2020年から約3年間もの間、新型コロナウィルス感染拡大防止として不要不急の外出や社会参加が制限された時期がありました。この時に特に課題として浮かび上がってきたのが、いわゆる「コロナフレイル」ともいえる健康二次被害です。高齢者が外出を控えて自宅に引きこもることで、筋力や活力の減少や認知症のリスクが高まるということが分かってきました。高齢者の健康にとって「外出」が重要な要素であるということを踏まえ、外出の課題に向き合い、安全な外出方法を検討することで、利用者の生活の質(QOL)を向上できるよう支援していくことが求められています。今回は、高齢者にとっての外出の課題とケアマネジャーとして支援する必要性を振り返りながら、高齢者の外出促進に貢献するトヨタの「いつでもウェルキャブ」についてご紹介します。
高齢者にとっての外出の重要性と課題
健康寿命の延伸をもたらす外出の重要性
皆さんがご存知の通り、日本は他の先進国と比較しても急速な勢いで高齢化が進み、高齢化率29%(2020年時点)は、G7の中でもトップです。この傾向は今後もさらに加速し、2050年には10人のうち4人が高齢者になり、現役世代の負担が増加することが予想されています。

総務省「ICT超高齢者社会高層会議報告書」(国際連合“World Population Prospects: The 2012 Revision”より)
参照元「トヨタ自動車 提供資料」
超高齢者社会における現役世代の負担増加の一例として、介護保険にかかる費用を見てみましょう。介護保険が始まった2000年には、介護保険の総費用は3.6兆円でしたが、2025年には15兆円を超え、当初の4倍にまで拡大する見込みです。
財務省 財政制度等審議会 提出資料 ‘21/4/15より 参照元「トヨタ自動車 提供資料」

厚生労働省 令和元年度 介護給付費等実態統計の状況(令和元年5月審査分)より
参照元「トヨタ自動車 提供資料」
こちらの円グラフは介護給付金の内訳です。特別養護老人ホームや老人保健施設といった介護保険施設への入所にかかる費用は、1人当たり平均約30万円/月となり、全体の約1/3を占めています。今後も拡大していく介護保険総費用に対して、制度の安定性・持続可能性の確保のために、施設介護から在宅介護へと国の介護政策もシフトしています。
平均寿命は男女ともに伸び続けており、高齢者一人に対する支え手となる現役世代の人数が減少していくことが推定されています。このような超高齢者社会において、現役世代の負担を軽減するためには「平均寿命に対する健康寿命」がますます大切となっていきます。現在、健康寿命と平均寿命の差は、男性で8.73年、女性で12.06年となっており、健康寿命を延ばすことで、心身ともに自立した生活を送ることができ介護期間の短縮が期待できます。

厚生労働省「第16回健康日本21(第二次)推進専門医委員会資料(令和3年12月)より
参照元「トヨタ自動車 提供資料」
では、どうすれば健康寿命を延ばせるのでしょうか。健康寿命に高齢者の外出の頻度が大きくかかわっていることを示したのが以下の調査結果です。外出頻度と障害発生リスクを見てみると、毎日外出する人に比べて、週に1回以下の方は歩行障害になるリスクが4.02倍となっています。認知症の発生リスクは、毎日外出する方と比べて、週に1回以下の方は3.49倍です。
歩行障害や認知機能障害の発生リスクを見ても、高齢者が健康寿命を延ばすためには、外出が重要であることがわかります。

