
この記事では、バイスティックの7原則*1の中の「個別化の原則」について、ケアマネジャーの現場の一場面に沿って解説します。「認知症の人」といった属性ではなく、その人ならではの人生や個性に目を向け、〝唯一無二の個人〟として関わる重要性を取り上げ、すぐに取り組める「実践ポイント」もわかりやすくまとめています。
こんな場面に心当たりありませんか?
私たちは無意識のうちに、利用者さんを「認知症の人」「気難しいご家族」といった”属性”で捉え、心の中にレッテルを貼ってしまうことがあります。それは、限られた時間の中で多くの利用者や家族に対応していると、仕方のないことかもしれません。
しかし、その無意識のレッテルが、利用者さん自身を理解することを妨げ、本人が本当に伝えたかった不安や寂しさを見過ごしてしまう原因になっているとしたら…?
「個別化」とは、一人ひとりの人生に敬意を払う姿勢
すべての利用者を、その人ならではの個性、背景、価値観を持つ〝唯一無二の個人〟として捉え、関わるという基本姿勢です。
病名や要介護度といった”属性”は、その人の一部分に過ぎません。
その方のこれまでの人生の物語に耳を傾け、大切にしてきた価値観や習慣に敬意を払うこと。それが個別化の第一歩です。
「個別化の原則」の視点で関わるとどう変わる?
「認知症の〇〇さん」ではなく、たとえば「元教員で、子どもたちに教えることに誇りを持っていた〇〇さん」として向き合う時、私たちの視点と関わり方は自然と変わってきます。

このように個別の背景を理解しようとすることで、同じ電話に対しても、「〇〇先生、なにかご心配なことがあるのですか。もう一度詳しく教えていただけますか?」 と、相手の尊厳に配慮した言葉を選ぶことができます。これが信頼関係を築く土台となります。
- 「属性」でなく「個人」に焦点を当てる
病名や要介護度といった情報だけでなく、その人が「誰なのか」、何を大切にして生きてきたのかに興味を持つ意識が大切です。 - アセスメントで「人生の物語」を聴く
業務的な質問だけでなく、
「若い頃は何をされていたのですか?」
「一番楽しかった思い出は何ですか?」
といった、その人自身の物語を聴く時間を少しでも設けてみましょう。 - 小さな情報を記録し、チームで共有する
「実は甘いものが好き」「阪神タイガースの熱烈なファン」といったケアプランに直接関係ないような小さな情報こそが、その人らしさの源泉です。こうした情報を記録し、関わる担当者で共有することで、チーム全体の関わりの質が向上します。
*1:参考文献:Biestek, F. P. (1957) The Casework Relationship. Loyola University Press. ( 『ケースワークの原則[新訳改訂版] 援助関係を形成する技法』(2006) F.P.バイステック 著 尾崎新/福田俊子 /原田和幸 訳 誠信書房
話を聞く前から「また、認知症の〇〇さんからかぁ。どうせ同じ内容なんだろうな」と思ってしまう。