入浴は清潔保持のためだけでなく、心身をリラックスさせ、睡眠の質を向上させたり、要介護リスクを減したりというメリットがあることは知られています。しかし、身体機能が低下した高齢者や、入浴時の介助が必要な方とそのご家族にとっては、自宅での入浴タイムは負担に感じてしまうことも事実です。
そこで取り入れたいのが入浴を補助する福祉用具。
入浴用イス、浴槽台、手すりやグリップ、滑り止めマットなど、さまざまアイテムが広く展開されています。その一方で、「どれもたいして変わらないだろう」と、身体状況や動作、浴室環境に最適なアイテム選定が不十分な場合もあるのではないでしょうか?
今回は、先日実施した、「ケアマネドットコム」と「安心介護」(介護者向けコミュニティサイト)のユーザーを対象にしたアンケート結果を紐解きながら、シャワーチェア(入浴用イス)の活用の実態について深掘りするとともに、今人気のシャワーチェア「パナソニック ユクリア」シリーズの特徴についても紹介していきます。
利用者が住み慣れた自宅での入浴を安全に続けていただくためにも、ぜひ参考にしてください。
できることなら、したい・させてあげたい自宅浴
高齢者の介護をしている方を対象にしたアンケート*1回答者の8割以上が負担に感じている入浴。しかしながら、本人は自宅での入浴を希望していたり、そのご家族が「できるならば入浴させてあげたい」という本意があることも少なくありません。
ケアマネジャーを対象にしたアンケート*2では、居宅利用者を担当しているケアマネさんの実に6割が、「自宅浴を希望していたが、断念・回数を減らさざるを得ない」という経験をしたことがあるということが明らかになりました。
*1:対象者:「安心介護」登録ユーザー257名2024年5月15日〜5月21日実施。
*2:対象者:「ケアマネ.com」登録ユーザー367名2024年5月14日〜5月20日実施。
その理由として最も多かったのが、ADLや認知能力の低下など、利用者本人の能力によるもの、次いで「浴室が狭い」「段差があって危険」など環境の問題が原因となっているようです。

浴室のスペースがなく介助できない場合や利用者の身体の状況によっては、デイサービス等の入浴介助の利用が最適解となりますが、適切な福祉用具の導入によって、自宅入浴の可能性が広がることもあります。
令和3年度の報酬改定では、デイサービス等の利用者が居宅で入浴できるようになることを目的とした「入浴介助加算Ⅱ」が新設されました。PT/OT、ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、介護福祉士等が、利用者の状態をふまえ、浴室における利用者の動作及び浴室の環境を評価した上で、個別の入浴計画を作成し、入浴介助を行うことが算定要件となっています。
このような取り組みも活用しながら、シャワーチェア等の福祉用具の使用メリットをわかりやすくお伝えしてあげることで、利用者のADLの維持・改善にもつなげていきたいですね。
実際に導入して実感!シャワーチェアを導入するとこんなメリットが
初めて福祉用具の導入を検討する場合は、抵抗を感じられる利用者や家族もいらっしゃるかと思いますが、実際に導入された方の声を紹介することで、試してみるきっかけになることもあります。
ここでは、シャワーチェアを導入していると回答した方*1が実際に感じた、導入メリットの一部をご紹介します。
「座位が安定し、転倒がなくなった」
「座った姿勢のバランスが保たれ、自分でタオルで体を洗えるようになった」
「夏場、汗をかきやすいので、デイの日以外でシャワーができるようになった」
「(介助する側が)心配して何回も見に行かなくて済む」
*1 アンケート対象者:「安心介護」登録ユーザー257名2024年5月15日〜5月21日実施。
このように状況が改善した喜びの声がある一方で、ヒヤリとした経験がある方も少なくありません。
介護家族を対象にしたアンケート結果には、「シャワーチェアを導入したものの、危うく事故になりそうになった経験がある」と回答した方が全体の約7割。
その原因は様々ですが、代表的な要因の1つとして、利用する方の身体にあったシャワーチェア選びができていないことが挙げられます。
また、ケアマネジャーを対象にしたアンケート*2でも、「シャワーチェアを導入したが導入後に課題がある」と回答した方が約3割。
その課題とは、具体的に「スペースや設備など物理的環境にチェアが合わない」、「利用者の身体状況や入浴動作にチェアが合わない」といったことが多く挙げられました。

