
寒さが和らぐと、訪問の場でも外出の話題が増えます。
「天気の良い日は、少し外に出てみませんか」と声をかけた経験がある方も多いのではないでしょうか。
一方で、話題が「散歩」から「買い物」までつながらないこともあります。買い物となると、転倒リスクや道の状況, 荷物の持ち運び, レジでの動作など, 気になる点が一気に増えます。モニタリングの時間は限られており、他にも確認事項が多い中で、同行・代行・サービス利用などを組み合わせながら、安全を優先して支援を組み立てる場面も少なくありません。
ここで押さえておきたいのは、散歩と買い物では、同じ外出でも負荷やハードルが大きく異なるという点です。
買い物は歩行に加えて荷物を持ちながらの移動やレジ動作が連続し、行きは問題なくても帰りに不安が強まることがあります。大切なのは、「危ないからやめる」と結論を急ぐ前に、どこが負担・不安になっているのかを把握し、調整できる部分があるかを整理することです。たとえば最初の一言は、「行きは大丈夫でも、帰りの方が不安になりますか?」からで構いません。
本記事では、買い物を諦める背景を「3つのハードル」に整理し、アセスメント・モニタリングで使える確認ポイントを提示します。あわせて、支援ツールの選択肢として、歩行車「カウサポ」もご紹介します。
- 買い物は「一度きちんと聞く価値がある」。心身の変化に気づく重要なサイン
- 利用者の行動の流れから見る「買い物の3つのハードル」
- ケアマネが確認する「買い物の3つの視点」
- 3つの視点に対応しやすい工夫 歩行車「カウサポ」を例に
- 次回のアセスメント・モニタリングで使える整理
- 参考文献
買い物は「一度きちんと聞く価値がある」。心身の変化に気づく重要なサイン

買い物は、介護予防の基本チェックリストにも含まれており、生活の変化を拾う入口として位置づけられています。一方で現場では、転倒リスクや道の状況が気になり、同行・代行など安全を優先した支援になりやすいテーマでもあります。
買い物は、移動に加えて「選ぶ」「決める」といった生活行為の要素を含みます。だからこそ、買い物の機会が保たれているかどうかは、生活機能や生活の質とも結びつきやすいと考えられます。
こうした側面が生活の質と関わる可能性について、通所リハ利用者を対象とした研究では、買い物に行っている人のほうが健康関連QOL(SF-8)の複数領域で高い値を示したと報告されています。下表はその一部を抜粋したものです。
| SF-8領域 | 買い物に行く(n=30) 平均 |
行かない(n=26) 平均 |
|---|---|---|
| 日常役割機能(身体) | 47.7 | 31.8 |
| 全体的健康感 | 52.1 | 45.8 |
| 活力 | 49.1 | 45.2 |
| 社会生活機能 | 51.5 | 42.4 |
| 日常役割機能(精神) | 49.9 | 44.1 |
| 身体的サマリースコア(PCS) | 45.8 | 37.4 |
※上表はSF-8平均値の抜粋です。出典:保健医療学雑誌/第11巻第2号(2020年)
「行くから元気、行かないから不健康」という単純な話ではありません。しかし、買い物に行く人ほど身体スコアが高い傾向にあるのは事実で、ご本人が行きたいと思っており、安全が確保できるのであればぜひ継続してほしいものの一つなのではないでしょうか。
大切なのは「なぜ行かないのか」という理由の読み取りです。アセスメントで背景にあるハードルを紐解き、可能性を探る。そのプロセスの中に、支援で解決できる「調整可能なハードル」のヒントが見つかります。

🔍隠れたハードルの紐解きは、この一言から。
「行ける・行けないは別として、『買い物に行けたら』と思うことはありますか」
利用者の行動の流れから見る「買い物の3つのハードル」
買い物は、家を出て戻るまでの間に環境・動作・荷物の条件が連続して変わります。行動を順を追って分解すると、「どこで不安や負担が増えるか」について、このような3つのハードルに分類できます。
環境と体力の変化
- 距離や坂道・段差に加え、筋力やバランスが
影響。 - 帰りは荷物で条件が
激変する。 - 「帰りが怖い」という不安が外出を控える理由になる。
店内の連続動作
- 立ち止まる・向きを変える等、複数の動作が連続する。
- レジ前後の「持ち上げ・袋詰め」で支えを失いやすい。
- 「買い物はしんどい」という記憶が残りやすい
ポイント。
用具ミスマッチ
- 店内の小回りと荷物量。
用具と場面が
噛み合わない。 - 不安定さが「転倒の不安」に直結。
- 心理的ハードルの解消が不可欠。
3つのハードルは、どれか一つだけが原因とは限らず、重なっていることも少なくありません。次のセクションでは、ここで整理したハードルを、ケアマネジャーがモニタリングで確認しやすい「3つの視点」に組み替えます。

