
ケアマネジャーのご経験の中で、認知症の方が一人で生活している、または家族と同居しているが日中一人でいる、といった状況は珍しくないと思います。これらのケースでは、とくに心配なのは「徘徊」ではないでしょうか。徘徊による事故を防ぐための対策として、ご本人に寄り添った対応と共に、見守り体制の構築が重要とされています。しかし、独居高齢者や高齢者世帯の増加に伴い、見守りに必要な人手が足りないことが問題となっています。そのため、介護現場でICT機器の活用が期待されています。本記事では、カメラ機能とインターネット接続機能を一体化した新型の徘徊感知機器「ラムロックアイズ-みまもりCUBE-S」(以下「みまもりCUBE」)について、その活用方法とケアプランに位置付ける際の注意点を解説します。
徘徊による事故を防ぐために必要な見守りと課題
見守りニーズの増加とマンパワーの不足
現在、日本社会は超高齢社会が進行し、65歳以上の一人暮らし世帯や認知症の方が増加しており、地域での見守りと支援が重要な課題となっています。
令和5年7月に総務省が発表した「一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査」によれば、地域での高齢者の見守りの重要性が増している一方、コロナ禍による地域の関係性の変化や人手不足などにより、様々な課題が生じています。
調査報告書によると、65歳以上の一人暮らしの高齢者数は2005年には386万世帯でしたが、2025年には2倍近くの751万世帯に達しその後も増加傾向にあるとされています。
65 歳以上の一人暮らしの高齢者数の推移

一人暮らしの高齢者が増える一方で、支える現役世代の人数は減少し続けています。2025年には一人の高齢者を1.9人で支える構造となり、医療や介護など社会保障の財源や人材の不足、いわゆる「2025年問題」に直面しています。
高齢化率及び高齢者 1 人を支える現役世代(15 歳~64 歳人口)の数の推移

また、厚生労働省が公表した認知症の人数の将来推計によれば、2025年には約700万人、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になると見込まれています。※
※参照 令和元年6月20日 社会保障審議会介護保険部会 参考資料2-1認知症施策の総合的な推進について
認知症の人数とともに、周辺症状である徘徊を原因とした行方不明者数も年々増加しています。令和4年度の原因・動機別行方不明者数によれば、行方不明者の原因で最も多いのが「疾病関係」で、認知症又はその疑いによるものは18,709人と2万人近くにまで達しています。

以上のように、一人暮らし高齢者や認知症高齢者の増加を背景に、徘徊による行方不明や事故に巻き込まれるリスクが増え、社会問題化しています。
家庭の中で行われてきた見守りや、地域の民生委員やボランティアなど地域住民による見守り活動も重要ですが、それだけでは十分とはいえない状況です。また、地域で認知症の方を支えているケアマネジャーや介護関係者にとっても、限られた人手の中でどのように徘徊による事故防止に取り組むかは重要な課題となっています。
次に、徘徊行動への対応で困っている家族や関係者の具体的な例から、課題への対策について考えていきます。
こんな事例に困っていませんか?
認知症の方の支援をする中で、遠距離介護のご家族や日中お仕事等で外出するご家族から以下のようなお悩みを聞かれたことがあるかもしれません。
「本人は認知症とともに難聴も進んできており、電話をかけても出ないことが多い。徘徊が心配で夜中でも家まで様子を見に行ってしまう日が増えてきた」
「家族が近くに住んでおり徘徊感知機器の導入を検討しているが、電波が届かずあきらめた」
「マット型センサーを使っているが、踏んだら誰か来ることがわかって、センサーを踏まないようにし転んでしまった」
「徘徊保護の依頼時に、本人が出て行った時間とその時の服装を聞かれたが答えられなかった」
「本人が散歩から戻れずに保護されたことがあり、その時だけだろうと思っていたが、実は家族が気が付かない時間帯に徘徊を繰り返していたようだった」
徘徊は、周囲の人が注意深く見守っていても、一瞬の隙間から思わぬ事故につながることがあります。事故が起きる前に対応できる環境・体制を整えることが重要ですが、常時近くで見守ることが必要となると、介護者の負担は大きくなります。
また、一人暮らしや日中独居で、ご本人の行動や生活リズムが把握しづらいケースでは見守り体制の調整自体が難しい問題となります。
そこで、介護者の心配や負担を軽減し、独居のケースでも利用者の安全対策に活用できる、新型の徘徊感知機器「みまもりCUBE」をご紹介します。
新しい徘徊感知機器
「みまもりCUBE」とは?
「みまもりCUBE」は手のひらに乗るサイズながら、動体検知を搭載したカメラと、モバイル通信(SIMカードによるインターネット接続)等を一体化した徘徊感知機器です。
※介護保険をご利用の場合は、認知症の診断または軽度者申請等の手続きが必要な場合があります。(原則は要介護2 以上かつ適切なケアプランが必要になります)