導入時に、利用者本人の身体状況、自宅の浴室環境に合わせた選定ができていないと、導入メリットを実感できずに無用の長物となってしまったり、事故のリスクが高まったりする可能性があります。
では、導入時にどのような点に留意すれば良いのでしょうか?
適切なシャワーチェア選びとは?事故防止のためのチェックポイントを紹介!
ここからは、アンケートで寄せられたシャワーチェアにまつわる導入課題を挙げながら、選定時に想定すべきリスクの要因について解説していきます。
【ケース1】「座るときに後ろに倒れそうになった」
背もたれがあっても、シャワーチェアの後ろ脚より背もたれの方が外側に出ていると、座ったとき本体ごと後方に傾いて倒れそうになることがあるので要注意です。
その他にも、シャワーチェアのちょっとした仕様の違いが、安全性や動作に影響します。
例えば座位が不安定で身体がずれたり、倒れそうになったりする場合は、シャワーチェアの座面の広さが足りない可能性があります。
また座面形状も、座位の安定性に影響します。座ったまま陰部を洗えるというメリットがあるU型・I型のシャワーチェアの場合、特に空いている部分が大きいものは、お尻や太ももを支える面積が少なくなるため、姿勢保持力が低下した方にはあまり適していません。
そして、見落としがちな座奥行。横幅が体格に合っていたとしても、奥行きが足りないと、姿勢を保ちづらく、バランスを崩してしまう要因になります。
また、ひじ掛けや背もたれも身体状況や洗体動作によって適したものを選ぶことが、姿勢を安定させるうえで重要です。洗髪・洗体時に前かがみになる場合は、ひじ掛けで上半身を支えられるか、足を広げるのに邪魔にならないかなどを確認し、ひじ掛け、背もたれの高さ、角度、形状を選ぶとよいでしょう。
【ケース2】「シャワーチェアが大きい・重いため、邪魔になる」
「扉に干渉してしまい、閉まらない」
「シャワーチェアがあることで、浴室内の十分な動線が確保できなかった」
など、実際に浴室に置いてみて、その不具合に気づくケースも少なくないようです。
シャワーチェアのサイズが利用者の身体に合うかだけでなく、浴室スペースに合うかどうかも重要な選定ポイントです。座面が回転するタイプやワンタッチで広げられるタイプなら、限られたスぺ―スでも、方向転換の動作を補助し、対応できる場合があります。
また、収納時に折り畳めるタイプは、収納スペースに収まるかどうかを事前に確認しましょう。大きさだけでなく重さも要チェック。浴室から収納スペースまでの出し入れの距離を実際に持ってみて、重さが負担にならないか、確認しておく必要があります。
同じようなデザイン・機能に見えるシャワーチェアでも、設置スペースや折り畳み時のサイズ、重量の「ちょっとした違い」が、導入後の活用状況を左右するといっても過言ではありません。
理想は、購入前にシャワーチェアの実物を浴室に置いて試すことですが、それができない場合はカタログ上でサイズや重さにも注目し、比較検討することをお勧めします。
【ケース3】「掃除ができない、衛生管理が不十分でカビが生えた」
シャワーチェアは一般的な入浴イスに比べ、機能性が高い分複雑な形状をしています。そのため、洗浄や乾燥などの手入れの負担が課題の一つでもあります。また介護者の状況によっては頻繁な手入れができず、衛生管理が不十分になることを心配される方もいます。
そのような場合は、シャワーチェア自体に防カビ・防汚加工が施されたものを選ぶことで、手入れの頻度が少なくても衛生を保ちやすくなります。
いかがでしたか?
導入前のフィッティングでは気づかなかったが、しばらく使用していくうちに「もうちょっとこうだったら…」という思いが強くなるケースもあります。また、利用者の方の状況も時間が経つにつれて変化していきます。
導入後も、定点的にチェックをしていくことが大切。ピッタリあったシャワーチェアで安全な入浴タイムを過ごしていただきたいですね。
利用者の動作研究から生まれたシャワーチェア「ユクリアシリーズ」
福祉用具の役割は、利用する方の動作を邪魔せず、できることを引き出し、増やすこと。
パナソニックの「ユクリア」シリーズは、この点を大切に開発されたシャワーチェアです。
その特徴の一つに、座った時の座奥行が広く取られているという点があります。この奥座行の広さにより、座位が安定し、頭や体を洗う動作がしやすくなります。
また、背もたれの角度は直角ではなくゆったりしていることで、姿勢保持がしやすくなるため、浴槽へのまたぎ動作の際にバランスを崩すことが少なくなります。