ケアマネが確認する「買い物の3つの視点」
前章で整理した「3つのハードル」は、あくまで利用者側から見た「困りごと」の分類です。
これを実際の支援につなげるためには、ケアマネジャーが専門職の視点で「具体的なアセスメントの切り口(視点)」に変換する作業が必要です。
漠然と「買い物は無理」と捉えるのではなく、「どのプロセスの、何がネックなのか」を解像度高く捉えることで、はじめて「ここは道具で補える」「ここは人の手が必要」といった具体的な解決策(ケアプラン)が見えてきます。
環境と体力の変化
「行きは大丈夫でも、帰り(荷物が増えた後)のほうが不安になりますか?」
👉 もし「帰りが不安」という返答なら、それは「体力と環境のミスマッチ」が起きている
サインです。
- 往復距離と、途中で休める場所の有無
- 坂、段差、路面、横断など、ルートの環境条件
- 帰りに荷物が増えた後、ふらついて怖く感じないか
店内の連続動作
「レジ周りで、持ち上げや持ち替えが負担になる場面はありますか」
👉 「レジが大変」という声は、「動作の切り替え(“切れ目”)」で支えを失い、
不安定になっているサインかもしれません。
- 支払い前後で、カゴや荷物を置く場所が定まっているか
- 袋詰め後、両手が塞がってしまう場面がないか
- 荷物を持ったまま移動する際、支えが不安定になっていないか
- 「歩ける」けれどレジ周りが負担で避けたくなる形になっていないか
用具ミスマッチ
「押して歩く道具について、抵抗はありますか」
👉 抵抗感の背景には、「年寄りくさい」という心理や、「今の道具が店内で使いづらい」という
実用面のミスマッチが隠れていることがあります。
- 必要な支持量(杖/歩行器/歩行車)と、買い物場面の条件が合っているか
- 荷物を載せた時に不安定にならないか/店内で扱いにくくないか
- 見た目や操作感も含めて「使ってみてもよい」と思える条件があるか
この3つの視点で負担が増える場面が見えてくると、支援は「同行か代行か」だけではなく、「外出の負荷を軽減する用具を活用する」など状況に合わせて組み立てやすくなります。次章では、そうした場面で検討しやすい用具の工夫として、くらしサポート歩行車 スムーディ<買物用>カウサポ(以下、カウサポ)を例に紹介します。

3つの視点に対応しやすい工夫 歩行車「カウサポ」を例に
前章の3つの視点で負担が増える場面が見えてきたら、次は「どこをどう調整すれば負担を減らせるか」を具体化します。調整は、環境(ルートや休憩)、行動(買い方や動線)、支援体制(同行・頻度)だけでなく、用具の工夫によっても変わります。
ここでは、買い物場面に配慮した歩行車として「カウサポ(カウサポスリム)」を取り上げ、3つの視点に沿って整理します。
環境と体力の変化に対する工夫
屋外移動で不安が強まりやすいのは、段差や傾斜、路面条件が重なったときです。カウサポは、屋外移動の困りごとに配慮した歩行車として、段差の越えやすさや傾斜での直進のしやすさなど、屋外での移動を想定した工夫がされています。
- 段差対応:ティッピングレバーにより段差を越えやすい工夫
- 傾斜での直進性:傾斜でも直進しやすいことを意識した構造
- 旋回・取り回し:狭い場所やエレベーター内でも扱いやすさに配慮
※ティッピングレバー:足で踏んで前輪を持ち上げることで段差を越えやすくする機構
利用者の環境に合わせて、安定感のある「標準タイプ」と、狭い道に強い「スリムタイプ」の2つから選べます。
-
傾斜でも直進しやすい(歩行車が体から離れにくい)
-
狭い所で旋回しやすい(エレベーター内で便利)
-
段差を越えて持ち上げやすい(収納部の重さで前下がりになりにくい)

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座幅38cmでゆったり座れる
-
休憩しやすい座面・座奥行
狭いところ、混雑するところでもより快適に歩けるようになりました
店内の連続動作に対する工夫
買い物時の動作では、店内移動そのものよりも、レジ前後で「持ち上げ」「持ち替え」「袋詰め」などが連続し、手元の余裕が減る場面がハードルになりやすくなります。カウサポは、買い物カゴを載せて移動できる歩行車として、カゴの使いやすさに配慮した工夫があります。
-
買物モード:歩行モードから買物モードに切り替えやすい
- カゴ位置:レジ台同等の高さ(66cm)でカゴを載せやすく、スライド移動しやすい
- 不安定な運用を減らす:買物カゴが載せられないことで起こりやすい
「買物カートへの乗り換え」や「座面に無理に載せる」などの不便・不安定さを減らす設計
「標準タイプ」は店内カゴをそのまま載せられ、「スリムタイプ」はカゴを座面にも載せられるなど、体格に合わせた使いやすさがあります。
-
店内カゴを載せたまま、買い物しやすい設計
-
設置可能なカゴの底面サイズ 幅約27cm 奥行約45cm



座面を立てるだけで切り替え!
工具などは不要です。座面をパタッと立てるだけで、スーパーのカゴが載せられる状態に早変わりします。
“底面が広い収納部”が便利です!


