じか少し低い目の姿勢
「日本歯科医学会、入院(所)中及び、在宅等における療養中の患者に
対する空港の健康状態の評価に関する基本的な考え方」より改変

【口腔の健康状態の評価項目】

  1. 開口 
  2. 歯の汚れ 
  3. 舌の汚れ 
  4. 歯肉の腫れ、出血 
  5. 左右両方の奥歯でしっかりかみしめられる 
  6. むせ
  7. ぶくぶくうがい 
  8. 食物のため込み、残留 
  9. その他(歯の揺れ、義歯による傷など)

①開口 

評価基準:上下の前歯の間に指2本分(縦)入る程度まで口があかない場合(開口量3cm以下)には「できない」とする。

考えられるリスク:開口が不十分か開口拒否がある場合、口の中の観察や口腔清掃がしづらくなり口腔環境の悪化のリスクが高まります。また、舌骨上筋群の筋力低下による嚥下障害が隠れている可能性があります。

②歯の汚れ 

評価基準:歯の表面や歯と歯の間に白や黄色の汚れ等がある場合には「あり」とする。

考えられるリスク:虫歯や歯周病の原因となる白く柔らかい汚れ(プラーク)は誤嚥性肺炎の原因にもなります。

歯の汚れ

歯石はプラークが石灰化したもので下の前歯につきやすいです。歯石化すると歯ブラシでは落とせなくなります。

③舌の汚れ

舌の汚れの評価基準:舌の表面に白や茶色、黒色の汚れがある場合には「あり」とする

考えられるリスク: 舌の汚れがある場合、口腔清潔不良の可能性や、口唇・舌・頬等の動きが低下し、自浄作用が低下している可能性も考慮する必要があります。

舌の汚れ

舌が黒くなる現象は、薬の飲み込みがうまくいかないことを示唆している場合もあります。

例えば、抗パーキンソン病薬や酸化マグネシウムを服用している患者の場合、薬が舌の上に残ることで反応が起こり、舌が黒くなることがあります。この状況は、パーキンソン病薬の効果が現れにくくなる原因ともなります。

したがって、舌の黒化が見られた場合は、主治医に状況を報告し、服用方法や薬の形態の見直しを検討することも重要となります。

④歯肉の腫れ、出血

評価基準: 歯肉が腫れている場合(反対側の同じ部分の歯肉との比較や周囲との比較)や歯磨きや口腔ケアの際に出血する場合は「あり」とする。

考えられるリスク:歯肉の腫れや出血があるということは、歯周病の可能性が高く、将来的に歯を失う原因の一つとなります。

歯肉の腫れ・出血

⑤左右両方の奥歯でしっかりかみしめられる

評価基準:本人にしっかりかみしめられないとの認識がある場合または義歯をいれても奥歯がない部分がある場合は「できない」とする。

考えられるリスク:奥歯がないと、食物を噛み砕く能力(咀嚼能力)の低下から窒息事故につながるリスクもあるため、食事形態などの見直しの必要性があります。

奥歯でかみしめられない

⑥むせ

評価基準:平時や食事時にむせがある場合や、明らかなむせはなくても、食後の痰がらみ、声の変化、息が荒くなるなどがある場合は「あり」とする。

考えられるリスク:むせは、食べものや唾液が気管内や喉頭内に侵入する誤嚥の防御反応として起こります。むせは嚥下機能が低下し誤嚥を起こしている可能性を示しているため、摂食嚥下機能の精査や訓練が必要な場合があります。
また「不顕性誤嚥」はむせがあるものよりも誤嚥性肺炎の可能性が高く、特に注意が必要です。「不顕性肺炎」の代表的なサインには、食後の痰がらみ、声の変化、息が荒くなるなどがあり、これらの症状が頻繁に見られる場合は、医療機関との連携が必要です。

⑦ぶくぶくうがい

※現在、歯磨きをしている場合に限り確認する。

 評価基準:歯磨き後のうがいの際に口に水をためておけない場合、頬を膨らませない場合、膨らました頬を左右に動かせない場合は、「できない」とする。

考えられるリスク:歯を磨いた後にぶくぶくうがいをして口の中の汚れともどもお水を吐き出すことは、口の衛生状態を保つために有効です。そしてこのぶくぶくうがいができるかどうかは、口周りの筋肉がしっかり動くかによります。

