
外国人介護人材の受入れをめぐり、解決すべき課題はまだまだ山積しています。その様子を端的に示したのが、全国老人福祉施設協議会(老施協)の外国人介護人材対策部会が実施した2つの調査です。受入れにかかる新たなしくみ(育成就労制度)も間もなくスタートする中、押さえたいポイントを探ります。
受入れ意向の伸び悩みは何を意味するか?
老施協が公表した調査結果は、1つが「外国人介護人材に関する実態調査(調査は2024年11・12月)」、もう1つが「外国人介護人材定着度調査(調査は2025年1・2月)」です。
この2つのアンケートを掘り下げる前に、先に公表された介護労働実態調査のデータに着目しておきます。EPA(経済連携協定)以外での受入れが拡充してから8年あまりが経過していますが、「受入れを行なっていない」という事業所・施設は8割近くにおよびます。
気になるのは、すでに受け入れている事業所・施設で「積極的に受入れを拡大する」といった方針や、受入れていない事業所・施設で「(今後)受入れを検討してみたい」という意向に関し、いずれも頭打ち傾向が見られることです。今回の老施協の調査でも、「受け入れている」あるいは「検討中」という回答は対前年から微減の状況を示しています。
現場の人員不足が深刻な中、外国人人材の「受入れ」マインドそのものに変化はないかもしれません。ただし、「受入れ」が進む一方でさまざまな課題も明らかになってきた──その状況が反映されていると思われます。
受入れコストがもたらす二極化の構造
今調査に目を移します。外国人介護人材を受け入れている現場の「悩み」では、「経費(給与+α)全般が予想以上にかかる(51.1%)」、「帰国する際の長期休暇(46.9%)」、「日本語の習熟度が低い(45.8%)」が目立ちます。
いずれも採用と育成にかかるコストの問題と言えます。「帰国する際の長期休暇」についても、その際の代替人員の確保を想定した場合に、あらかじめ「人件費コスト」に一定の上乗せが求められることになります。
また、「日本語の習熟度の低さ」に対応するため、日常的な日本語学習の機会を設けるほか、「利用者ごと・介護の場面ごと」に「多言語」で注意点を促すアプリなども開発・普及が進んでいます。これらの整備も、外国人介護人材の「受入れ」数が増えれば、コストの膨らみが課題となってくるでしょう。
対する業界としては、物価上昇による各種運営コストの上昇、他業界との賃金格差を埋めるための遇改善加算を超えた「持ち出し」など、収支をめぐる厳しさが募っています。
資力のある大規模法人であれば、今後も受入れ拡大の方針は取れるかもしれません。しかし、中小規模法人等での受入れハードルは高く、二極化が進みつつあると言えます。
「住居支援」のコストも大きな課題の1つ
外国人介護人材の中長期的な育成・定着を目指すうえでは、生活支援にかかるコストも無視できません。老施協の今調査でも、「介護福祉士取得後、帰国せずに定着するための取組み」として、「日本人同等の待遇(給与額・キャリアパス等)(57.9%)」に次いで「日本の環境で生活できるような配慮(住まい等)(53.5%)」が目立っています。
この「住まい等」の支援(家賃や助成金等)については、「国や都道府県に対して求める支援」でも2位に上がっています。自由記述の回答でも、「住居等は、各自治体の協力等で空き家などを無料で貸してほしい」、「市営住宅等の利用を複数名で活用できるようにしてほしい」といった要望が見られます。
なお、自治体によっては、事業所・施設による外国人介護人材のための住居借り上げ等に対する補助を実施しています。こうした住居支援の取組みについては、今後も要望が高まっていくテーマの1つと言えるでしょう。
地域社会との交流や相互理解促進も重要に
こうした中での懸念材料は2つあります。
1つは、今調査の「外国人人材に関する悩みごと」の自由記述にもある「外国人にアパートは貸さないなどの地域の理解不足」など、住居支援と地域の受入れに関する課題です。
また、住居との関連で、「ごみ捨て等の生活のルールを教えるのが大変」といった回答も目立っています。きちんと教えれば多くはルールを守れるでしょうが、少数でも「ルール逸脱」があると、その事象がクローズアップされ地域の理解を遠ざける懸念もあります。
そうした点では、特に外国人の居住者が少ない地域において住民等との交流機会を積極的に設けつつ、相互理解を促進する方策も考えなければなりません。個々の事業所・施設任せではなく、自治体の関与も求められます。
もう1つの懸念は、住居関係の補助などは拠出が多くなりがちで、「それだけお金があるなら、日本人従事者の処遇改善にあてるべき」という声が高まる可能性です。拠出のあり方として本来は「別分野」ですが、「外国人優遇」などといったミスリードがなされると、建設性のない対立軸も形成されがちです。
冒頭で述べたように、2027年には技能実習制度の見直しにともなう「育成就労制度」がスタートします。転籍の自由度が増すほか、地域協議会の組織化等により地域の受入れ環境整備の促進が期待されています。そうした時代に、受入れる側の従事者や地域社会が相互理解の視点をどのように築けるか。難関を1つ1つ乗り越えていかなければなりません。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。