排泄予測支援機器の留意事項で気になる 「排泄誘導の介助者」があいまいなこと

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特定福祉用具販売の給付対象に「排泄予測支援機器」が新たに加わりました。2022年3月31日には、この新たな給付についての詳細な留意事項や疑義解釈も示されています。これまでの給付対象用具にはない「予測」という機能をめぐり、現場での運用やこれからの福祉用具のあり方はどうなっていくでしょうか。

新機器の定義や給付対象について再確認

今回給付対象となった「排泄予測支援機器」について、定義上のポイントを整理します。

(1) 利用者が「常時」装着していること

(2) 膀胱内の尿量を「推定」すること

(3) (2)の尿量が一定に達した際に、排尿の機会を「自動で通知」すること

(4) (3)の「通知」は、「要介護者本人」または「介護を行なう者」に対して行なわれること

(5) 専用ジェルなど「装着のつど消費するもの」、専用シート等の「関連商品」は対象外 

一方「給付対象」ですが、留意事項によれば、以下のすべてを満たすことが必要です。

(a) トイレでの自立した排尿が困難となっている、居宅の要介護者であること

(b) (a)の「困難」というのは、要介護者の運動動作が低下している、排尿のタイミングが不明である、本人が排尿タイミングを伝えることができないケース等を指す

(c) 排尿機会の予測が可能となることで、本人の移動や介助者の誘導によって失禁を回避し、「トイレ」で排尿することが見込めること

「排泄の自立が期待できること」が前提に

上記の「対象者」で重要なのは、予測機器を利用することにより、「失禁を回避し、トイレで排尿することが見込める」というケースを対象としていることです。つまり、「トイレでの自立した排泄が期待できること」を前提とした給付となっているわけです。

したがって、疑義解釈では「常時失禁の状態の者で、おむつの交換時期等を把握するため」の使用について「適切ではない」としています。機器本体の機能は「予測」と「通知」ですが、その活用に向けた「行為」や「ケア(誘導)」の部分が問われることになります。

もちろん、他の福祉機器でも、ケアプランや福祉用具サービス計画を通じて、自立支援のための適切な使用がなされているかについてもモニタリングによる確認は行われます。ただし、この排泄予測支援機器では、本体機能が直接的にはかかわらない部分での「行為」や「ケア」が視野に入るわけで、自立支援に向けた適切な使い方をチェックしていくことには限界が出てくるかもしれません。

「家族」による誘導に限界が生じた場合は?

その点で、もっとも憂慮されるのは、「誘導」を家族介護者が担うケースです(必要に応じて市町村への提出が求められる確認調書では、「トイレへの主な介助者」を記す欄もあります)。仮に家族とヘルパーの時間帯等による分担を行なったとしても、家族介助者も高齢化が進む中、体力的に「誘導に限界が生じる場面」が出てくることも考えられます。

そうなった時、なし崩し的に「おむつ交換時期の把握」のための利用になってしまうケースが生じないとも限りません。家族としては、費用負担増を避けたい心理から訪問介護の利用回数の増加や定期巡回随時対応型への切り替えを望まないことも考えられます。当然、「使用目的が変わったこと」をケアマネや福祉用具専門相談員にも告げないまま、厚労省が想定する「使い方」から離れてしまうケースも頻発しかねないわけです。

仮にそうした事態が浮上すれば、「ケアマネや福祉用具専門相談員によるモニタリングの質」を問う声が上がるかもしれません。しかし、ここで問題なのは、「自立支援」を強くうたいつつ「誰が誘導を担うのか」をあいまいにしている点にあるのではないでしょうか。

給付サービスによる誘導が明記されない理由

たとえば、先の(4)の「介護を行なう者」や(c)の「誘導を行なう介助者」を具体的に記していない点です。一方で、疑義解釈(Q2)では、「独居」のケースでの「介助者の促し」を想定していない感があります。そうなると、やはり「介助者」は「家族」を前提としている可能性は高いと言えるでしょう。

そうなれば、上記で述べた「誘導に限界が生じること」は当然起こりえます。これを避けるには、留意事項で「訪問介護や定期巡回随時対応型等のサービスの適切な利用」の明記が必要です。そのうえで、そうしたサービスにおける「機器からの通知を受ける際の留意点」や「通知を受けてからの対応」まで詳細に記すことが求められるはず。これなくして「家族による誘導」を前提とした予測機器の活用を提案したりするのは、ケアマネ等としてはどうしても逡巡してしまいがちです。

こうした点を考えれば、今回のような居宅での「予測」系機器は、残念ながら普及は難しいのではないでしょうか。もっとも、深読みをすれば、厚労省としては「その先」を見すえている節もあります。「その先」とは、こうした「予測」系や「センサー」系の機器を居宅に導入する流れを作り、施設・居住系以外での自立支援の効率化を目指すことです。

今回、あえて介助者の範囲をあいまいにしたのは、「本人や家族の力(さらには、総合事業などの給付外サービスの活用)で、どこまで居宅における自立支援が期待できるか」という限界点を探っているのかもしれません。勘繰り過ぎかもしれませんが、何となくこれからの介護保険の行方が見え隠れします。

【関連リンク】
厚労省通知vol.1059について(その1)|ケアマネタイムスbyケアマネドットコム
厚労省通知vol.1059について(その2)|ケアマネタイムスbyケアマネドットコム

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。