新潟県Y市で65歳以上の高齢者を対象に2001年から2年間追跡調査した結果
※両グラフとも、もともとの健康状態や社会的役割の差による影響を除いて比較
(資料)財団法人東京都高齢者研究・福祉振興財団東京都老人総合研究所[第93・95回老年会公開口座第三のキーワード!]より
参照元「トヨタ自動車 提供資料」
高齢者にとって外出は、心身機能を維持するだけでありません。外出をすることにより、身なりを整えたり、外の景色を楽しんだり、街並みの変化に気づいたり、人との交流が生まれたり、その人らしい生活を続けることやQOL向上にもつながります。
しかし、様々なきっかけや理由により若いころに比べて外出頻度が少なくなってしまう方が多いのではないでしょうか。毎日のように買い物に行っていた人でも、腰やひざなどの痛み、免許返納、体力への自信低下などで、徐々に外出をあきらめてしまい閉じこもりがちになることもあります。このような高齢者の外出を取り巻く課題にはどのようなものがあるのか、その内容を見ていきましょう。
身体的な課題
加齢により歩行力や体力、視力などの身体機能が低下すると、腰やひざの痛みで歩くのが辛くなったり、ちょっとした段差につまずいたり、車への乗降動作がしづらくなったりなど、今までできていた動作が徐々に難しくなり、外出に伴う身体的な負担が大きくなります。
身体的な負担で外出が難しくなるにつれて、徒歩で移動できる近隣だけの外出になったり、公共交通機関から車や移動支援サービスでの移動が必要になったりなど、外出手段の選択肢が狭まります。すると、移動の目的が通院や買い物などの必要最低限なものに偏ってしまい、移動が短時間になり、外出先も固定化してしまうという状態になってしまいます。
環境や経済的な課題
身体的な困難さが上昇するにしたがって、外出に対する周囲の環境要因による課題も増えていきます。例えば、道路に段差や階段、傾斜があることや、歩道が狭いこと、疲れた時にベンチやイスなどの休める場所がないこと、バスや電車などの公共の交通機関が利用しにくいことなどです。
高齢になって外出が困難になってくると、公共交通機関よりも自宅から目的地まで届けてくれる車での移動に頼ることが多くなります。さらに身体的に車への乗降動作が難しい場合や車いすを使用している場合、さらに介助する家族がいない場合は、通院等乗降介助といった介護保険サービスや、福祉タクシー・移送支援といった移送サービスの利用が必要になってきます。家族が送迎をする場合でも、現在使用している車で乗降動作や介助が問題なくできるかどうかも課題です。
車への乗降介助を受けられる通院等乗降介助サービスを利用する場合は、事前にケアプランへの位置づけが必要ですし、地域によっては希望の日時になかなか予約が取れないことがあります。また、福祉タクシーを使う場合でも金銭的な負担が大きく、日々の買い物やレジャーなど日常的に気楽に使うにはあまり適していません。マイカーでの有償送迎が例外として認められた「自家用有償旅客運送」や自治体からタクシー券などで運賃の助成が受けられる制度を活用すれば金銭的な負担が軽減される場合もありますが、どちらも提供されている地域が限られており、すべての人が利用できるわけではありません。
心理的な課題
心理的な要因から外出に消極的になってしまう場合もあります。人にぶつかったり、段差で躓いたりして転倒する、体力を過信して歩きすぎて動けなくなる、道が分からなくなって迷う、公共交通機関を利用する際に、動作に時間がかかって周囲に迷惑をかけたと自信を喪失する…など、一度でもそんな経験やそれに近い経験をすると、外出に不安を感じてしまうものです。また、感染症の流行により、重症化リスクへの不安から、必要以上に外出を避けるようになってしまうケースもあります。
家族が車で送迎をしてくれる場合でも、車への乗り降りや車いすの積み下ろしに介助者が苦労している様子を見て、家族に負担かけないように外出を遠慮してしまうこともあります。
高齢者の外出には、身体的、環境的、経済的、心理的な複合的な課題があり、徒歩や公共交通機関での移動より自宅から目的地まで移動ができる車での移動を選択することが増えていきます。ただ自宅の車の場合、乗り降りの介助や車いすの積み下ろしが負担になるなどの課題があるのが現実です。
高齢者の外出が楽になる「いつでもウェルキャブ」
高齢者の外出機会の創出や介助の負担軽減につながる提案としてご紹介するのが、トヨタの「いつでもウェルキャブ」です。公共交通機関が使えない、一人で外出することが困難になってきたなど、様々な課題を抱える高齢者と家族の外出をサポートします。

いつでもウェルキャブは、同居や別居を問わず高齢者と外出を楽しみたいご家族や夫婦で出かけたい高齢世帯の方などに提案する、クルマの乗り降りや助手席シートへの移乗のサポート、車いすの乗せ降ろしの負担を軽減するトヨタの後付け純正用品です。
福祉車両への買い替えは必要ありません。取扱い車種は限られますが、今お乗りのクルマへ後付けが可能です。
いつでもウェルキャブは2種類
いつでもウェルキャブには、2つのアイテムがあります。
クルマの乗降で足腰が痛む方、シートへの移乗が困難な方向け「ターンチルトシート」

