求められる、介護側のオンライン対応評価

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厚労省が、「オンライン服薬指導」にかかる施行規則の一部改正案を示し、パブリックコメントを募集しています。対面による服薬指導を実施していないケースでも、条件付きでオンラインによる指導を認めることなどが中心です。また、新たに「介護施設等の居住者・入所者」へのオンライン服薬指導を認め、その際の留意事項なども示されました。

介護施設等でのオンライン服薬指導の見直し

上記の「介護施設等の居住者・入所者」へのオンライン服薬指導について、改めて留意事項を整理します。(1)あらかじめ患者の状態を十分に把握したうえで、オンライン服薬指導の実施可否を判断すること。(2)患者のプライバシーが十分に配慮された環境で行なうこと。(3)患者の状態等により、介護者等を同席させること──という具合です。

(1)、(3)の判断については薬剤師が行ないますが、利用者の状態像などの把握については、施設側のスタッフとの情報・認識の共有が必要になることは言うまでもありません。また、(2)の環境整備を主に担うのは、施設側のスタッフということになるでしょう。さらに(3)の「介護者等の同席」でも、本人・家族の要望に応じて施設側スタッフの立ち会いケースが多くなることが予想されます。

こうした状況を考えると、オンラインによる服薬指導の緩和とともに、介護施設等の実務上の負担が増える可能性が高まります。服薬指導のみならず、オンラインによる診療や栄養指導なども、今後緩和が進むことが想定される中では同様のことが指摘されます。

オンラインの恒久化=サポートの恒久化?

現状で、オンラインによる服薬指導等は「特殊な事情下のケースに限られる」という見方もあるかもしれません。しかし、国は新型コロナ感染症対策を目的としつつ、今後もさらなる緩和を図ろうとしています。政府の規制改革推進会議でも「オンラインによる診療・服薬指導の恒久化」が強調されています。

この流れに沿えば、介護現場における利用者の「オンラインによる診療や服薬指導等」が、「原則」となる時代が訪れるのもそう遠くはないでしょう。そうなれば、「オンラインの恒久化」とともに「介護現場の新たな実務負担の恒久化」避けられなくなります。

となれば、利用者のオンラインサポートについて、実際にどれだけの実務負担が生じるのかを考える必要があります。と同時に、その負担を介護報酬上で評価するしくみも早急に求められることになるでしょう。

たとえば、(1)施設内に(プライバシーに配慮した)オンラインサポート用のスペースなどを設け、(2)職員が操作を補助し、(3)オンライン指導を行なう薬剤師等との情報共有を図って記録に残す──こうした実務に対して、オンラインサポート加算のようなしくみを考えていくことも必要ではないでしょうか。

サ担会議オンライン化も当たり前の時代に!?

こうした実務への評価については、居宅系でも同様です。特にケアマネの場合、今改定で(本人・家族の了解を得たうえで)サ担会議のオンライン開催が可能となりました。まだ一般的ではないとはいえ、将来的に「原則」化される可能性もないとはいえません。

その背景として、感染対策の観点もさることながら、連携する医療職(医師のほか、今後連携機会が増える薬剤師や管理栄養士なども含む)側の業務風土に合わせなければならない状況もあるからです。医療系職種の対人実務のオンライン化と、在宅療養の限界点を高めるための在宅医療系サービスとの連携強化が同時に進む中、「サ担会議のオンライン開催の原則化」という方向での制度改正を内閣府などが主導する可能性は十分にあります。

仮にそうなったとして、利用者側のデジタル等の対応格差の解消はなかなか追いつかないのが現実です。利用者の家族によるサポートが得られない場合、当然、ケアマネがオンラインサポートに入るというケースも一般化することは避けられません。「サポートの一般化」が想定されるなら、そこに報酬上の評価をあてることは議論されてしかるべきです。

次の改定に向けサポート実態の早急な把握を

政府は今、デジタル化社会の構築・進展に向けた法改正や規制改革を多方面で進めようとしています。それが人々にとって住みやすい社会につながるのなら歓迎すべきですが、国民生活の実態をそこにフィットさせるうえで、当面は多くの溝も存在します。

その現場の溝に橋をかけるのは、結局「人」です。特にデジタル格差の大きい高齢者にとっては、その生活に密着するさまざまな介護系・福祉系職種が「橋渡し」役を中心的に担うケースがますます増えてくるでしょう。

総務省では、デジタル活用支援推進事業により、高齢者の集まる場(公民館など)での相談会の開催や相談員の派遣などに補助金を支給するモデル施策を実施しています。しかし、医療や介護という生命や暮らしに直結する現場でのサポートとなれば、やはり既存の制度の枠組みの中での整備も必要です。

2024年度の介護・診療報酬のダブル改定まで、間もなくあと2年となります。今から現場におけるオンラインサポートの実態を調査しつつ、そこにどのような実務がどの程度発生しているのかを把握すべきでしょう。介護現場の処遇改善も、そうした実務を加味したうえで議論していくことが求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。