【意図的な感情表出の原則】ケアマネジメントに活かすバイスティックの7原則

この記事では、バイスティックの7原則*1の中の「意図的な感情表出の原則」について、ケアマネジャーの現場の一場面に沿って解説します。利用者が「こんなこと言ってはいけない」と抑えがちな怒りや不安も含め、ありのままの気持ちを安心して話せる環境づくりを取り上げ、すぐに取り組める「実践ポイント」もわかりやすくまとめています。

こんな場面に心当たりありませんか?

原則①ビフォーアイコン
デイサービスに行き渋る利用者に、「まぁそう言わずに…歩く力をつけるために行くんですよ。 みんな〇〇さんが来るのを待っていますよ!」 と、良かれと思って説得したり励ましてしまう。

「行きたくない」という本人のネガティブな感情を受け止めないまま、支援者側の価値観(行った方が本人にとって良い)を押し付けてしまう、時としてそんなことはないでしょうか。ネガティブな感情にふたをしてしまうことが続くと、言葉で表せずストレスが溜まったり、「この人には気持ちを分かってもらえないな」と感じ、さらに意欲が低下してしまうかも…?

「意図的な感情表出」とは利用者のありのままの感情表現を促すこと
利用者が心の中に溜め込んでいる感情、特に怒り、悲しみ、不安といったネガティブな感情を、安心して自由に表現できるよう意図的に促す関わり方を指します。感情を十分出せない状況は、精神的なストレスを高め、意欲低下や問題行動につながることもあります。

表面的な言動だけで判断せず、そこに隠れている本人の思いや感じている感情は何か、ということに意識を向け「ありのままの気持ちを聞かせてほしい」という姿勢で傾聴することが、意図的な感情表出の一歩です。

「意図的な感情表出」の視点で関わるとどう変わる?

バイスティックON!
原則①アフターアイコン
まずは相手の言葉を遮らず、 「行きたくないな、と感じるほど、何かお嫌なことがあったのですか」 と、感情そのものを受け止める言葉を返します。まずは感情を表出することで、本音や背景が見えてくる場合があります。

利用者は「気持ちを分かってもらえた」と安心し、「本当は〇〇さんと席を離してほしい…」「食後は少しでも横になって昼寝したい」といった、拒否の裏にある本当の理由やニーズを話してくれるきっかけになります。問題の根本的な解決は、そこから初めてスタートするのです。

【明日からできる】「意図的な感情表出」を実践するポイント
  • 全身で「聴く姿勢」を示す
    相槌やうなずきはもちろん、少し前かがみの姿勢で相手の目を見るなど、非言語的な態度で「あなたの話を真剣に聴いています」というメッセージを伝えましょう。
  • 感情を言語化する手伝いをする
    うまく言葉にできない利用者には、「それは、腹が立つという感じですか?それとも、悲しいというお気持ちですか?」と、感情の選択肢を示してあげることで、ご自身の気持ちの整理がつきやすくなります。
  • 沈黙を恐れない
    相手が言葉に詰まっても、焦って次の質問を投げかけないことが重要です。相手が自分の感情と向き合い、言葉を探すための「間」を大切にすることで、より深い内面からの言葉を引き出すことができます。

i.care-mane.com

*1:参考文献:Biestek, F. P. (1957) The Casework Relationship. Loyola University Press. ( 『ケースワークの原則[新訳改訂版] 援助関係を形成する技法』(2006) F.P.バイステック 著 尾崎新/福田俊子/原田和幸 訳  誠信書房