
今回も6月施行の処遇改善加算の見直しについて取り上げます。算定にかかる実務面で注意したい点の1つに、派遣職員や委託業務の職員への処遇改善があります。疑義解釈等でも以前から出ている話ですが、今回は居宅ケアマネも対象となったことで、事業所外雇用の従事者に関する課題に注意が必要です。
派遣職員等も処遇改善の対象にできるが…
まず、以前から処遇改善加算に関して出されている「派遣職員」や「委託業務の職員」(以下、派遣職員等)に関する取扱いについて、疑義解釈の内容を確認します。ひと言で整理すれば、上記の派遣職員等に関しても処遇改善加算の対象とすることは可能です(あくまで「可能」にとどまる点に注意)。
その場合の取扱いとしては、処遇改善加算による賃金アップ分を派遣料や委託料に上乗せし、それを派遣元や委託先の事業者が派遣職員等の賃金改善にあてることになります。その際、賃金改善を行なう方法やそれが確実に派遣職員等の賃金に反映されることを、派遣元や委託先と「協議」することが必要です。
その「協議」にもとづく派遣職員等の賃金改善については、加算申請に際しての処遇改善計画書や実績報告書に反映させなければなりません。さらに、派遣職員等を処遇改善加算の対象とする場合、キャリアパス要件IIIの「昇給のしくみ」の適用も必要となります。
介護予防支援等の委託ケースでの処遇改善
自事業所の直接雇用ではなく、「委託先」の従事者に処遇改善加算を適用するケースに関しては、今改定で新たなパターンも生じます。それが、介護予防支援や介護予防ケアマネジメントも対象になったことによる、包括から居宅介護支援事業所への委託ケースです。
この委託に際しての取扱いも、包括からの(原案作成の)委託料に処遇改善加算分が上乗せされることにより、委託先のケアマネの処遇改善がなされるというものです。包括が作成する処遇改善計画書および実績報告書では、委託料として支払った処遇改善加算相当額も含めて記載しなければなりません。
なお、委託料を受け取った居宅介護支援事業所側ですが、仮に委託先の事業所が、居宅介護支援での処遇改善加算を算定している場合、その加算に加え委託料上乗せ分の賃金改善額を実績報告書に記載することになります。
ただし、居宅介護支援での加算算定を行なっていない場合は、やや事情が異なります。この点については後ほどふれます。
派遣元等との「協議」は確実に行われるか?
さて、先に述べた派遣職員等の賃金改善はあくまで「可能である」という位置づけです。これに対し、介護予防支援等の委託に関しては、委託料における処遇改善加算分の上乗せにより「(委託先のケアマネの)賃金改善を実施することになる」と明記されています。
もともと、包括から居宅介護支援事業所への介護予防支援等の委託に際しては、委託契約書が市町村に提出され、包括から国保連への請求データで「委託先事業所番号」が記載されます。これにより、委託先事業所が受け取る委託料に処遇改善加算分が上乗せされることが明確になり、委託先の処遇改善が実施されるしくみにつながっています。
その点で、制度上に「委託」のしくみが明記されている介護予防支援等と、派遣元や業務委託先との「協議」が任意のケースでは、処遇改善の実効性にも差が生じがちです。
もちろん、前者の場合でも、派遣元も業務委託先も、人材不足の時代に処遇改善加算の反映を前提とした「協議」には前向きとなるでしょう。問題は、受入れ側の事業所・施設側の方が消極的になるケースです。
受入れ側の現場も人員不足なのだから、処遇改善加算分の「上乗せ」には応じるだろう──と思われるかもしれません。しかし、自ら雇用する従事者の処遇を優先したいといった思惑や、(協議内容を文書として残すなどしても)当の派遣職員等の処遇改善に確実につながるのかといった疑心暗鬼があると、なかなか「協議」に至らない可能性もあります。
現場従事者の処遇改善が「宙に浮く」懸念
結局、派遣職員等の処遇改善が宙に浮いた状態になれば、当の職員の働き方にも大きく影響します。このあたりは、派遣元や委託事業所が雇用する従事者の処遇について、構造的な問題が生じていないかどうかのチェックを、国として強める必要もありそうです。
実は、ケアマネにも似たような課題が付きまといます。先に述べたように、ケアマネに関しては、介護予防支援等の委託費で確実に処遇改善加算分の上乗せが行われます。ただし疑義解釈によれば、委託料の上乗せに際し、居宅介護支援側は今回の処遇改善加算の要件を満たしていなくてもOKとされています。
そうなると、介護予防支援や介護予防ケアマネジメントを委託で受けながら、居宅介護支援での処遇改善を先延ばしにするというケースも出てこないとは限りません。
また、居宅介護支援での処遇改善加算を算定していない場合、委託料の上乗せによりケアマネの処遇改善が確実に担保されるのかどうか。この点について、疑義解釈では「委託先においても賃金改善が適切に実施されるよう(包括と委託先が)連携すること」としていますが、やや心もとない感もあります。
今年7月に処遇状況等調査が行われますが、上記のようなさまざまな現場ケースを想定した実態把握も考慮する必要がありそうです。

◆著者プロフィール 田中 元(たなか はじめ)
昭和37 年群馬県出身。介護福祉ジャーナリスト。
立教大学法学部卒業後、出版社勤務。雑誌・書籍の編集業務を経てフリーに。高齢者の自立・ 介護等をテーマとした取材・執筆・編集活動をおこなっている。著書に『ここがポイント!ここが変わった! 改正介護保険早わかり【2024~26年度版】』(自由国民社)、 『介護事故完全防止マニュアル』 (ぱる出版)、『ホームヘルパーの資格の取り方2級』 (ぱる出版)、『熟年世代からの元気になる「食生活」の本』 (監修/成田和子、旭屋出版) など。おもに介護保険改正、介護報酬改定などの複雑な制度をわかりやすく噛み砕いた解説記事を提供中。