
処遇改善に焦点を当てた2026年度改定の詳細が示されました。おおむね補正予算による処遇改善補助金の「延長」となり、基本報酬等の引上げはありません。そうなると、気になるのは2027年度の改定です。いきなりの総選挙も迫る中、見すえたいポイントは?
2026年度の特例要件を改めて整理すると
2026年度改定の内容を見ると、処遇改善効果のすそ野を広げるには、やはり「2026年度の特例要件」がカギとなります。まず、この特例要件を改めて確認しましょう。(1)~(3)は「いずれか」を満たせばOKとなっています。
(1)訪問・通所サービス等(新たに処遇改善加算の対象となる居宅介護支援等含む)…ケアプランデータ連携システムに加入し、実績報告を行なうこと。なお、補正予算での補助金要件では、「ケアプランデータ連携システムと同等の機能とセキュリティを有すると厚労省が認めたシステムも含む」としていますが、今特例要件でも流用されると思われます。
(2)施設・居住系サービス等(小規模多機能型等においては、(1)(2)ともに要件となる)…生産性向上推進体制加算IまたはIIを算定していること。これも、実績報告が求められます。
(3)今処遇改善加算の対象となる全サービス…社会福祉連携推進法人に所属していること。
特例要件を満たした場合の算定について
これら特例要件を満たした場合、賃金増のメリットを享受できるのは以下のケースです。
(1)居宅介護支援など、これまで処遇改善加算の対象外だったサービスで「月額1万円」相当の加算が算定できます(特例要件の代わりに、処遇改善加算IVに準じた要件を満たす、あるいは2026年度中に満たす誓約でもOK)
(2)これまで処遇改善加算を算定していたサービスでは、既存要件を引き続き満たした場合に、「月額1万円」相当が上乗せされます。そのうえで、加算I・IIを算定している場合に特例要件を満たすと、「月額7,000円」相当の上乗せとなる区分(ロ)が算定できます。
なお、これまでの処遇改善加算対象サービスで、区分III・IVを算定、あるいは「いずれの区分も算定していない」ケースでも、I・IIの要件を満たしたうえで(2026年度中に満たすことの誓約でもOK)、特例要件を満たすと(2)のI・II(ロ)が算定できます。
連携システムへの「加入」と「利用」の違い
以上のように、居宅介護支援の場合、特例要件を満たして算定できるのは「月1万円増」相当のベース部分だけです。これを算定するのに、まずは「(1)のケアプランデータ連携システムへの加入(すでに加入済のケースも含めて)」が手っ取り早いとなるかもしれません。
ただし注意したい点があります。補正予算の要件では「加入すること」とされていましたが、今特例要件を見ると「利用すること」とされている点です。今後の疑義解釈などで明らかになるでしょうが、「加入」だけでなく実際の「利用(およびその実績)」が求められるという解釈が問題になるかもしれません。
ちなみに、補正予算による補助金要件の疑義解釈では、「ケアプランデータ連携システムへの加入」の根拠資料として「使用画面のスクリーンショット(撮影時点がわかる形で撮影されたもの)」の提示を求めています。この「使用画面」が具体的に何を指すのかについて、仮に2026年度改定で「加入」ではなく「利用」に踏み込むとするなら、今から詳細な説明がなされないと混乱を招きそうです。
こうして見ると、「ケアプランデータ連携システムの活用」が「手っ取り早い」要件かどうかは、慎重に見極める必要がありそうです。もっとも、2026年度予算審議前に総選挙に入ってしまうため、どの時点で詳細な解釈基準や疑義解釈が出てくるのかは見通せません。
基本報酬アップ見送りの中で気になること
介護事業者としては、基本報酬が引き上げられない中では、少なくとも今後の処遇改善の行方を見すえつつ、経営コストの配分等について戦略を立てたいはずです。そのために必要なのは、少なくとも以下の2点でしょう。
1つは、すでに疑義解釈も示されている補正予算の処遇改善事業と、2026年度改定の要件等で「どこ」に違いがあるのかが明確になることです。たとえば、2026年度中はケアプランデータ連携システムの「加入」の誓約でOKともされているので、「要件を満たす負担は少ない」と思われがちです。しかし、先に述べたように「利用」という定義の解釈が問題となった場合、その先(特例改定がなくなるとなった場合)への対応に向け、どのような準備が必要かを検討しなければなりません。
もう1つは、2027年度改定における基本報酬の取扱いはどうなるのかという点でしょう。気になるのは、物価上昇等にかかるコスト負担を、政府は重点支援地方交付金やサービス継続支援事業など、公費による多様な補助金でカバーする流れを強めていることです。
介護報酬にはできるだけ手をつけず、その時々の補助金でまかなうという方針が今後も続くのか。たとえば、基本報酬の物価スライド等は視野に入らないのか。このあたりも、実は2026年度予算審議で浮かび上がらせるべき論点ではなかったでしょうか。
総選挙を経て予算審議に入るまで、介護現場として「何がどうなるのか」という手がかりも見えない状態が続くのは、事業運営の厳しさをさらに増しかねません。この点は現政権にとって強く問われる課題となりそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。