ぶくぶくうがいの能力

ぶくぶくうがいは、口唇閉鎖(唇を閉じること)と、舌口蓋閉鎖(喉の入口のところを閉じること)が揃って初めて行うことができます。この能力が低下すると、ぶくぶくうがいができなくなり、口腔衛生が保ちづらくなります。

⑧食物のため込み、残留

評価基準:食事の際に口の中に食物を飲み込まずためてしまう場合や飲み込んだ後に口をあけると食物が一部残っている場合は「あり」をつける

考えられるリスク:食べ物がいつまでも口の中に残っている場合は、摂食嚥下障害の可能性が考えられます。口腔機能と食事形態があっていない可能性があるため、食事形態の検討や摂食嚥下機能の精査・訓練が必要となる場合があります。

食物のためこみ、残留

⑨その他

歯が揺れている 義歯による傷(義歯性潰瘍)歯茎が腫れているかどうかも観察しましょう。

一見歯が残っているように見える場合でも、噛むたびに揺れているような歯があると、食事時に落ちて飲み込んでしまうなどのリスクがあるので注意が必要です。

その他

入れ歯が合わなくなり、口の中に傷や褥瘡できてしまっている場合もあります。
本人の認知機能が低下していると、傷があっても自分から痛いと言わないことも多く、周囲が観察し気付いてあげる必要があります。

口腔内の観察ポイントとリスクについて評価する視点をもつことで、適切なタイミングで歯科専門職との連携を図ることができるかと思います。

次に主任介護支援専門員の三井みい先生による講演をご紹介いたします。

誤嚥性肺炎予防におけるケアマネジャーの役割と実際

三井みい先生の講演では実際に要介護者の口腔機能・栄養面改善への取り組み事例を通じて、ケアマネジャーとしての役割について解説されています。

イントロダクションとして、三井みい先生が15年ケアマネジャーとして活動している東京都小金井市の特徴について触れられています。小金井市の高齢者は、介護認定前~要支援の方が多く、地域サークル活動での健康に関する情報共有も盛んで、誤嚥性肺炎予防の意識が高い方が多いようです。

また、菊谷先生が所属される日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション多摩クリニックがあるため、介護予防講座などを通じて口腔管理の指導や相談がしやすいという特徴が紹介されています。

このような地域性を背景として、ケアマネジャーとしての実務に照らしながら、誤嚥性肺炎予防のために確認すべきことや取り組めることについて紹介されています。

誤嚥性肺炎予防のための口腔管理とその他の支援内容

まず、ケアマネジャーはアセスメント時に様々な情報を収集しますが、誤嚥性肺炎リスクに関する項目と気を付けるポイントについて、まとめたのが以下の図です。

アセスメントで確認する際の
誤嚥性肺炎リスクに関する項目
口腔状態
口腔内及び歯の状態、義歯の管理方法、歯科受診状況・指導内容、口腔ケアの方法、頻度
食事摂取状況
食事の際のむせ込み、食後などの咳き込み、痰がらみの有無、食事の内容、量、時間
身体状況
筋力低下があるか、最近痩せたか、麻痺の有無、寝たきり状態か
疾患について
神経難病、脳血管疾患後遺症による嚥下障害、認知症、肺疾患の有無、誤嚥性肺炎既往の有無
介護者の状況
介護者がいるか、介護力があるか、誤嚥性肺炎予防の理解があるか

ケアマネジャーだけでは把握が難しい口腔管理の課題があった場合、三井みい先生は訪問歯科の導入を検討することも多いそうです。

訪問歯科を導入することにより、口腔状況の客観的な把握ができるだけでなく、専門職からの指摘や提案がご本人ご家族の理解を得やすい上、診断内容や指導内容がケアマネジャーに共有されることで、他職種間で状態を理解して支援しやすくなるというメリットを挙げられています。
また訪問歯科の導入以外にも、利用者の状態に応じて様々な口腔・栄養課題への取り組みや支援の方法があることを紹介されています。

嚥下障害・低栄養の方
食形態の工夫、必要な栄養の摂取が必要な方には、管理栄養士による栄養指導が受けられるよう調整する。 また、嚥下状態に応じ、入手できる商品や配食、作り方等についての情報提供を行う。主治医にも、高カロリー栄養剤の処方や栄養指導の必要性について、情報提供・相談の上、 指示依頼する。訪問診療を利用していると、非常に連携がスムーズに行く。
寝たきりの方
体位交換が必要なため、状態によって、体位交換方法の指導・ヘルパー等の導入、体位変換クッションの利用や自動体位交換機能付きのエアマットの利用などを提案する。 食事姿勢調整のための福祉用具の調整を、歯科、リハビリ職種と行う。嚥下訓練のための言語聴覚士が導入できればする。 難しい場合は、訪問看護師にお願いする。
閉じこもりの方
廃用症候群による、口腔機能低下予防のため、出掛けて、人と会う機械が作れるようにする。 人と話したり、歌を歌ったり、身体を動かす機会を作る。