「みまもりCUBE」の機能について
インターネット環境がないご利用者宅でも、コンセントにつなげばすぐに利用が可能で、配線工事や複雑な設定作業もなく導入することができます。また、介護者もスマートフォンだけあればどこにいてもお知らせを受け取ることができます。※
徘徊時には、玄関を通過する行動だけでなく居室の出入りの状況を検知することができるため早期に徘徊行動や異常に気づくことができます。
※通信が可能なエリア内でスマートフォンの電源が入っている時に限ります。



みまもりCUBEは在宅の独居、または昼間独居の環境に適した徘徊感知機器です!
独居や日中独りになる方などでも、みまもりCUBEによる徘徊行動の検知・通知を通じてご本人の行動や生活リズムを理解し、より有効な見守りや対策につながったケースもあります。
実際に「みまもりCUBE」を導入した介護者の声をご紹介します。
「自分が不在の時の徘徊が心配で入所を考えていたが、仕事中でも通知を受けることができるので、職場の協力も得ながら在宅介護を頑張ることができている」
「自分のスマホに徘徊の記録が残るので、ディサービスから戻って1時間以内の徘徊が多い事に気付けた。この時間帯は特に注意することで徘徊による外出を防いでいる」
みまもりCUBEは、独居の方や日中ご家族が不在となるご家庭でも、徘徊対策に活用できることをご理解いただけたかと思います。
続いて、利用料金についてご説明いたします。
費用は介護保険負担分+オプション費用
みまもりCUBEを介護保険を使って導入した場合の利用料金は、介護保険給付対象分と実費オプション分(インターネット料金)を合わせた金額となり、初月のみ初期費用がかかります。
介護保険適用分は1,200単位/月で、1割負担の場合は1,200円、2割負担は2,400円、3割負担は3,600円となります。詳しくは下の表をご参照ください。

