今度こそどうなる⁉ 利用者負担導入 次期改正に向けた議論の流れを展望

財務省が示す2025年度予算のポイントで、介護保険に関する改革の1つとして、再び「ケアマネジメントに関する給付のあり方」が示されました。何期にもわたって論点に浮上しては見送られてきたテーマですが、2027年度の制度見直しではどうなっていくでしょうか。

「現役世代の負担を増やさない」という論拠

2024年11月に示された財務省審議会の建議では、ケアマネジメントへの利用者負担の導入について、その論拠を2つ示しています。

1つは、現役世代(第2号保険料)の保険料が上昇する中で、「世代間の公平性を保つ」という考え方です。ご存じのとおり、介護保険の財源構成のうち、第2号保険料の割合は27%で第1号保険料の25%を上回ります。

加えて、2024年度の1人あたり月額保険料は、第1号保険料が6,225円に対し、第2号保険料は6,276円(見込み額)。第2号は事業主負担分や公費分を含みますが、総額として後者が前者を上回っています。

将来的な現役世代の減少や物価上昇によって実質賃金がなかなか上がらない状況下、「世代間の公平性」がますますクローズアップされるのは間違いありません。財源構成見直しの議論も高まりがちですが、政府内では介護保険の利用者負担を増やすという論調が中心です。そこに、「ケアマネジメントへの利用者負担導入」が入り込みやすくなるわけです。

「利用者のチェック機能強化」という論拠も

財務省のもう1つの論拠が、「ケアマネジメントについて利用者負担を取らない取扱いは、利用者側からケアマネの業務の質へのチェックが働きにくい」という指摘です。そのうえで、「利用者自身が自己負担を通じてケアプランの質に関心を持つしくみとした方が、サービスの質の向上につながる」としています。

ただし、この論調にはやや無理があります。自己負担が発生すれば、確かに「ケアプランの質」への関心は高まるかもしれません。しかし、利用者にとって「何をもってプランの質とするのか」という価値観は多様です。

利用者やその家族にとっての最大のニーズは、「目の前の困りごとの解決」です。その中には、自立支援・重度化防止や尊厳保持といった介護保険の理念に沿うものも多い一方、たとえば「目前の介護負担の軽減」があってこその尊厳保持という考え方もあるでしょう。
その場合、包括や市町村のフォローが乏しいと、利用者からの(介護保険やケアマネジメントの理念から外れた)過剰要求が増えるなど、業務の厳しさが募る恐れもあります。

「チェック機能強化論」にはプラスαが⁉

このあたりは、かねてから業界・職能団体から指摘の出ている課題であり、加えて「利用者負担が発生した場合の介護保険自体の利用控え(それによって重度化が進む)」への懸念も付きまといます。これらの指摘は、今後の介護保険部会でも再び浮上するでしょう。

一方で財務省は、サ高住等におけるケアプランの画一化などのデータをかかげ、「ケアマネジメントの公正中立性に対する懸念」を強調しています。その解決に向けた建議として、ケアマネジメントへの多様なチェック機能の強化(質を評価する手法やその指標を報酬に反映させるなど)を上げています。

つまり、包括的なチェック機能強化の1つのパーツとして「利用者によるチェック強化」を位置づけたことになります。大きなテーマの中に「ケアマネジメントへの利用者負担導入」を組み込むことで、「総論としては賛成」という流れを作り出し、これによって「利用者負担導入策」を押し切る──財務省としては、こうした見通しもあるのかもしれません。

今後浮上する可能性。「処遇改善の財源論」

以上の根拠をベースとしたうえで、もう1つ加わりそうなのが「ケアマネの処遇改善」というテーマです。要するに、処遇改善に向けた財源として「ケアマネジメントへの利用者負担」を打ち出すという考え方です。

内閣府も財務省も、ケアマネの処遇改善への考え方は示していません。ただし、厚労省側の検討会の中間整理で「処遇改善」が明記され、他産業や同業他職種との賃金格差が無視できない状況下では、政府として2027年度改定までには柱となる対応策をかかげる必要性に迫られることになるでしょう。

財務省側がそれに便乗する──というのは言い方が悪いですが、財源確保の条件として「ケアマネジメントへの利用者負担導入」を打ち出す可能性はかなり高いといえます。

A.現役世代の負担を増やさない、B.サ高住等におけるケアマネジメントの中立性を確保する、そしてC.「ケアマネの処遇改善」を実現する。この3本柱が揃った時、利用者負担導入に異論をとなえる業界・職能・当事者団体の間でも、それぞれのスタンスに微妙な変化が生じてくるかもしれません。

現場のケアマネとしては、どう考える?

重要になるのは、現場のケアマネの考え方です。たとえば、「自分たちの処遇改善のために、利用者負担導入は仕方ない」と考えるのか。あるいは「利用者負担導入の弊害は大きいゆえに、現役世代の負担増もやむを得ない」と考えるのか。さらには、「利用者負担は導入せず、介護保険の財源構成を変える(公費割合を増やす)」という流れを支持するのか。

今後は、地域の連絡会等でも、現場のケアマネおよび利用者へのアンケートなどを行なったり、意見交換会を開いたうえで、自分たちの地域の総意をまとめていくなどの活動がますます重要になりそうです。職能団体等を通じ、現場から自分たちの意志を国に示していく──次期制度改正では、今まで以上にそうしたうねりが重要になりそうです。

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◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。