ケアマネのための実践ガイド:独居高齢者のゴミ出し支援と社会資源活用について その1

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在宅で一人暮らしをする高齢者のゴミ出し支援について、皆さんはどのように対応されていますか?特に介護保険のサービスだけでは対応できないケースでは、頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。地域によって自治体支援の有無が異なり、サービスが受けられない場合は解決策が見つからないこともありますよね。

この記事では、ケアマネジャーを対象に行ったゴミ出し問題への対応に関するアンケート結果と、インタビューから明らかになった社会資源構築のヒントについてお伝えします。今回の記事は2編に分けてお届けします。第1編では、アンケート結果から見えてきた共通の課題や対応策のヒントについてまとめました。第2編では、アンケートにご協力いただいた方々の中から行ったインタビューをもとに、実際に社会資源を活用してゴミ出し問題を解決した具体的な事例をご紹介します。

この記事が、皆さんの地域で社会資源を見つけ出し、有効活用するきっかけとなり、現場での支援のヒントになれば幸いです。ぜひ最後までお読みください!

>>第2編の記事はこちらから

ゴミ出し問題に介護保険外サービスを利用している割合とは?

今回、この記事を作成するにあたり、ケアマネドットコム会員のケアマネジャーさんに「ゴミ出しについてのアンケートを実施し、380名から回答いただきました。「独居でおひとりではゴミ出しができない場合にどのように対応していますか?」という質問に対しては、以下のような結果となりました。

アンケート結果:おひとりではゴミ出しができない場合にどのように対応していますか?

この結果から、おひとりでゴミ出しに行けないケースへの対応として、介護保険サービスのみで対応しているのは20%にとどまり、60%のケースで介護保険サービスと保険外サービスが併用されていることが分かりました。また、介護保険外サービスのみを利用しているという回答も10%あり、このことから、ゴミ出し支援の課題解決には介護保険外の社会資源をどれだけ活用できるかが重要なポイントになることがうかがえます。

さらに注目すべきは、「どちらでも対応できていない」との回答が10%あった点です。このような場合、利用者の方がどのようにゴミ出しを行っているのかも気になるところです。

それでは、アンケートで寄せられた「ゴミ出しに利用している介護保険外サービス」の具体的な内容について見ていきましょう。

ゴミ出しに利用している介護保険外サービス

ゴミ出しに利用している「介護保険外サービスの内容」と割合

ゴミ出しに

※複数の回答を含む自由回答の内容について、ケアマネドットコムの判断に基づき集計を実施

ゴミ出しに利用している介護保険外サービスについては、市町村などの自治体のサービスが半分以上を占め、その他は訪問介護の自費サービス、ボランティア、自治会などの近隣の支援、シルバー人材センターなどを利用している結果となりました。

次に、それぞれのサービスの内容や感じている課題についての回答を見てみます

自治体のサービス

サービス内容

  • 自宅前のポリバケツにゴミを入れておくと週1回収集してくれる。
  • 玄関の中まで取りに来てくれて同時に安否確認もしてくれる。
  • 安否確認を兼ねており、2回続けてゴミが出てなかったら家族等緊急連絡先へ電話をしてくれる

自治体のサービスは個人宅への個別収集サービスが中心でした。玄関先まで出しておくことが必要なケースや、玄関の中まで入り安否確認してくれるケースなど、地域によって内容の違いが見られました。

申込時に感じる課題

  • 条件が厳しく、ヘルパーを利用していないと利用できない。
  • あらかじめケアマネが立ち会っての面談が必要になっていること。

申請時に感じる課題としては、利用できる人の条件が決められていて必要な利用者すべてにはに対応できないこと、申請時に面談などの手続きが必要になるという回答がありました。

利用時に感じる課題

  • オートロックを導入しているマンションだと対応が難しい。
  • マンションや集合住宅で自宅前にゴミのポリバケツが置けない所だと収集してもらえない。
  • ゴミ回収の時間が厳しい地域があり、決められた時間にしか捨てることができないこと。
  • 行政によって行政サービスの内容が違う。安否確認しない行政もある。

利用時に感じる課題は、玄関先にゴミを出せる時間が決まっており、その時間内に対応することが難しいことや、ポリバケツなどの容器に入れることがルールとなっているが、集合住宅のように玄関先にバケツを置けない住宅事情で困っているという回答がありました。

訪問介護の自費サービス

サービス内容

  • 居室からゴミの集積場まで運ぶ
  • 自費サービスでごみの仕分けやゴミ出しをしてもらう

感じる課題

  • 訪問時間帯が重なる利用者が多く、ヘルパー自体が不足している
  • 自費の料金設定が高いのでゴミを出す回数を減らしている
  • 収集時間が早すぎて対応できるヘルパーがいない

こちらは、決められた時間に収集場所まで持って行ってもらうというサービスが主でした。課題としては料金が高い、決められた収集時間内に対応できるヘルパーさんが不足しているなどの回答がありました。

自治会、近隣住民、 ボランティアのサービス

サービス内容

  • 近隣の知人が週1回ごみステーションまで持って行ってくれる
  • 近隣住民と民生委員が協力して、独居世帯に限定して定額でのゴミ出し支援を行っている
  • 要介護2以上は行政、それ以外のゴミ出し困難な方について自治会が手伝っている

