特に深刻化するケアマネへのカスハラ。 根本解決に必要なのは、地域ぐるみの努力

日本介護支援専門員協会が、ケアマネへのカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)に関する実態調査の結果を公表しました。自由記述回答によるエピソード等も含め、深刻な実態が浮かび上がります。解決に向けて、どのようなしくみが必要なのかを考えます。

全労働者を通じ、もっとも深刻なケアマネ

今調査によれば、過去1年間にカスハラを受けたことが「ある」という割合は33.7%。これについて、調査報告では、厚労省の2023年度委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」との比較も示されました。

それによれば、「過去3年間」で「顧客等からの著しい迷惑行為を受けた(カスハラ)」労働者の割合は全体で10.8%。また、別調査においては、やはり「過去3年間」でカスハラを受けた「福祉系専門職」の割合は34.5%。

今調査における「過去1年間」という期間の短さを考慮すると、ケアマネがいかにカスハラに直面しやすい職種であるかが伺えます。

実際、「ケアマネはカスハラを受けやすい」という回答は44.0%で、「やや受けやすい」と合わせて85.4%にのぼります。その理由としては、「主な相談場所が利用者の自宅であるため、利用者やその家族が主導権を握っていたり、立場が上と感じやすい」という回答が、複数選択で57.7%、「1番の理由」でも32.8%でいずれもトップとなっています。

多くのケアマネが考える有効策は「契約解除」

これに対し、当のケアマネはどのような解決策が有効と考えているのでしょうか。

複数選択可での調査結果によれば、「契約書や重要事項説明書等に、カスハラがあった場合は契約を解除する旨を記載する」が54.8%ともっとも多くなっています。一定程度は進んでいる対応策の「事業所や法人に相談窓口や担当者を設置する」という回答も50.5%ありますが、それを上回る数字です。

「契約解除」の明確化などは、かなり踏み込んだ対策です。もっとも、事業所内相談等の効果を疑問視するケアマネも一定割合認められる中では、「そこまでしなければ、自分たちをカスハラから守れない」という切実な思いが背景にあることは言うまでもないでしょう。

ただし、この実現には、さまざまな土台つくりが必要です。というのは、「何をもってカスハラ(従事者の就業環境を害する行為)とするのか」について、きちんとした規定や判断機会がないと、事業者が「契約解除規定」を際限なく拡大する懸念もあるからです。

「契約解除」の強い手段には慎重さも必要

もちろん、何をもってカスハラとするのかについては、国も(条例制定などを行なう)自治体もガイドライン等を示しています。そこでは、顧客の要求の妥当性やその要求等の手段が社会通念上、相当の範囲であるかといった「線引き」の内容も示されています。

ただし、これらを介護保険法や関連省令等できちんと示さないと、たとえば以下のようなケースが紛れ込む恐れもあります。

それは、現在大きな課題となっている「囲い込み」等の問題です。住宅型有料ホーム等の併設事業所でケアプランを作成しているといったケースで、利用者が「このサービスは過剰ではないか」、「ケアプラン内容が一律では…」と訴えたとして、それがなかなか改善されない(聞き入れてくれない)とします。

そのため、何度か同じ訴えをする中で、その繰り返しをもって、「カスハラにもとづく契約解除」を警告するという具合です。併設事業所となれば、入居契約自体が「解除される」という流れが生じないとも限りません。

これを防ぐには、「カスハラ防止」を目的とした重要事項説明書であっても、「利用者の正当な権利まで侵害する恐れはないか」という点をきちんと精査できるしくみが必要です。

ケアマネ・事業者任せにしない前提が必要

そこまで慎重だと、カスハラは根絶できない。現場のケアマネは追い詰められているのだから、多少「見切り」でも強硬な手段は必要──と考える人もいるかもしれません。

確かに、現場ケアマネの深刻さを考えれば、強い措置も必要でしょう。しかし、強い措置には必ず副作用が付きまといます。これを放置すれば、ケアマネと良識ある利用者との間でも無用な分断を生む恐れもあります。

これを防ぐには、制度上の土台(政府が今国会の提出しているカスハラ防止の法案にもとづく具体的な規則など)や、自治体や包括による(事業者任せにしない)第三者の介入・支援のしくみを伴わせることが不可欠です。

たとえば、現場ケアマネからの相談を受けた自治体・包括の専門担当者が第三者の立場で調査を行ない、多機関・多職種による協議体等で「カスハラか否か」を認定する。それをもって「契約解除」の規定を発動するという具合です。客観的に見て、利用者に支援の継続を要する(カスハラの当事者は家族のみといった)ケースでは、自治体や包括が特例的に支援を受け継ぐしくみも必要でしょう。

そうなると、制度面での大幅な改定も必要になるかもしれません。しかし、そうした「地域全体の支え」を機能させ、現場のケアマネや個々の事業者のみが抱え込む状況を防ぐことは大前提のはず。それらを回避したまま、事業者任せの強硬手段だけを整えても、根本的な解決には至りません。国、自治体、事業者・利用者団体含め、幅広い関係者が実効性ある手段を地道に築く努力が求められます。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。