「間接業務=専門性が低い」ではない 介護助手の導入で注意したい認識

配膳中の介護職

介護人材の確保に向けて、厚労省が推進する方策の1つが「業務の明確化と役割分担」を進めたうえでの「介護助手の活用」です。介護保険部会でも、その推進がテーマとなる中で、「制度上でどのように位置づけられるのか」がにわかに焦点となってきました。

介護助手を制度上に位置づける流れが着々と

介護助手の導入に関しては、2018年度に介護現場革新会議が取りまとめた基本方針がターニングポイントとなっています。この方針内で、「業務の洗い出しを通じて、周辺(間接)業務を元気高齢者などに担ってもらう」といったマネジメントモデルが示されました。

2019年度には、「介護業務の機能分化」にかかるパイロット事業が行われ、三重県などが「介助助手」の導入効果を総括しています。

これを受けて、厚労省が示した「生産性向上ガイドライン」でも「業務の明確化と役割分担のあり方」を明記。2022年度には、「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」の実証テーマの1つとして「介護助手の活用」が位置づけられました。

この効果測定事業については、今年末から2023年前半にかけてデータ分析が行われ、実証結果が取りまとめられる予定です。これにより、2024年度改定に向けた介護給付費分科会に実証結果が提示されることが想定されます。ここで、「介護助手の活用」の制度上への反映が議論されるのは間違いないでしょう。

介護助手導入をICT導入と同列に置けるか

基準・報酬上への反映として考えられるのは、すでに進められている「ICT導入による人員基準や加算要件の緩和」に準じるという流れです。具体的には、現場における「業務の明確化と役割分担」というマネジメントの遂行を要件としたうえで、「介護助手」を一定以上配置した場合に、人員基準や何らかの加算要件(例.サービス提供体制強化加算など?)の緩和を図ることが考えられます。

こうした見直しについては、内閣府の規制改革推進会議の答申でも触れられています。対象は「介護付き有料老人ホーム(特定施設)」ですが、先進的な取組みを行なう施設において、「人員配置基準の特例的な柔軟化」にかかる検討を求めています。その「先進的な取組み」の例として、「センサー等のICT技術の最大活用」などのほか、「介護補助職員(介助助手)の活用」にも言及しています。

ただし、「介助助手の導入」をICT導入などと同列に置くことは問題があるでしょう。何より「介助助手」は「人」ですから、継続的かつ安定的な人件費の投入が求められます。ICT導入のように、設備面での初期投資が主コストとなるのとは勝手が異なるわけです。

「専門性の低い業務を切り離す」の誤り

ここで、「そもそも介護助手とはどういう立場の従事者を指すのか」を整理しておきましょう。2020年度の老健事業における「介護助手の定義」によれば、「施設と直接の雇用関係にある」とされています。同時に、有償ボランティアの職員や委託業者の職員は除かれることも明記されています。業務範囲が異なるとはいえ、「人件費コストを低く見積もれる」という前提から入ってしまうと、組織のチームマネジメントを揺るがしかねないわけです。

確かに、介護助手が担うのは、ベッドメイキングや清掃、配膳、送迎などの「周辺(間接)業務」とされています。しかし、いずれも利用者の生活の質に影響がおよぶという点では、「直接的なケア業務」と同列に考えなければなりません。たとえば、介助助手による「現場での気づき」もチームとして共有されるべき情報となるなど、そこには一定の専門性があることを考慮する必要があるでしょう。

以上の点を考えると、「介護助手の導入」を人員基準や加算要件の緩和へと拙速に結びつけるのは慎重さが求められます。大切なのは、「業務の明確化と役割分担」を「専門性の格差」へと安易に結び付けないことでしょう。

「従事者の負担」は、「異なる専門性を同時に担わされること」が要因であり、だからこそ「役割分担」を整理する必要があります。決して「専門性の低い業務を切り離す」ことではありません。この点を明確にしないと、チームケアにひびが入りかねないわけです。

介護助手の「専門性」に着目することが重要

そもそも、利用者の生活は連続した「線」や「面」で形成されています。そこにかかわるさまざまな支援業務を「区切る」のは、あくまで支援者側の都合に過ぎません。

その「支援者側の都合」を利用者に押し付けないためには、それぞれの支援者が常に「線」や「面」を意識して、連続性を持たせるための連携が不可欠です。それぞれの専門性が発揮される場面で生じた「気づき」を、別の支援職へとバトンタッチしていくしくみ──これをしっかり築く必要があるわけです。

このバトンタッチのしくみをおざなりにしたまま、業務の切り分けだけを進めても、長い目で見た場合に「利用者の自立支援や尊厳保持、さらには安全確保」に支障が生じる懸念が付きまといます。短期的に「従事者の負担が減った」という視点だけで評価することは、大きな危険をはらむでしょう。

たとえ介護助手でも、そこには一定の専門性が要求されます。その専門性に見合うだけの報酬をどう設定するべきか。こうした考え方を確かなものにしてこそ、「介護助手」による介護の質の底上げが実現できるはずです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。