感じる課題

  • あくまでも善意であり、期間が未定
  • サービスが充足している地域と全くない地域の差が大きい
  • ボランティアさんも高齢者
  • 入退院の連絡は誰がするか等、ボランティアにどこまで責任を預けるかが難しい 

近隣の知人が手伝ってくれたり、自治会の支援を受けているという回答も見られました。行政の個別ゴミ出しサービス適用外の方について対応してくれる自治体があったり、住民による有償ボランティアサービスがある地域もありました。課題としては、善意でやっているので継続が不安定である、細かい連絡調整をする人がいないなどの回答が見られています。

その他

その他にはこのような回答も見られています。

  • 民間業者:週1回ゴミ袋1つを1回50円で出してくれる。(ゴミ袋にまとめるまでは本人)
  • 地域の小学校:朝、家の前に置いてあるごみをゴミ置き場まで運ぶ。

アンケート結果の中には、民間業者が安価でゴミ出しを支援している地域があるという興味深い事例も見られました。こうした取り組みが行政の補助を受けているのか、その仕組みにも関心が寄せられます。

また、地域の小学生が登校時間に合わせてゴミを捨てる支援を行っている事例も印象的でした。このような対応は小学校が関わる取り組みでもあるため、学校を含めた地域全体で話し合い、協力して実現しているのかもしれません。地域のつながりを活用したユニークな取り組みとして注目したい事例です。

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どちらでも対応できていないケースはどうしている?

今回のアンケートでさらに気になったのは、「どちらでも対応できていない」という回答が1割あった点です。これらのケースでは、どのようにゴミ出しが行われているのかが気になるところです。それでは、対応が難しい場合にどのような工夫や方法で支援が行われているのか、寄せられた回答を詳しく見ていきましょう。

  • 同居してない家族が持ち帰る
  • 訪問介護でのゴミ出しや社会福祉協議会のボランティア活動で対応できない場合はケアマネが預かり処分する時がある。
  • ヘルパー利用だが、ゴミ出しの時間に間に合わないことがあり、直接ごみ処理場に持っていってもらうこともある。

介護保険と保険外サービスのどれでも対応できていないというケースについては、同居していない家族が持ち帰る、シャドウワークでケアマネが対応している、ヘルパーが収集時間外にゴミ処理場まで持っていっている、などの回答も見られています。このようなケースにおいては、そのままにはできないため、誰かが無償ボランティアとして対応しているという実情が見えてきました。

アンケートで見えた「出せる時間」と「出せる場所」の工夫

以上の結果から、ご利用者さんのゴミ出しに関してはいろいろな困りごとを抱えているケアマネジャーさんが多いことが分かりました。今回のアンケートで明らかになった課題を踏まえ、どのような工夫ができるのかを考えてみましょう。

ゴミ出しに関する大きな課題は「出せる時間帯が限られている」ことに大きく関連していることがわかりました。限られた時間帯に集中した対応が必要なため、支援者を確保するのが難しいからです。また、時間帯の制約を緩和するためにゴミを容器に入れる工夫が行われているケースもありますが、環境や状況によってその容器の準備自体が難しいという課題も浮かび上がりました。

アンケートでは、こうした課題に対して以下のような対応が見られました。

「出せる時間」の工夫

  • 民生委員にお願いし、決められた時間外にゴミを出せるよう柔軟な対応をしてもらう。
  • ゴミステーションの鍵を閉めず、いつでもゴミを捨てられるようにする。
  • 高齢者世帯や老夫婦世帯について町内会長へ報告し、ヘルパーが前日夜にゴミを収集場所に出す許可を得る(ゴミ収集小屋などが設置されている場合に限る)。

こうした柔軟な対応により、ゴミ出しの課題を解決している事例が複数見られました。

「出せる場所」の工夫

アンケートの中では、介護が必要な方専用のゴミを出せる場所を設け対応している自治体の例も見られました

  • ヘルパー専用のゴミ出し場を設置し、時間や曜日を限定せずいつでもゴミを出せるようにする。

このように、時間や場所に柔軟性を持たせた対応が課題解決の一つとなっているようです。

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アンケートから見えてきた ケアマネジャーができること

いかがでしたでしょうか。今回のアンケート結果を通じて、ゴミ出しに関する特有の課題と、それに対するさまざまな対応策が見えてきたのではないかと思います。

では、ケアマネジャーとして利用者のために何ができるでしょうか?小さな一歩として、例えば、ゴミステーションの利用時間について地域に相談してみるのはいかがでしょうか。もちろん、環境によっては難しい場合もあるかもしれませんが、事情を丁寧に伝えることで、柔軟な対応が可能になるケースもあるかもしれません。

もし一人での対応が難しい場合は、同じ地域のケアマネジャーさん同士で協力したり、地域包括支援センターに相談し、地域ケア会議で議題にしてもらうという方法も考えられます。

みなさんの「小さな一歩」が、担当している利用者さんの生活を支えるだけでなく、地域の助け合い力を高め社会資源の構築につながっていく大きな力となることを願っています。