これからの相談支援体制の難しさ。 包括とケアマネの「共倒れ」をどう防ぐ?

次の制度見直しにおいて、ケアマネの業務負担軽減は重要課題の1つです。一方、地域の高齢者の「困りごと」はますます多様化し、そのニーズ対応も緊急課題となっています。両者をどのように両立させるのか、そのための体制づくりはどうあるべきなのか。地域づくりの土台にもかかわる難しいテーマです。

ケアマネのシャドウワーク軽減は実現するか

昨年末の「ケアマネジメントにかかる諸課題検討会」の中間整理では、ご存じの通り、ケアマネのシャドウワークにかかる負担軽減策が示されています。1つの方策として、市町村が主体となった、多様な地域課題の解決に向けた協議体の設置などがあげられます。

このテーマを受け、社会保障審議会・介護保険部会でも、具体的な体制づくりが議論されています。地域課題の協議に関して「市町村が主体」とされてはいますが、実際に厚労省が描くのは、既存の地域ケア会議(個別会議&推進会議)の活用が中心となりそうです。

ただし、包括ごとに開催される個別会議で上がった具体的な課題について、市町村が主体となる推進会議で対応策を検討するという円滑な体制が築かれている例は決して多くありません。介護保険部会で上がったデータでも、上記の体制がしっかりと築かれているケースは3割に満たない状況です。

もともとの地域課題解決に向けた土台がぜい弱では、仮に地域ケア会議のしくみにテコ入れを行なうとしても、地域ごとの取組みの質を平準化することは簡単ではないでしょう。

包括の機能強化がさらに必要となる中で…

市町村も、地域によっては職員確保が難しい状況です。特に安定的な専門職の採用が進まず、一般職が異動を繰り返しつつ、「介護・福祉分野は初めて」という職員が地域ケア推進会議を手がけるケースも見られます。

そうした中で、ケアマネから上がる「シャドウワークに直結する地域課題」に対し、具体的な解決策を図るとなれば、どうしても各包括の機能強化を図らざるを得なくなります。

たとえば、総合相談支援によって地域課題を把握して必要な地域資源につなげるだけでなく、足りない資源を発見・開発すること。そして、すべての「困りごと」に対して伴走型で、確実に必要な資源へとつなげていくしくみを構築すること。こうした地域づくりにかかわる部分の比重も大きくなるわけです。

もちろん、市町村には生活支援コーディネーター等も配置されています。しかし、コーディネーター個人の力量に頼る状況が大きいと、各包括の3職種がどうしても「実働部隊」の重責を担わざるを得ません。

市町村から現場への「しわ寄せ」の流れ

加えて、厚労省は「身寄りのない高齢者」等にかかる課題対応に向け、包括的支援事業等の再編を図ろうとしています。これにより、総合相談支援の範囲も広がるとなれば、包括の負担はさらに高まる可能性があります。

市町村の体制がぜい弱なまま、このような負担が積み重なれば、包括がパンクする恐れ(最悪の場合、委託策法人が撤退するなど)も現実のものとなりかねません。

そこで提案されたのが、介護予防支援に加え、介護予防ケアマネジメントも居宅介護支援が直接手がけられるようにするしくみです。また、ケアマネのシャドウワークを軽減するとはいうものの、必要な資源整備に関してケアマネもかかわることが示唆されています。

ここまでの流れを整理すると、以下のようになります。
A.拡大する地域課題に市町村が対応しきれない
⇒B.その分を(「身寄りのない高齢者」など地域課題の拡大分も含めて)包括が担う
⇒C.拡大する包括業務のうち、一部を居宅介護支援に移す
⇒D.同時に、ケアマネと包括との協働範囲を増やす(包括の相談対応は広がっているので、ケアマネとの協働範囲は想定以上に拡大する)という具合です。

中央省庁から専門職の中長期的派遣も必要か

こうして見ると、上記の流れの「川下」にあたるケアマネの業務負担は、制度の見直し前より増えてしまう可能性があります。もちろん、介護予防ケアマネジメントを受ける場合の報酬や地域ケア会議への参画拡大にともなう補助金支給など、さまざまな財政的インセンティブを図ることになるでしょう。

しかし、そもそも居宅介護支援にしても、ケアマネ不足がじわじわと拡大し、事業所数も減少傾向にあります。小規模事業所の統合というケースもありますが、土台のぜい弱な市町村から居宅介護支援が「離れる」という流れが強まれば、結局はケアマネの充足率に関して地域の偏りは強まりかねません。

こうした危機を乗り越えるには、やはりそもそもの市町村の土台を強化する他はありません。今回の介護保険部会では、地域の取組みの好事例がいくつか示されていますが、2006年度に包括が誕生して以来、先進的かつ地道な取組みを続けてきた地域です。

つまり、建て直しには、それだけの時間(約20年)を要するわけです。その時間を埋めるには、中央省庁で専門職を雇い、各地域に中長期にわたって派遣しつつ伴走的に地域づくりを手がけることも必要でしょう(もちろん、働き方改革とのバランスは必要ですが…)。

いずれにしても、先のA.⇒D.の流れだけを安易に加速させることは、多様な支援機関の「共倒れ」を助長しかねません。国と業界・職能団体の知恵の結集が求められます。

【関連リンク】

ケアマネらのシャドウワーク解消、包括の役割を明確化 厚労省 地域課題への対応力強化へ体制づくり | ニュースコメント | ケアマネドットコム

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)

昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。

立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。