「ケアマネ不在」がさらに進めば、 「公務員ケアマネ」確保の議論も浮上?

ケアマネ不足が加速する中、「担当できるケアマネがいない」など、いわゆる「ケアマネ難民」も顕在化しつつあります。長年の国の不作為がもたらした深刻な事態下で、どのような施策が求められるでしょうか。

現場ヒアリングにより改めて浮かぶ深刻事態

今年3月の「居宅介護支援事業所における業務実態等に関する調査研究」の報告書は、ケアマネジメント現場の深刻な実態を浮き彫りにしました。特に、すべてのケアマネにとって「わが事」と受け止めざるを得ないのが、現場から得られたヒアリングの内容でしょう。

たとえば、ケアマネ不足によって居宅介護支援事業所での利用者受入れが飽和状態である状況。年末などは「ケアマネ難民」状態で、包括や他町からの援助も要請した例。求人を出しても新規採用は難しく、ケアマネを目指す人だけでなく、指導できる人材も少なくなっている…など(内容について要約あり)。

こうした厳しさは、地域事情によって差はあるでしょう。しかし。社会保険である介護保険給付は全国一律で保障されるべきことを考えれば、一部でも「ケアマネ難民」のような状態が生じているのは、国の施策上の失態であることを直視しなければなりません。

ケアマネ不足に窮する自治体からの緩和要望

この困難状況を長く放置すれば、被保険者のケアマネジメントを享受する権利は大きく損なわれます。保険者である市町村としては、応急的であれ、何とかケアマネジメントを行き渡らせる方策を模索するでしょう。

たとえば、今年の規制改革推進会議では、ケアマネ確保が特に困難な離島の自治体から「簡易なケアプランの導入」や「ケアプラン作成可能な職種の拡大」などの提案がなされています。あくまで地域の特殊事情を考慮した提案ですが、多かれ少なかれ「ケアマネ不足」の状況にある自治体の中には、同様の緩和策を訴えるケースも増えていきそうです。

一方、本ニュースにもあるように、介護人材政策研究会が「訪問介護+通所介護」の複合型サービスの創設を求めました。やはり地域事情によって介護資源の減少が深刻であることを見すえた施策提案です。気になるのは、仮にこうしたサービスの複合化が実現された場合のケアマネジメントのあり方です。

ケアマネジメントを居宅ケアマネから分離?

複合型ではありませんが、在宅の利用者を対象に包括的なサービスを提供するものとして小規模多機能型があります。そのケアマネジメントは、サービスを提供する事業所所属のケアマネを中心として、その事業所内で展開されます。介護保険施設や介護付き有料ホーム、認知症GHと原則的には同じです。

また、同じ地域密着型である定期巡回・随時対応型では、ケアマネジメントを主導するのは居宅ケアマネですが、随時対応などのケースでは担当者からケアマネに事後報告がなされます、サービス調整にサービス提供側が深くかかわることにより、ケアプラン見直しなどの発案機会も増えることになります。

ちなみに、2024年度改定では、居宅ケアマネによるモニタリングについて、2ヵ月に1回オンラインでの実施が可能となりました。その際には、サービス提供事業者との連携による情報収集も実務に組み込まれています。

これらサービス提供側の関与が深くなる中、ケアマネジメントのあり方が、小規模多機能型(ケアマネジメント全般をサービス提供側が担う)のような方向へ歩み出す素地もうかがえます。こうした流れの中で、新たな複合型サービスが誕生した場合、「ケアマネジメント機能もその事業所内に包含する」という方策が浮上する可能性もあるでしょう。

限られたケアマネ人材を管理・監督役に集中

ケアマネ不足の流れが押しとどめられず、有効な施策が滞るようなら、上記のような議論が本格化するかもしれません。そうなると、「そもそもケアマネジメントは誰が担うのか」という職域に関する議論にもつながります。

これは、居宅のケアマネにとって大きな岐路となりかねません。もちろん、居宅ケアマネの関与がなし崩し的に狭まれば、「ケアマネジメントの質の低下」や「利用者の意向を尊重した公正中立なサービスの提供困難」といった懸念も浮上することになるでしょう。

しかし、ケアマネ不足がさらに加速すると、「背に腹は代えられない」といった論も高まることが予想されます。「だからこそ、ケアマネの処遇改善が急務」というのは、もちろん正論です。しかし、国がどこまで本腰を入れるのか。施策効果が行き渡るまでに間に合うのか──というジレンマも付きまといます。

そこで、処遇改善と同時に描きたいビジョンが、地域の実情に応じた「ケアマネの公務員登用」です。ケアマネジメントがサービス提供側に移る流れが生じているなら、ケアマネを公務員化したうえで、適正化に向けた管理・監督に職責を集中させるわけです。

本来なら包括の役割かもしれません。しかし、包括業務も膨大な中、公務として携わるケアマネの育成拡充も議論されるべきではないでしょうか。その場合、地域のケアマネジメントを担う役割を安定的に果たすため、正規採用が前提です。人件費は、国が新たな交付金を創設してまかなう方法も考えられます。

現実性に疑問符がつく案かもしれませんが、そこまで追い詰められているのが、今の介護保険。その逆転に向け、ケアマネという職種を根本から再生させる踏み込みも必要です。

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◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。