ケアマネとLIFEの関係上の注意点

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2021年度の介護報酬・基準改定をめぐる調査検討のための様式や要綱が示されました。ケアマネとして注目したいのは、居宅介護支援等における「LIFEの活用可能性」の検証に向けたモデル調査が含まれていることです。

今改定では、ケアマネにもLIFE関連の規定

まず、2021年度改定での居宅介護支援にかかる「科学的介護の推進」の規定を再確認しましょう。運営基準で加えられた条項は、以下のとおり。「指定居宅介護支援を提供するにあたっては、法第118条の2第1項に規定する介護保険等関連情報、その他必要な情報を活用し、適切かつ有効に行なうように努めなければならない」というものです。

上記の介護保険法第118条の2第1項では、2020年の法改正で、新たに「要介護者等の心身の状況等」にかかる事項(情報)プラスされました。言うまでもなく、これがLIFEに提供される情報ということになります。

では、そうした情報を「活用」し、居宅介護支援を「適切かつ有効に行なう」とは、どういうことでしょうか。解釈基準では、以下のように示されています。それは、LIFE等の情報を活用し、「事業所単位でPDCAサイクルを構築・推進することにより、提供するサービスの質の向上」に努めることです。

2024年度には特定事業所加算等の要件に?

たとえば、利用者を担当している通所介護や通所リハビリ事業所の中で、科学的介護推進体制加算などLIFE活用を要件とした加算を算定しているケースがあるとします。

その算定に際して、LIFEに提供している利用者データやフィードバック票のデータをケアマネが入手します。それらのデータをモニタリングに反映させて、ケアプランの見直しに活かすといった実務が想定されます。

ちなみに、今回の改定基準では「努める」という努力義務の規定にとどまっています。ただし、いずれは「(1)(経過措置期間を設けたうえで)義務化される」あるいは「②何らかの加算要件(例.特定事業所加算など)に加えられる」ことが予想されます。

その時期ですが、今回の調査・研究の対象となったことにより、2024年度からの適用も視野に入ったといえます。その場合、(1)は(経過措置が設けられたとしても)ケアマネ不足という状況も鑑みれば、遵守のハードルはかなり高くなります。恐らくは「(2)から」という可能性が高いのではないでしょうか。

もっとも、仮に基本報酬を下げ、特定事業所加算でインセンティブをつけるという流れになれば、実質的な「基準化」に近くなることも考えられます。加えて、厚労省は居宅介護支援事業者とサービス提供事業者との間の「データ連携事業」を強く進めようとしています。ここにLIFEデータが絡んでくれば、ケアマネジメントにおけるLIFE活用にかかる環境面の下地も整うことになります。

利用者との合意形成に影響をおよぼさないか

しかし、ケアマネ側が実際に取り組んでいくうえでハードルは決して低くありません。それは、先に述べた「ケアマネ不足」といった状況だけでなく、ケアマネジメントの過程において、「利用者の人格を尊重したうえでの合意形成」が常に土台にあるからです。

たとえば、LIFEデータにもとづき、ケアマネジメントにおいてPDCAサイクルを機能させるとします。その機能上では、常に利用者との合意が必要です。利用者との合意なくしてケアプランの見直しは図れないからです。

となれば、利用者の生活機能上のどの部分が落ちているのかという「現実」について、そのつど利用者と再確認することが必要になります。その場合、「利用者の人格の尊重」という原則を順守することが欠かせません。

「ここまでADLが悪化している」といった「現実」を利用者に突きつけるだけでは、介護保険法上のケアマネの責務(利用者の人格の尊重)に反する可能性が出てくるからです。

ケアマネのLIFE活用を議論するのなら…

「その点は、他のサービス提供者も同じ」という見方もあるでしょう。しかし、先の「利用者の人格尊重」という介護保険法上の規定が、特定の職種にも定められているのはケアマネだけです。他のサービスでは事業者の順守規定のみですが、ケアマネの場合、居宅介護支援事業者とのダブルで定められています。

それはなぜでしょうか。たとえばチームケアにおいて、特定のサービス提供者の「利用者の人格」への配慮が足らず、「現実」を突き付ける(「〇ヵ月前と比較して状態が落ちている」など)言動におよんだとします。言い方等にもよりますが、利用者や家族の中には「自分たちの努力が足りないから?」といった受け止め方をする人もいるでしょう。自立支援型介護では、付きまといがちなリスクです。

こうした状況下で、利用者・家族の人格およびチーム間の信頼が損なわれないようにカバーしながら、利用者の意欲向上を支えていく役割はケアマネしかできません。その点で、ケアマネは「LIFE活用の推進」といった大きな流れから、一歩外に出て「第三者的な立場に立つ」ことも重要になるわけです。

これまでの介護保険の流れを見る限り、「自立支援の強化」に比べて、「利用者の尊厳保持」という法第一条の理念をめぐる議論がどうしても後付けになりがちです。そうした現実があるからこそ、ケアマネの立ち位置を左右する実務の改定には、特別な慎重さが必要である──これを議論の前提としたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。