介護休業等の取得率は5年で「後退」!? 取得に「つなぐ」ための新機能が問われる

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政府の全世代型社会保障構築会議が、これまでの議論の整理を行ないました。同会議では、「人への投資」という観点から「家庭における介護の負担軽減」をテーマの1つにかかげています。介護離職ゼロが目指されて久しい中、今後の施策に必要なのは何でしょうか。

ポイントとなる介護休業制度等、取得率は?

「介護者の負担軽減」については、今後の介護サービスの確保や認知症の人の家族への支援、ヤングケアラーへの対応などとともに、「介護休業制度等の介護離職を防ぐための制度のあり方」がかかげられています。

介護休業制度といえば、2017年に分割取得を可能とするなどの改正が行われたほか、今年4月から「有期雇用労働者の取得要件の緩和」も図られました。制度上では「使いやすくする方向」での取組みが、とりあえず拡充されてきたことになります。

では、介護休業等は実際にどこまで「活用」されているのでしょうか。会議で示された参考資料では、介護休業等制度の利用の有無についてのデータが上がっています。総務省の就業構造基本調査をもとにしたもので、先の大幅改正が行われた2017年の結果です。

それによれば、(役員を含む)雇用者全体で「介護をしている人」のうち、介護休業等(短時間勤務や介護休暇など含む)の利用割合は8.6%と1割に届いていません。非正規職員・従業員に至っては7.5%という数字です。

2012年との比較で「ほぼ半減」という衝撃

ちなみに、今から10年前の2012年に、やはり当時の就業構造基本調査をもとにまったく同じ分析をしたデータがあります。

それによれば、雇用者で「介護をしている人」のうち、介護休業等の利用者の割合は15.7%。非正規雇用の職員・従事者では、14.6%にのぼります。2012~2017年の5年間で、介護休業等の利用割合は「増える」どころか「ほぼ半減」していることになります。

2012年当時と比較して異なるのは、「介護をしている人」の数が約60万人増えていること。つまり、介護をしている家族のすそ野が広がっているわけで、介護休業等の活用の調整が追いつかない職場状況も同時に広がっていることも想定されます。しかしながら、それだけで利用割合が「ほぼ半減」という状況を説明するのは困難でしょう。

ちなみに、当データおける就業構造基本調査は5年ごとに実施されています。次の調査は今年2022年なので、2017年に見直された制度が浸透しているとすれば、少しは改善される可能性はあるかもしれません。とはいえ、先の5年間の比較から、「介護休業等の利用」に向けた壁がさらに高くなっているとすれば、介護休業制度等をはじめとする施策が「機能していない」と言わざるを得ないでしょう。

やはり2015年度改定の影響が大きい?

ここで、2012年から2017年の間に「何が行われたか」を振り返ります。

介護をめぐる大きな変化といえば、2014年の介護保険法改正と2015年度の介護報酬改定があります。前者は、たとえば一定以上所得者への2割負担導入や特養入所が原則として要介護3以上になったことなど。後者は、言うまでもなく過去2番目に大きな介護報酬の引下げ(▲2.27%)が行われたことです。

特に、後者の大幅な報酬引下げは、介護現場に大きな爪あとを残しました。サービス事業所・施設の収支差率は(一部を除いて)軒並み減少となり、特に居宅系では利用者の多い訪問介護や通所介護は、事業所数がその後に頭打ちや減少の傾向が認められます。

そうなると、どんなに介護休業等の利用促進を図ったところで、地域によって「つないでいくサービス」が限られる事態も生じかねません。サービス利用については、要介護者本人との相性などもあるので、選択肢のすそ野が狭まる中では「家族自身によるサポートの余裕」を残しておきたい心理が強まります。そうなると、介護休業等をどこで・どのように使えばいいかという思考のハードルが高まっている可能性があるわけです。

積極的な取得へつなげるために必要なこと

こうした状況を考えた場合、単に「介護休業等の活用の権利」などを拡充するだけでは、劇的に利用率を伸ばすことは難しいでしょう。この困難さが続けば、当然ながら介護離職を減らすことも困難となります。実際、2015年に政府が介護離職ゼロを打ち出した後も、状況はほとんど改善されていません。

となれば、今後の施策としては、(1)介護休業等を使いやすくするための職場でのマネジメント強化、(2)(1)のマネジメントに沿って介護サービスにつなぎやすくするだけの仕掛けを強力に進めることが不可欠です。

前者では、「仕事と介護の両立支援」に向けたケアマネジメントのあり方が問われていますが、居宅側のケアマネが担うだけでは限界があります。当然、企業側に産業ケアマネ等の雇用を義務づける(あるいは、産業ケアマネで構成する基幹センターを設ける)など、職場側のマネジメント強化策が求められます。

後者では、2015年度のマイナス分を埋め戻す報酬改定など、思い切った方策が必要でしょう。経済界としては「現役世代の保険料負担増」を嫌がるわけですが、実はそれ自体が「家族の介護負担増」という現役世代の重荷になっている──という発想転換が必要です。

いずれにしても、「新しい資本主義」の名に見合うだけの抜本策が打ち出せるか。これが「介護休業等の取得が5年で半減」という機能不全を回復させる唯一の道かもしれません。

【関連リンク】

全世代型社会保障会議が「議論の整理」 医療・介護で「ICT活用による人材配置の効率化」を明記|ケアマネタイムスbyケアマネドットコム

2017年 介護休業制度の利用の有無(PDF38ページ)|全世代型社会保障構築会議(第2回)基礎資料

2012年 介護休業利用の有無(PDF7ページ)|改正育児・介護休業法 参考資料集

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。