さらに、ひじ掛けは体の前方に来るようになっており、立ち座りの時に体の前側でしっかり握ることができる点や、ひじ掛け下の空間が広めに空いていて、脚を広げても引っかからない、足先を洗うときに邪魔にならないという点も、細かく設計されています。


ニーズに合わせたバリエーション展開が豊富
ユクリアシリーズ全般に共通する特徴として、座奥行の広さや背角度のゆったりさについて紹介してきましたが、さらに利用者の方の体格に合わせて、座面の横幅は3サイズ展開。ひじ掛けなしのタイプや腰あて付きのタイプなど合計10タイプがラインナップされています。
その中でも「ユクリアAir」シリーズは、軽量・省スペースさの点で特に定評を得ているシャワーチェアです。

利用者本人の身体状況や入浴動作、浴室環境、介助方法などを確認し、福祉用具専門相談員の意見を参考にしながら、ぴったりのシャワーチェアを導入できると良いですね。
使って良かった!実際の利用者の声
福祉用具相談員が経験した、ユクリアシリーズを導入されたご利用者のエピソードをご紹介いたします。
お孫さんからのプレゼント
(戸建て住居におひとりでお住いのご利用者と、そのお孫さん)
足腰に痛みがあり動作が不安定で、自宅での入浴時に転倒の危険があるが「年より扱いされたくない!まだ大丈夫!!」と介護認定の申請を拒否しているおばあちゃん。「敬老の日に、自宅でも安全に入浴できる用具を」というお孫さんからのプレゼントとして、シャワーチェア・浴槽台・すべり止めマットを導入されました。
明るい色がお好きなおばあちゃんのために、ユクリアのオレンジ色を選び、リボンを掛けて贈ったところ、とても喜んでいただきました。お孫さんは介護職に就いていらっしゃるそうで、お休みの日にはおばあちゃんの家に行き、安全な環境で入浴のお手伝いをされているとのことです。
おばあちゃんも「きれいなオレンジ色で、お風呂場が明るくなったね。今の時代はこんな便利なものがあるんだね」と喜んでいらしたそうです。
使って実感、広めたくなる心地よさ!
(戸建て住居にお子さまと同居でお住まいの、ご利用者とその娘さま)
もともと使っていた浴室のイスが低く立ち座り動作に不安があったため、同居の娘さまが心配してケアマネジャーに相談。後日ケアマネジャーと同行し、身体状況及び入浴環境の確認で訪問するが、ご本人がシャワーチェアの導入に難色を示したため、娘さまと作戦会議。後日改めてユクリアAirの見本をお持ちして実機を見ていただき、実際に使ってみてご判断いただくことになりました。
さらに数日後訪問するとご本人さまから「すごくシャワーチェアが良い」と大絶賛のお褒めの言葉をいただきました。娘さまからも軽くて使いやすいとの言葉をいただき、早速購入に向けてケアマネジャーに相談する事となりました。
ユクリアAirの軽さを、魅力的に提案!
(ご利用者と介助されるご主人さまとそのお孫さん)
実際にシャワーチェアを見て「こんなに大きいの?」と驚かれることは多いのです。先日、選定させていただいたAさんもやっぱりそんなリアクションでした。でも今回、ユクリアAirを同時にお見せしたところ、その違いは一目瞭然!ご本人さまはすぐに気に入ってくれ「こんなに軽くて便利なら家中の椅子を全部、シャワーチェアにしちゃおうか」なんて言葉も。
ご本人と介助されるご主人も気に入ってくれましたが、一番喜んだのは実は孫娘さんでした。小学生の彼女でも軽く持てるので、最近は大好きなおばあちゃんのお風呂のお世話ができると張り切っているそうです。
それぞれに適した安全・快適な入浴のために
自宅でゆっくりと入浴したいという本人の希望を叶えつつ、介助する側の負担も軽減するために活躍してくれるシャワーチェア等の入浴補助用具。身体の状況や浴室環境に合わせた適切なチェア選びで安全性を高め、自宅での入浴を提案できると良いですね。
パナソニックの[ユクリア]シリーズは、利用する人の動作を研究し開発されたシャワーチェア。ゆったり背もたれと広い座奥行で脚上げ動作がしやすいのが特徴です。さらに体格やシーンにあった幅広い品揃えで、ぴったりのチェア選びを応援。詳しくは公式サイトにてチェックしてみてください。