【注意事項】
・実費オプションの定額料金は休止や半月請求は出来かねます。1か月単位の請求となります。
・実費オプションにつきましては、集金手数料等が加算される場合があります。
・実費オプションの部分は分離が可能です。分離しても徘徊感知機器としての機能を有しています。
次に「みまもりCUBE」を介護保険の福祉用具貸与として導入する際の留意点について、利用対象者と機能の面から解説していきたいと思います。
「みまもりCUBE」を介護保険で利用する際の注意点
介護保険上の認知症徘徊感知機器の定義
まずは徘徊感知機器とは、介護保険上ではどのようなものとして定められているのかを確認していきましょう。厚生労働大臣が定める福祉用具貸与及び介護予防福祉用具貸与に係る福祉用具の種目(厚生省告示第九十三号)には以下のように定義されています。
11 認知症老人徘徊(はいかい)感知機器
介護保険法第五条の二第一項に規定する認知症である老人が屋外へ出ようとした時等、センサーにより感知し、家族、隣人等へ通報するもの
「ベッドや布団等を離れた時に通報する」ものについても、「屋内のある地点を通過した時に」の解釈に含まれ、給付対象であるとされています。※
※参照「厚生労働大臣が定める特定福祉用具販売に係る特定福祉用具の種目及び厚生労働大臣が定める特定介護予防福祉用具販売に係る特定介護予防福祉用具の種目」及び「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」の改正等に伴う実施上の留意事項について(平成21年4月10日)(老振発第0410001号)
介護保険法第五条の二第一項に規定する認知症とは、「アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態」と記載されています。
定義をまとめると、日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した高齢者が、屋外へ出ようとベッドや布団など所定の場所を離れたり通過したりした時に、センサーにより感知し家族などに知らせる機能をもつものが徘徊感知機器である、と表せます。
徘徊感知機器の対象者とは
徘徊感知機器を介護保険で利用できる対象者は、徘徊感知機器の定義にある「認知症である老人」で、かつ原則要介護2以上の介護認定を受けている人です。
軽度者(要介護1)の場合は原則算定できないとされています(老企第36号第2の9)が、厚生労働大臣が定める利用者等告示第三十一号のイで定める状態像に該当する場合は、算定が可能とされています。
認知症徘徊感知機器の利用が想定される状態像は、
A 意見の伝達、介護者への反応、記憶・理解のいずれかに支障があるもの
B 移動において全介助を必要としないもの
であり、この状態像に該当するかを以下の(1)または(2)で確認したうえで、保険給付の対象者となるかが判断されます。
(1)認定調査票で次のいずれにも該当するもの
基本調査3-1(意思の伝達)が「1.できる」以外

基本調査3-2~3-7(記憶・理解)のいずれかが「2.できない」

3-2 毎日の日課を理解することについて
3-3 生年月日や年齢をいうことについて
3-4 短期記憶(面接調査の直前に何をしていたか思い出す)について
3-5 自分の名前を言うことについて
3-6 今の季節を理解することについて
3-7 場所の理解(自分がいる場所を答える)について
基本調査3-8~4-15(精神・行動障害)のいずれかが「1.ない」以外
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3-8 徘徊について
3-9 外出すると戻れないことについて
4-1 物を盗られたなどと被害的になることについて
4-2 作話をすることについて
4-3 泣いたり、笑ったりして感情が不安定になることについて
4-4 昼夜の逆転があることについて
4-5 しつこく同じ話をすることについて
4-6 大声をだすことについて
4-7 介護に抵抗することについて
4-8 「家に帰る」等と言い落ち着きがないことについて
4-9 一人で外に出たがり目が離せないことについて
4-10 いろいろなものを集めたり、無断でもってくることについて
4-11 物を壊したり、衣類を破いたりすることについて
4-12 ひどい物忘れについて
4-13 意味もなく独り言や独り笑いをすることについて
4-14 自分勝手に行動することについて
4-15 話がまとまらず、会話にならないことについて
基本調査2-2(移動)が「4.全介助」以外

(2)(1)に該当しない場合、医学的所見や適切なケアマネジメントプロセスをふまえて必要資料を各保険者に提出し給付に該当するか確認されることになります。
「軽度者例外給付」に該当するかどうかの確認・届け出方法や時期については各保険者にご確認ください。

