ケアマネ支援への「国の動き」が鈍すぎる⁉ ならば、「地方議会への請願」で大きな波を

今内閣の退陣により、次年度予算編成はともかく、想定される期中改定までの「つなぎ」施策の行方が見通せなくなりました。この状況は、処遇改善加算のない居宅介護支援にとって特に深刻です。ケアマネ不足が進行する中、現場として何をなすべきかを考えます。

ケアマネ支援に熱心な自治体も増えているが

依然として物価上昇や他産業との賃金格差の拡大が続く中、中小規模を中心とした居宅介護支援の運営コストは膨らみ続けています。仮に2026年度に期中改定が行われるとしても、来年4月までの約半年間をしのぐことができるのか。年明けに向けて、居宅介護支援の撤退・閉鎖も加速しかねません。

重要な介護資源が失われることに対し、当然ながら、各自治体も大きな危機感を抱いています。自治体としては、国が2024年度補正予算で追加した重点支援地方交付金などを活用しつつ、現場に対する多様な支援策を打ち出す動きが加速しています。今後は、一般財源による追加策を打ち出す自治体もさらに増えていくことが予想されます。

ただし、自治体によって財政状況はまちまちで、各種支援策についても地域ごとの格差が開く恐れがあります。たとえば、支援対象の「選択と集中」が行われがちで、そこに居宅介護支援への支援が含まれてくるかどうかについては、地方議会の動向や各首長の考え方に大きく左右されるでしょう。

地元の施策動向を議会の録画配信でチェック

こうした状況を考えたとき、現場としては、首長や地方議会を担う議員への請願等に際して、「ケアマネ支援の重要性」をいかにアピールできるかがカギとなってきます。

人口減少が進む地方では、どちらかというと「子育て世帯」への支援を最優先する傾向がありました。ただし、介護事業所の倒産・撤退が増加し始めた一昨年あたりから、「地域の介護事業支援」を重点公約として当選する議員も目立っています。また、介護基盤の強化に向けて従事者雇用を打ち出すことは、若い世代の人口流出を防ぐ施策とも両立させるというビジョンを描く議員もいます。

問題は、そうした議員が「ケアマネ支援」をどこまで重視するかという点です。たとえば、土地購入費や建設費の高い都市部では、施設・居住系より居宅介護資源の充実を最重要課題とし、居宅サービス利用に不可欠なケアマネの増員に力を入れる傾向があります。

では、自分たちの地元はどうなのか──この点については、自治体の予算内容や地方議会の審議状況(インターネットによる録画配信など)でチェックすることができます。議会録画のインターネット配信が未整備の自治体もありますが、コロナ禍以降は急速に進展し、2024年度時点で全国町村議会の約4割が実施しています(全国町村議会議長会の調査)。

ケアマネ支援に理解がある議員を探し「請願」

こうして、まず地元の最新動向を把握し、「この地域では、どこまでケアマネ関連施策を重視してるか(逆に、「どのあたりの認識が不足しているか」)」について、地域のケアマネ連絡会等で状況を整理します。

仮に国の事業枠を超える支援策が乏しい場合、先の連絡会等で具体的な要望をまとめ、「請願」として地方議会に提出することができます。この「請願」は、議会の各専門委員会で審査された後に本会議で採決されます。

この「請願」は憲法で定められた国民の権利です。ただし、必ず議員の紹介によって提出することが必要です(地方自治法第124条より)。自治体によって議員の紹介を必要としない「陳情」という方法もありますが、こちらは委員会審査のみとなるケースが多いので、施策への効果的な反映を目指すのであれば。「請願」という手段が望ましいでしょう。

上記のように「請願」には、議員の紹介が必要です。その点を考えたとき、地方議会の常任委員会(国の厚労委員会に該当する委員会などあります)のメンバーを調べ、その中で「ケアマネ支援」に理解があると思われるのはどの議員かをチェックします。

地方議員に現場を「見てもらう」ことも重要

もっとも、議員には他にも多くの請願が寄せられています。委員会に付託された後の熱心な対応を望むなら、日頃から目当ての議員の勉強会や各種会合に足を運んで意見を交わすなどの活動も必要です。関心を示してくれる議員であれば、連絡会等で実施する研修会、その他の会合に招くという方法もあります。

地方議員のSNSなどを見ると、介護の現場などを視察し、現場の従事者と懇談する様子をアップしているケースもあります。つまり、「実際に現場を見てほしい」といった要請を粘り強く行なうことで、議員としてもそれに応えてくれる可能性もあるでしょう。

ちなみに、「できれば請願は多数会派の議員に」と考えがちです。しかし、昨今は無党派から出馬し、党派にかかわらず施策ごとに立場を明確にする議員もいます。その点では、ケアマネ支援に関心を示す人なら、党派・会派にかかわらず、先のような研修会や現場視察に招く柔軟さも必要かもしれません。

なお、昨今はケアマネ経験者が地方議員に出馬するケースも見られるようになりました。今後も「国の動きが鈍い」という状況が続くことも想定される中、地方からケアマネの地位と権利の向上を訴える力を、議員養成という形で培っていくことも考えたいものです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。