販売価格:149,600円(税抜136,000円)
ターンチルトシートは、助手席に後付けができます。シートが座りやすい向きに回転しながらチルト(傾けること)するので、高齢者は片足をあげて車をまたぐ必要なく、両足をそろえたまま、助手席に乗ることができます。

足が上がらない方、乗降時に足腰の痛みがある方、マヒのある方の負担を軽減します。取り付けには別途工賃がかかります。
介助が必要な方が助手席に乗車される場合は、操作は介助者が行いますが、
1人で乗り降りできる方は、ご自身で操作することも可能です。
レバーひとつで簡単に操作でき、手動でご自身のタイミングで乗り降りできます。
【いつでもウェルキャブ】後付け純正用品 ターンチルトシート<取説編>
車いすの積み下ろしに負担を感じている方向け「車いす収納装置」

販売価格:149,600円(消費税抜き136,000円)
誰でも簡単かつ確実に車いすをラゲージに収納できる後付けの車いす収納装置です。簡単なスイッチ操作で、35㎏までの車いすを電動でラゲージに収納できます。
装置自体は自由に取り外し可能なので、必要のない時は普通のクルマとしてお使いいただき、ラゲージのスペースを有効活用できます。軽量なので持ち運びも簡単です。

重さを気にして車いすを選んでいた方、車いすの積み下ろしに苦労していた方の負担を軽減し、車いすの積み下ろし時に車を傷つけるのを防ぎます。
【いつでもウェルキャブ】後付け純正用品 車いす収納装置<取説編>
理学療法士による活用法・介助法の解説
株式会社豊通オールライフの理学療法士である岩澤尚人さんによる、「いつでもウェルキャブ」の活用法や介助法の解説をご紹介します。
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ターンチルトシート
車に乗る時には、「車に近寄る→助手席のドアを開ける→片足から乗り込む→座席へ奥まで腰掛ける→もう一方の足を車の中へ入れる→ドアを閉める」という動きをします。
難しいのは、片足から乗り込んで座席の奥まで腰掛ける動きです。片足立ちが3秒(最低でも1、2秒)保てない方、足踏み方向転換ができない方、ゆっくり着座できない方、お尻を奥まで移動できない方の乗降を、ターンチルトシートがサポートします。

「豊通オールライフ 提供資料」
車いすからベッドに移動するような動きで、車のシートに座ることができます。また、座席が10°程度前傾するので一度で奥まで座ることができ、座り直しの必要性はほとんどありません。

「豊通オールライフ 提供資料」
また、車いすとシートの距離が近くなることもポイントです。通常のシートでは車いすを横付けできないため、40㎝ほどの空間ができてしまいます。そのため、車いすとシートの間に高齢者が落ちてしまうことがありました。また、方向転換がしきれないと、お尻が座席にしっかり乗らず、おしりを持ち上げる筋肉も介助のスペースも十分にないことから、高齢者がシートから滑り落ちてしまうことがありました。
ターンチルトシートであれば、シートと車いすとの距離が近くなり、90度の方向転換をしなくてもしっかり座れるため、そのリスクが減少します。また、シートが回転と前傾するため、頭を車にぶつけてしまうこともほとんどありません。
「豊通オールライフ 提供資料」
ターンチルトシートを利用すれば、助手席シートへの乗降動作が簡単になり、座り損ねやずり落ち、転倒、転落、頭や足をぶつけるといったヒヤリハットを回避できます。
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車いす収納装置
車いすを車の収納スペースに積み下ろしをする際には、どうしても力任せに持ち上げてしまいがちです。姿勢による椎間板内圧(腰の負担)を考えた場合、女性は体重の24%以下、20kgの重量物はNGとされています。車いすはだいたい15kg前後ですが、利用者の座りやすいものなどによっては、重たくなることもあります。
車いす収納装置を使うことで、車いすの積み下ろしによる、腰や腕にかかる負担や腰痛リスクを低減できるので、車いすの重量に制限されずに、本人にフィットした車いすを選べるようになります。いつでもウェルキャブの車いす収納装置は、取り付けや取り外しが簡単であることもメリットです。
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いつでもウェルキャブがご利用者のQOL向上に貢献できること
家族や友人とのつながりや余暇活動、仕事、地域活動などの社会的な活動によって、高齢者は「生きがい」や「充実感」を得ています。
リハビリでは身体を改善して良くなることを目指しますが、いつでもウェルキャブは、買い物や旅行などを本人がいつでも「普通にできる」をサポートする外出支援ツールです。