「体はまだ元気で遠くまで歩けるレベルだが、記憶障害や見当識障害があり大きな事故(車/電車/遠方への徘徊等)へつながる危険性がある」
「介護認定はまだ要介護1だが、実際に徘徊で保護されたことがある」
ご担当のご利用者で上記のような状況にある場合、要介護1以下であっても早期の導入を検討することで、徘徊による事故を防ぎ在宅生活における安全性を高めることができるかもしれません。
まずはケアマネジャーによるアセスメントを通じて、徘徊感知機器の必要性があると判断された場合は、算定対象となる状態などを確認したうえで、「みまもりCUBE」の導入も検討していただければと思います。
「みまもりCUBE」導入にあたって
「みまもりCUBE」はカメラ・スピーカー・インターネットを内蔵したオールインワンのシステムで、コンセントにつなぐだけで徘徊行動の検知・画像付き通報・(録音での)呼び止めができるとても便利な徘徊感知機器です。
このように多機能であるがゆえに、ケアプランに位置付ける際にはいくつか注意すべき点がありますので説明していきます。
介護給付の対象となる機能、ならない機能の区別
複合的な機能をもった福祉用具については、機能ごとに保険給付の対象かどうかを分けてケアプランに記載する必要があります。厚労省の通知「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」※は以下のように記載されています。
3 複合的機能を有する福祉用具について二つ以上の機能を有する福祉用具については、次のとおり取り扱う。
(1)(2)省略
(3) 福祉用具貸与の種目及び特定福祉用具の種目に該当しない機能が含まれる場合は、法に基づく保険給付の対象外として取り扱う。
但し、当該福祉用具の機能を高める外部との通信機能を有するもののうち、認知症老人徘徊感知機器において、当該福祉用具の種目に相当する部分と当該通信機能に相当する部分が区分できる場合には、当該福祉用具の種目に相当する部分に限り給付対象とする。
※参照 老企第34号平成12年1月31日 最終改正 老高発0331第2号 令和4年3月31日「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」
徘徊感知機器の定義や介護給付の取り扱いを参考に、「みまもりCUBE」の機能について整理してみましょう。
徘徊感知器として認められる機能は以下の2つです
→検知機能(玄関ドアやベッド、寝室に向けてカメラを設置し徘徊行動や出入りを検知)
→通知機能(アラーム等でご家族や介護者に通知)

◎検知とは映像の変化や動きにより、アラートを出す、出さないを判断する株式会社ラムロック独自の技術になります。
◎検知を行うエリアやタイミングの調整は株式会社ラムロックの専門のオペレーターが行います。
以下はその他の複合的な機能となります。
・インターネット接続機能
・インターネットを使用したメールによる通知
・カメラで画像を記録でき外出時の様子や来客者を確認
・スマホを通じて設置したカメラから対象者を見守ることによる行動把握、転倒の早期発見など

保険算定上は徘徊感知機器になります。適切なケアプランでご利用ください。
※利用外目的の内容は実費オプション(インターネット接続)に含まれる機能になります。
「みまもりCUBE」を導入したケアプラン記載上の注意点
徘徊感知機器としての機能とその他の機能が同じ福祉用具に内蔵されているため、ケアプランに位置付ける時には「保険給付対象かどうかの区分」ごとに分けて記載するとよいでしょう。
下は、独り暮らしで徘徊行動のリスクが高い方のケアプラン記入例です。目標や支援内容を分けて記載しています。


「日常的な見守り・安否確認」、「転倒時の早期発見」は、給付対象となる徘徊感知機器としての導入目的や選定理由としてはみなされない場合がありますのでご注意ください。
ここまで「みまもりCUBE」の機能と介護保険上の取り扱いについて解説してきました。徘徊感知機器の導入の仕方やケアプランへの位置付け方に悩まれた際には、一般的な参考例としてご活用ください。実際のご利用者それぞれの環境やニーズに応じて、記載内容を工夫していただければと思います。
進化した徘徊感知機器で、住み慣れた地域での生活を支える
ご本人やご家族の生活状況は様々であり特にお一人暮らしの方や日中独居の方も多い中で、ニーズに合った徘徊感知機器をご提案するのに苦労されているケアマネジャーさんも多いのではないでしょうか。
近年のICT技術の進化とともに、見守り機器ではさまざまな機能のものが選べるようになってきました。ただ独居高齢者が増加していく一方で、今までは在宅の独居環境での徘徊に有効な徘徊感知機器の選択肢は少なかったと思います。
徘徊の心配がある、インターネット環境がない中で離れた場所にも通知を届けたい、といった方にはぜひ新しい徘徊感知機器「ラムロックアイズ-みまもりCUBE-S」の活用もご検討いただければと思います。
また福祉用具貸与として導入する際に、介護保険上の取り扱いやケアプラン記載上の留意点を改めてご確認いただくうえで、この記事がお役に立てれば幸いです。
最後に、介護保険の給付対象外(要支援などで)でもご利用できる一般レンタル商材(介護保険適用外)をご紹介いたします。