つづいてご紹介する二つの事例では、誤嚥性肺炎予防の取り組みの中でケアマネジャーがどのような役割を果たしながら関わっているのかを見ていきましょう。

他職種と連携し口腔や摂食状況の改善に取り組んだ実例

事例① 

認知症重度 93歳 女性 要介護5 娘と二人暮らし

ご本人は、骨粗しょう症で圧迫骨折を繰り返しADLが低下、歩行ができなくなりベッド上での生活となっています。本人からの発語はほぼなくなり、日常生活は全介助、今後口から食べられなくなっても胃ろうは造らず、在宅での看取りという意向が確認されているケースです。
ご本人の食事は、口を開け飲み込むまでに時間がかかり、娘さんにとって食事介護の負担が大きくなっていました。ご本人にとっても無理なく必要な栄養や水分を摂取するため、食事は高カロリーゼリー飲料などを中心とし、デイで週6日昼食介助・口腔ケアを受けています。
このケースでは医療・介護サービスの多くの職種が関わっていますが、口腔関連の部分にしぼって示したのが以下の図です。

調理、ゼリー食品等の購入、服薬介助、体調変化確認、保清(口周り、口腔内口腔ティッシュでの拭き取り、体位交換、離臥床)
訪問歯科(歯科医師、歯科衛生士、管理栄養士) 嚥下評価、適切な食形態の食事作り・購入できる食品の紹介、安全で取り組みやすい介助方法の指導、口腔状態チェック
訪問診療 歯科での栄養指導に基づき、必要な高カロリー栄養剤等の処方、誤嚥性肺炎兆候が出た際の早期対応。
訪問看護師 体調管理、状態観察、医療処置(点滴、吸引対応)、家族への対応方法の指導
言語聴覚士 嚥下訓練、口腔ケア、発生練習、状態確認、状態変化時の家族指導、各職種への情報提供
通所介護 必要な栄養・水分を摂るための食事・水分摂取介助、口腔ケア、状態変化時の情報提供
訪問介護 寝たきりにしないための離臥床の支援、必要時服薬介助、口腔ケア、娘の補助
訪問マッサージ 全身の筋緊張の緩和
福祉用具 適切な食事姿勢をとれるための車椅子や体位保持具等選定の助言。
ケアマネジャー 娘が直接専門職に聞けないことを確認したり、各専門職からの話をかみ砕いて娘に説明する、各職種間の連絡係(ICT連携ツールがあるとかなり連携が容易になる)

ケアマネジャーは家族と専門職との橋渡しや、ICT連携ツールを活用しながら各職種間での連絡係の役割を果たしています。

事例② 

脳梗塞後遺症 フレイル 79歳 男性 要介護2 妻が主介護者

ご本人は左半身麻痺、認知症と嚥下障害がありながらも、毎日散歩ができている状態でした。コロナウイルス感染流行期の外出制限により、急激にフレイルが進行し、体重が半年で13kgも減少してしまいました。その後2年かけて8㎏体重が回復したものの、転倒による大腿骨骨折で入院・手術し、再び体重が5㎏減少しました。

この事例の特徴として、利用者側の費用面や訪問対応の負担感が強く、歯科専門職の継続的な介入が難しかったケースとして紹介されています。現在デイサービスと福祉用具のみの利用となっていますが、その中での栄養・口腔管理の取り組みについてまとめたのが以下の図です。

毎日の食事作り、買い物、家事・介護全般。
妻の補助。得た知識の妻への伝達。状態確認。必要時医師等への連絡。
デイサービス ご本人に合う形態の食事の用意。介助方法の検討、提案等状態報告。
福祉用具 ご本人に合った用具の提案。
ケアマネジャーの行う内容
  • ケアマネジャーのモニタリング訪問時に、状態把握、誤嚥性肺炎予防に必要な情報提供。
  • 事前にデイサービスに問い合わせ、状態把握。必要時、内科医や歯科医とも相談して、有効な情報が提供できるようにする。
  • 専門医が訪問する際には、同席して、より有用な情報が家族に得られるよう、質問したりして情報を引き出す。
  • 妻が食事の用意、嚥下食作りをするため、妻が普段作ったり、用意できるよう、日頃の様子を聞き取り、ねぎらいながら、適切な方法に近づけるよう修正していく。
※ 上記は費用面や報恩対応の負担感から専門職の積極的な介入が難しい場合です。

