2027年度の運営基準はどうなる? カスハラ対策や高年齢従事者配慮などの話

2027年度の介護報酬・基準改定に向け、今年中盤からの介護給付費分科会の議論に注目が集まります。改正介護保険法案等の審議はまだ先ですが、すでに労働関連改正法の施行が決まっている中、これを運営基準等に反映させる議論が先行するかもしれません。

10月施行のカスハラ防止法にまず注目

頭に入れたい法改正は、以下の4つです。

  • (1)労働施策総合推進法の改正により、事業主のハラスメント対策が強化されたこと。
  • (2)同じく労働施策総合推進法の改正で、治療と仕事の両立支援の推進に向けた措置が強化されたこと。
  • (3)女性活躍推進法の見直しによる事業主の義務づけが強化されたこと。
  • (4)労働安全衛生法の改正により、高年齢従事者の労災防止対策が強化されたこと──です。

(1)については、ご存じの通り、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)から従事者を守るための事業主による対策が義務化されます(本年10月施行)。これについて、厚労省からは指針案も示されています。

具体的には、事業主によるカスハラへの対応方針の明確化と従事者・顧客への周知、労働者からの相談に対応する体制整備、迅速かつ適切な事後対応などとなっています。

なお、セクシャルハラスメント(以下、セクハラ)防止に向けた事業主の雇用管理上の責務についてですが、従事者だけでなく求職者等に対する被害防止も対象となります。

「治療と仕事の両立」に向けた努力義務

(2)に関しては、2024年度改定で、「治療と仕事の両立ガイドライン」に沿った短時間勤務制度等を従事者が利用した場合に、常勤換算方法等における配慮措置が適用されています。ただし、これは事業者の責務ではありません。上記のガイドラインも法的根拠にもとづいたものではありませんでした。

これに対し、今回の法改正により上記のガイドラインが「法律にもとづく指針」に格上げされました。その指針により、事業主に対して、従事者の職場における治療と就業(仕事)の両立を促進するための措置が努力義務として規定されます(本年4月施行)。

具体的には、先のガイドライン(指針に格上げ)における短時間勤務等の整備のほか、従事者が「治療と仕事の両立」の申し出を円滑に行えるようなルールの策定や相談窓口の整備などが求められます。

あくまで努力義務ですが、後で述べるように従事者の年齢層が上がっている介護現場においては、がん等の通院治療を要するケースも今後はさらに増えていく可能性があります。その点では、雇用管理上の重要課題としてとらえておくことが重要になるでしょう。

高年齢従事者の労災防止などの法改正

次に(3)ですが、これは男女の従事者間の賃金差異や女性管理職比率の情報公開についてです。これまでは雇用する従事者が301人以上の事業者に義務づけられていましたが、これが101人以上へと拡大されます(本年4月施行。これまでも、男女別の育児休業取得率などの項目選択による公表義務はあり)。

(4)は、労働安全衛生法の改正によって高年齢者の労働災害防止の指針が整備され、そこで事業者が取り組みに努めるべき措置(努力義務。本年10月施行)が示されました。

具体的には、高年齢従事者の労働災害防止に向けた方針の表明、委員会等設置による調査審議、現場のリスクアセスメントの実施などです。アセスメントの結果を受けたうえでのリスク軽減措置なども示されています。

ちなみに、介護保険施設では、事故の発生防止等のための指針整備や委員会設置などが義務づけられています(未実施の場合の減算あり)。介護現場での利用者の事故と労働災害の根っこには重なる部分も多い点を考えると、この委員会の場を活用し、高年齢従事者の労働災害対策についても検討することの推奨などが運営基準で明記されるかもしれません。

「努力義務」規定であっても軽視は禁物

以上を整理すると、(1)および(3)で対象となる規模の事業者については「義務化」、(2)および(4)は「努力義務」となります。なお、義務はもちろん、努力義務であっても国会制定法にもとづく規定ですから、関連する各種省令もそれにもとづくことが必要となります。

つまり、2027年度の介護保険の運営基準に反映されることは確実と言えます。たとえば、(1)の義務規定について、パワハラ・セクハラ・カスハラという、あらゆるハラスメント対策の義務化が出揃ったことにより、報酬上では未対応の場合の減算規定などが設けられる可能性もあるかもしれません。

また、先に述べたように、介護分野の従事者の年齢層が上がっている中では、「努力義務」である(2)や(4)についての展開も注意が必要です。たとえば、介護現場向けの専用ガイドラインなどを設けたうえで、保険者に対して現場での活用要請を図ることも考えられます。

なお、注意したいのは、(1)~(4)のいずれも2027年度改定以前の施行時期となっている点です。その点では、介護給付費分科会を随時開催しつつ、運営基準に関してのみ前倒し改定が行われる可能性もあります。いずれにしても、各事業所・施設としては今から法改正を見込んだ組織体制のあり方などを見直しておく必要があるかもしれません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。