「豊通オールライフ 提供資料」
実際に利用した方からは、このような声をいただいています。

「豊通オールライフ 提供資料」
いつでもウェルキャブの導入・利用の方法
いつでもウェルキャブはトヨタのシエンタ、アクア、ヤリス、プリウスなどの対象車種に、用品のみを後付けしてご利用いただけます。対象車種であれば後付けできるので、車を買い替えることなくお客様のライフステージの変化に合わせてフレキシブルに対応でき、乗り降りの負担やご家族の負担を軽減します。
いつでもウェルキャブは、国内のトヨタ車両販売店にてお買い求めいただけます。使用している車に取り付けられるか、使用時の注意事項や操作方法など、お気軽にお問い合わせください。
一部地域を除き、月額3000円程度~レンタルも可能です。詳しくは、株式会社豊通オールライフにお問い合わせください。まずはレンタルで試して、必要に応じて後から買い取りもできます。

※レンタルの詳細はこちら
このような外出支援ツールをケアマネジャーの皆さんに知っていただき、必要とする方が活用できるよう情報提供をしていただくことで、高齢者の社会的な活動を支え、QOLを向上させていけるのではないかと考えています。
「いつでもウェルキャブ」を活用したケアプラン事例の紹介
それでは、いつでもウェルキャブを活用し外出促進を図るケアプラン事例を見ていきましょう。
座面の角度が変わることで安全な移乗動作が可能になる事例
脊柱管狭窄症で腰痛が強く、自力での外出が難しくなってしまったが、病状の悪化を防いでなるべく今までの生活を保ちたい方。目標である、「病院や買い物への行き来を負担なく行えるようになる」、「身体状態や生活環境に適した方法で移動し家族と外出ができるようになる」を支援するために、福祉用具貸与で車いすや周辺用具を導入。併せていつでもウェルキャブを活用し、車への乗降時に腰のひねりの軽減と車いすの乗せおろしの負担軽減を目指すケース。


通院時に家族が負担なく介助できるようにする事例
パーキンソン病の既往歴があり、歩行が不安定な時はあるが転倒に気をつけながら自宅での生活を続けたい方。家族による車での定期受診の介助が必要になるが、負担をかけずにスムーズに行うことが重要となるため、負担軽減と効果的な乗降介助のためにいつでもウェルキャブを活用するケース。


家族と買い物や旅行に行くことを目標としQOLの向上を目指す事例
脳梗塞の既往歴があり、麻痺からくる可動域制限により転倒のリスクが大きいため、外出することに消極的になっている方。本人は買い物に行けるようになりたいと考えており、家族は本人が気分転換できるように外出を楽しめる支援をしたいと考えている。目標のひとつである「外出の機会を確保する」ための支援計画として、デイサービスでの機能訓練(介護保険サービス)と並行していつでもウェルキャブを活用することで家族との外出もサポートし、生活全体の活性化を目指すケース。


外出しやすい環境を整え、QOL向上を目指すご利用者に
担当する利用者や地域ごとにある外出や移動に関する様々な課題に対し、日々ケアマネジャーとして柔軟に対応されていることと思います。
日頃から多様な移動支援の方法、環境整備のアイディアを集めておくことは、ケアプランの幅を広げるとともに、担当するご利用者様の選択肢を増やしQOL向上につながります。高齢者やご家族の負担を軽減し、外出しやすい環境を整えるひとつの手段として、現在使用している車に後付けできる「いつでもウェルキャブ」を、ぜひ必要な方にお伝えいただければ幸いです。