このケースでは、ケアマネジャーが中心となってデイサービスや福祉用具、専門医と連携し必要な情報を引き出しています。そして、ご家族の負担に配慮し、ねぎらいながら情報提供やはたらきかけを行っている様子がわかるかと思います。
誤嚥性肺炎の予防に、多くの職種が関わりながら取り組んでいるケースと、家族を中心に無理せず対応しているケースという対照的な事例が挙げられていました。その中で、利用者や家族の意向・状況に寄り添いながら、様々な形で情報共有や調整を行うケアマネジャーの関わり方が見えたのではないでしょうか。
最後に、三井みい先生は誤嚥性肺炎の予防へのケアマネジャーの関わり方と今後の展望について、次のようにまとめられています。

ケアマネジャーの関わり方と展望

① アセスメント(状況把握)と情報収集:サービスからの情報を活用

2024年4月から、「短期入所」「訪問サービス」では口腔(こうくう)ケアの連携を強化する加算制度がスタートしました。また、「施設」や「通所サービス」でも、利用者の口腔機能を向上させるための加算が始まっています。
これにより、サービス事業者が利用者の口の状態をチェックし、歯科医やケアマネジャーに報告することが評価されるようになっています。このような情報を、ケアマネジャーが積極的に活かすことが重要です。

② 個別対応の検討とサービスの提案、理解の促進

ケアマネジャーは、集めた情報をもとに、利用者ごとの対応方法を考え、最適なサービスを提案することが求められます。また、家族やサービス事業者に対して、その重要性を理解してもらうための説明や啓発も必要です。

③ サービスの調整、多職種との情報共有、役割分担の調整

ケアマネジャーが多職種間で、相談・情報共有・調整などを行う際に、MCS(医療介護連携システム)などのICTツールを活用することも有効です。

ケアマネジャーの知識向上と新たな取り組み

誤嚥性肺炎予防に効果的に関わるためには、ケアマネジャー自身も知識や情報を積極的に学ぶことが大切です。最近、ケアマネジャーの法定研修に「誤嚥性肺炎予防のケアマネジメント」に関する項目が追加されるなど、こうした学びの必要性がますます重視されているといえます。

三井みい先生は、誤嚥性肺炎予防への取り組みとして「口腔ケアの重要性」と「一人ひとりの状況に応じた丁寧なアセスメント」を強調したうえで、「口腔ケアの目的をみんなで考え、実践できるチーム作りをすることが、ケアマネジャーの重要な役割だ」とまとめています。

菊谷先生と三井(みい)先生のトークセッション

菊谷先生と三井先生トークセッション

セミナー最後のトークセッションでは、同じ地域で在宅利用者の支援に取り組む歯科医の菊谷先生とケアマネジャーの三井みい先生が、日頃の支援やセミナーの事例を通じて考えられる課題や今後の情報共有・連携の在り方について意見を交換しました。

適切な支援のために歯科医が知りたい情報

菊谷先生は、「誤嚥性肺炎予防が我々(歯科医)に課せられた使命だと思っている。そのため、口腔状態、食事摂取状況、身体状況、疾患などの情報は一生懸命に集めています」と話します。しかし、誤嚥性肺炎予防の成果を左右する重要な要素にも関わらず、最も欠けている情報は「介護者の状況」であると指摘しました。

三井みい先生は、「まさにそうだと思います」と同意し、誤嚥性肺炎のリスクがある場合、本人のセルフケアだけでは予防が難しいため、介護者の状況が大きく影響することを強調しました。

つづいて菊谷先生は、歯科医が介護者の状況を把握しないまま安易に口腔ケアの指導を行うことが、介護者に負担をかけたり一方的な指示として受け取られたりするのではないかと疑問を投げかけました。

これに対し、三井みい先生は、「指示を出してくれる方がありがたい。『様子を見ましょう』と言われるよりは、『こうした方がいいですよ』という提案を受けて考えるのが我々(ケアマネジャー)の仕事です」と述べました。口腔ケアの方法や食事形態、とろみの必要性などについて、ケアマネジャーよりも歯科専門職からの説明が受け入れられやすい面もあると指摘しています。