-
荷物が収まりやすい(買い物中の荷物の置き場が定まりやすい)
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安定して運びやすい(座面に無理に載せる運用を避けやすい)
カゴが高いのでレジ台まわりもスムーズに


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カゴを載せやすい(低すぎず高すぎず、扱いやすい高さ)
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カゴに商品を入れやすい(手前側収納で財布や小物の出し入れもしやすい)
-
カゴ⇔レジ台の移動がしやすい(買い物カート同等の高さ・角度でスライドしやすい)
円背の方・小柄な方向けにカゴが座面にも設置可能に


用具ミスマッチに対する工夫
用具は支持量だけでなく、店内での扱いやすさや本人の受け止めによって継続のしやすさが
変わります。
カウサポには通常タイプに加えてスリムタイプがあり、体格や環境に合わせて選べます。
- スリムタイプ:脇をしめて持ちやすく、操作しやすい設計
- かご位置の選択:体の状態に合わせて置き方を選べる
- レジ袋用フック:レジ袋を掛けられる工夫 ※カウサポスリムのみ
-
道路のがたつきや傾斜などでも押す力が逃げにくくなり、より操作しやすくなりました
「安全だから」だけで用具を選ぶのではなく、本人が買い物の工程(選ぶ・決める)を担えるように、扱いやすさ・荷物の扱い・受け止めまで含めて条件を揃えると、同行の有無にかかわらず実行しやすい形に近づきます。

くらしサポート歩行車 スムーディ
<買物用>
くらしサポート歩行車 スムーディ
<買物用> スリム
次回のアセスメント・モニタリングで使える整理
ここまでで、買い物を諦めやすい背景を「3つのハードル」として整理し、ケアマネが確認しやすい「3つの視点」、さらに用具の工夫(カウサポを例に)まで見てきました。最後に、次回のアセスメントやモニタリングで実際に使える形に落とし込みます。
1. アセスメントで確認したいポイント(抜粋)
意向(まず確認)
- 「行ける・行けないは別として、買い物に行けたらと思うことはありますか」
- 「同行ならできそう、頻度なら調整できそう、といった形はありますか」
前向きなイメージを引き出す声かけ(例)
- 「お孫さんに好きなお菓子を買ってあげたら、喜びそうですね」
- 「最近は珍しい野菜も増えていますし、売り場を見て回るだけでも楽しめます」
- 「荷物を運べて、疲れたら座れる歩行車なら、買い物が少し楽になるかもしれません」
- 往復距離/途中で休める場所の有無
- 坂・段差・路面・横断歩道など、ルート条件
- 行きと帰りで不安が増える場面(荷物が増えた後)
- レジ周りでの持ち上げ・持ち替え・袋詰めの負担
- カゴや袋を「どこに置き、どう動かすか」が定まっているか
- 袋詰め後の移動で不安定になる“切れ目”がないか
- 必要な支持量(杖/歩行器/歩行車)と、買い物場面の条件が合っているか
- 荷物を載せた時に不安定にならないか
- 本人の受け止め(抵抗感、使いたいと思えるか)
声かけ例・確認ポイント一覧(PDF)
2. ケアプランの長期・短期目標の例
買い物は、移動だけでなく「選ぶ」「決める」「役割を持つ」工程を含む生活行為です。支援の形はひとりに限定せず、同行・頻度調整・買い方の工夫なども含めて、本人の希望と安全の両立を目指します。
長期目標の例
- 本人の希望に沿った形で、買い物(または買い物に準じる外出)を継続できる状態を目指す
- 安全を確保しながら、本人が「選ぶ・決める」工程を担える機会を保つ
短期目標の例
- 週1回、家族またはヘルパー同行で近隣店舗まで行き、本人が品物を選ぶ
- 往復の途中で休憩を挟み、帰りの荷物増でも不安が強まらない方法を試す
- レジ周りの持ち上げ・持ち替えが少ない動線(買い方)を一緒に確認する
3. モニタリングで押さえたい視点
モニタリングでは、実施の可否だけで評価しないことが重要です。負担が増えた場面を具体化できると、次の調整につながります。
- 行きと帰りの差:帰り(荷物が増えた後)で不安が増えた場面はあったか
- レジ周り:持ち上げ・持ち替え・袋詰めのどこが負担だったか
- 用具の適合:荷物を載せた時に不安定にならなかったか/本人の受け止めはどうか
- 同行の形:同行があることで「本人ができた工程」と「支援が必要だった工程」はどこか
買い物は「危険だからやめる」で終わらせるよりも、どこがハードルかを見立てることで、支援の選択肢を増やしやすい生活行為です。 次回のアセスメントやモニタリングでは、意向確認の一言から始め、負担が増える場面を少しずつ具体化していくことが調整につながります。
参考文献
- 渡辺 潤(2020)「通所リハ利用者の買い物と健康関連QOL(SF-8)」保健医療学雑誌 11巻2号,
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jalliedhealthsci/11/2/11_128/_pdf/-char/ja