
厚労省の「ケアマネジメントにかかる諸課題に関する検討会」が、11月7日に中間整理の素案(たたき台)を示しました。多様な課題が山積する中、今回は改めて「ケアマネの業務範囲」にスポットを当てます。中でも、業務範囲外だが「対応せざるを得ない」というケースをどう考えるかが問われています。
「たたき台」が示す業務範囲外への対応策
たたき台では、ケアマネが現に実施している業務を、(1)法定業務(利用者からの相談対応やケアプラン作成など)、(2)保険外サービスとして対応しうる業務(書類作成・発送、緊急搬送時の同乗など)、(3)他機関につなぐべき業務(ゴミ出し・買い物等の家事支援、預貯金の引き出しや振り込みなど)、(4)対応困難な業務(医療同意)と4つに整理しています。
このうち、特に(2)、(3)については、地域における役割分担を整理し、利用者・家族を含めた共通理解を促進したうえで、利用者への支援が途切れることのないような体制づくりが必要と述べています。今後は、これらの担い手の確保・育成や関係機関との役割分担のあり方を重点的に議論することになります。
ただし、こうした道筋で解決に向かうためには、課題ハードルの高さを改めて認識しなければなりません。たとえば、現実問題として担い手の確保・育成を従来以上に進めることができるのか、役割分担を机上で整理しても、本当にそれが機能するのかが問われます。
「業務範囲外」とは分かっていても…
今回の検討会で示されたデータの1つで注目されるのが、「業務範囲外と考えられる依頼に対応せざるを得なかった理由」です(「地域包括ケアシステムおけるケアマネジメントのあり方に関する調査研究事業」より)。それによれば、もっとも多い理由として「緊急性が高く、自事業所で対応せざるを得なかったため」が7割以上にのぼっています。
そうなると、「業務外である」ことは分かっていても、「やらざるを得ない状況」に迫られているケアマネが多いことになります。そうなると、地域で「こうしたケースは、この機関につなぐ」というフローを確立し、それを地域全体(利用者・家族も含む)に周知したとして、「やらざるを得ない状況に迫られる」という課題は解決するのかが問われます。
もちろん、「緊急性が高い」という状況は多様でしょう。「救急搬送への同乗」のようなケースもあれば、一方で、利用者が「今すぐにやってもらわないと大変なことになる」と訴えるなど、当事者に主観が入り込んでいる場合もあります。後者の場合は、「すぐに」という主観からの強要性が絡むことで、カスタマーハラスメントの問題にもつながります。
「緊急性」についての客観的な基準が必要に
この点を考えた場合、必要なのは、ケアマネとして「つなぐ時間があるかどうか」、「つなぐまでに時間がかかることで、利用者に重大な不利益が生じるかどうか」を客観的に判定することでしょう。この客観性が必要な背景には、仮に利用者や家族が「対応が遅れて重大な不利益を被った」と認識した場合、それによって「ケアマネの責任を問う」という事態が生じかねないという状況もあります。
恐らく、先のアンケート内の「緊急性が高い」という中には、上記のような「責任を問われるかもしれない」という心理的圧迫も含まれていると思われます。この不安を払しょくするには、行政として客観的な判定基準を詳細に定めることで、「ケアマネ(あるいは事業所)に責任が及ばない」という、免責の根拠を作っておかなければなりません。
その点では、たたき台で示している「担い手の確保・育成」や「地域での役割分担の明確化」などとともに、上記の「緊急時の判定基準と免責根拠」の整理を国や自治体の責務として位置づけるべきではないでしょうか。
「客観的な緊急性判定」がもたらすメリット
ちなみに、検討会では、「緊急時の対応」は切り離せないとしたうえで、業務範囲外の行為を「報酬で評価することも必要ではないか」という意見が出ています。たたき台では、この「報酬上の評価」には踏み込んでいませんが、「緊急性の客観的な判定」という議論がなされれば、報酬上の要件としても打ち出しやすくなるでしょう。このあたりも、解決策を「ケアマネにとって実効性がある」というものにするうえで、不可欠な議論と言えます。
また、「緊急性の客観的な判定基準」を形にすることには、以下のようなメリットもあります。それは、検討会でも問われている「緊急時の対応や情報共有を緊密に行える体制」を築くうえでも有効という点です。
たとえば、緊急時の連携体制というのは、時間との勝負になる点で、あらかじめ想定される状況を具体的にピックアップしたうえで、その1つ1つについての多機関間の連携フローを構築することが欠かせません。
その想定される状況について、「本当に緊急性が高いのか」が漠然としていると、体制づくりのための検討も焦点がぼやけがちです。その点でも、「緊急性」についての客観的な基準が定められるかどうかがカギとなります。
ケアマネの業務範囲外の受け皿づくりも大きな課題ではありますが、いざという時にそれが本当に機能するかどうかについては、「その場」に直面したケアマネの実感・実情にどれだけ寄り添えるかが問われます。今後の検討会でも、取り入れてほしい論点です。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。