菊谷先生は、それぞれの立場で得られる情報を共有しながら、本人や家族が受け入れやすい口腔ケアの方法を共に考えていける地域の仲間を作れることは、歯科医にとって幸せなことだと話しています。

在宅ケアにおける課題(介護者の負担感など)

菊谷先生は三井みい先生が紹介した二つ目の事例を引き合いに、利用者側の費用面での制約は理解しやすいが、訪問そのものに対する家族の負担感は歯科医師には推し量れないことがあると示唆しました。

三井みい先生によると、訪問を受け入れる際の心理的な負担は家庭によって異なり、過度な負担がかかると「訪問を減らしてほしい」と言われるケースもあるといいます。

これを受けて、菊谷先生は、「歯科医が医学的正しさを追求しすぎると、患者から『もう歯科はいいわ』と言われてしまうこともある」と、必要な治療が途切れてしまうことへの懸念を述べました。

その上で、訪問歯科医としては細くても関係を維持し、必要なタイミングで介入するためには、歯科と利用者・家族を繋いでくれるケアマネジャーの存在が非常に重要であると話しています。

通所サービスやショートステイで把握できる情報の重要性

菊谷先生は、利用者の日常的な状況を把握するために、通所サービスやショートステイでの観察と情報共有が非常に重要であると指摘しました。

これらのサービスでは、食事や口腔ケアの様子を複数回観察できるため、在宅での一回限りの観察よりも利用者の能力や状況をより正確に把握できます。また、体重の変化をデイサービスが記録することなどが役立つとも述べています。

菊谷先生は、これらのサービス提供者からの情報を歯科医師やケアマネジャーが共有することが重要であり、口腔連携強化加算はその期待に応えるものであると考えています。

一方、三井みい先生は、口腔ケアや加算をケアプランに位置づけていても、サービス事業所側の意識や理解がまだ不十分であると感じることもあると話しました。

菊谷先生は、在宅、歯科、サービス事業者の間で調整を行うケアマネジャーの大変さを理解しつつ、ケアマネジャーを中心に情報共有がうまくできると良いですねと期待を寄せました。

口腔内の状況把握に苦労しているケアマネジャーと、家族の介護負担や、日頃のADLの把握に不十分さを感じている歯科医師。お二人のトークセッションからは、それぞれの情報を共有し合い、互いの立場や役割を理解する重要性が浮かび上がったのではないでしょうか。

オーラルプラスのご紹介

最後に、今回のセミナーを主催したアサヒグループ食品株式会社の口腔ケアブランド「オーラルプラス」をご紹介します。

アサヒグループ食品は、「食べるをずっと楽しく。」を理念に、要介護高齢者の食・口まわりの問題に応える商品を取り揃えています。

その中でも要介護高齢者のデリケートなお口の中をやさしくケアする口腔ケア商品として「オーラルプラス」を展開しています。

オーラルプラス

今回ご紹介する、デリケートなお口をやさしくケアする口腔ケア商品「オーラルプラス」はお口の状態に合わせたラインアップで、口腔ケアに必要な3つのケア「歯みがき」「お口みがき」「保湿ケア」で揃えたケア用品です。

シリーズから、お口の汚れをやさしく拭き取る、口腔ケア用のウエットティシュ「口腔ケアウエッティー」をご紹介いたします。

口腔ウエッティ

「口腔ケアウエッティー」は、ミントの香味の「スッキリタイプ」と無香料の「マイルドタイプ」があり、ノンアルコールの低刺激タイプです。

拭き取りタイプなので、”うがい”ができない方や誤嚥しやすい方におすすめです。また水を使わないシンプルケアなので、ベッドサイドでのケアをはじめ、災害時のオーラルケアなど、いつでもどこでも手軽にお使いいただけます。

ヒアルロン酸・トレハロース・セラミド配合なので、お口の中の乾燥が気になる方にもおすすめです。

また、ボトルタイプ、横置きタイプ、持ち運びやすいポケットサイズの3つの容器形態があり、お好みやシーンに合わせてお選びいただけます。

ご紹介した「オーラルプラス」は、お近くのドラッグストアの介護用品売場、ネット通販などでお買い求めいただけます。

商品詳細や介護に関する情報は、是非アサヒのブランドサイトからご覧ください。

ブランドサイト内の「医療・介護専門職の皆様へ」のページでは、医療・介護に携わる方へのお役立ち情報を閲覧でき、「オーラルプラス」・OHATポケットシートのサンプルセットをお申し込みいただけます。

宜しければ、ご活用ください。

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